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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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働きたくても働けないのなら

「ギャレット様、ココットさんに聞いたら、こいつらの分の飯も用意できるそうです」


「そうか、わかった」


 頷くギャレット様を、盗賊達が目を丸くして見ている。


「へ? 飯?」


「お前達を警備兵に引き渡す前に死なれても困るからな。ここの料理人の気前の良さに感謝するがいい」


「マジで!?」


「やった! 飯にありつけるっ」


「まともな飯にありつけるのいつ以来だよっ」


 さっきまで静かだったのが一転、男達は満面の笑みで喜びを爆発させる。一食ありつけるだけでここまで大喜びするということは、それだけヘルツィーオでの環境が劣悪だったということだろう。


「彼らの境遇に同情しますか?」


 ロゼッタが無感情にそう聞いてくる。私はとりあえず頷いた。


「同情はするけど、私は善人じゃないもの。だから、ここまで毎日の生活に苦しんでる人達を助けるのなんて無理だと承知してる」


「そうですか、それなら良かったです。あなた様なら彼らに救いの手を差し伸べそうな気がしていましたから。そんな面倒くさいことに巻き込まれなくて安心しました」


「……なんかその言い方だと、助けろって言われてるみたいに聞こえるんだけど」


「まさか」


 そうすました顔で否定する。その幼い顔つきだと、可愛くて許してしまいそうになるから厄介だ。


 大喜びする男達を見て、近くにいたジルが怪訝な顔をする。


「なんでこいつら飯食えるだけでこんなに喜んでんだ?」


「こいつらは、元々ヘルツィーオのスラム街出身で、三日に一回パンが食べれれば良い方だったんだって。それが嫌で逃げ出したけど、理不尽な理由で仕事に就けなくて仕方なく盗賊になった。でも、盗賊になっても生活は苦しかったから、今こんなに喜んでるんだと思うよ」


「ふーん」


 私のかいつまんだ説明を聞いて、ジルは男達をまじまじと見つめる。そしてボソリと呟いた。


「……俺もそうなってたのかな」


「え?」


「あ、いやっ。スラム街って孤児が多いって聞くし、もし俺がカルツィオーネじゃなくヘルツィーオに生まれてたら、きっとこいつらみたいに盗賊になってたのかなって。そう思ったらちょっと」


「俺達は全員孤児だ」


 男の一人がそう呟く。


「ここにいる全員、幼い頃に親に捨てられたか、親を亡くした奴らだ」


「だからお前はラッキーだよ。同じ孤児でも食う物に困らないんだから」


「しかも剣まで習えるなんて、どんだけ贅沢なんだよ」


「……ごめん」


 何故かジルが謝る。すると、男の一人が怒りを露わにした。


「謝んじゃねーよ。ガキに同情されるほど落ちぶれてねぇっつの。殺すぞ」


 そのあまりの剣幕にジルがたじろぐ。すると、すかさずギャレット様が男の指を捻った。


「ほう。どう殺すのか見ものだな」


「いてーっ」


 ジルはバツが悪そうに顔を逸らした。たぶん、自分が逆の立場だったらと、そう想像してみたのかもしれない。実際、初めて出会った時、ジルは食糧庫を漁っていた前科があるわけだし。


 でも、落ち込んでる姿は見たくないな。


「あいつらの言う通り、ジルはラッキーだよ。お父様は慈善事業に積極的だし、市民権の移動も自由。剣士にだってなれるし、そうなれば就職もできる。カルツィオーネに生まれたことを大いに感謝するべきね」


「アンジェリーク様……」


「ヘルツィーオの住民に対する当て付けですね」


「うっさい、ロゼッタ。働きたいのに働けないなんて信じられないわ。こっちなんか、働きたくなくても人手が足りなくて働かないといけないのに」


 そこまで言ってピンときた。


 片や働きたいのに働けない。片や人手不足で働かざるを得ない。この凸凹を合わせたらどうなるか。


 そうか、そういうやり方もあるな。うん、試してみる価値はあるかも。


「アンジェリーク様、また悪い顔つきになってます」


「でしょうね。また悪どいこと思いついちゃったから」


 そう言って不敵に笑う。そのまま男達をジロリと見下ろすと、何を言われるのかと全員肩をビクつかせていた。


「そんなに働きたいなら、死ぬほど働かせてあげる」


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