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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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盗賊にならざるを得ない理由

「いててててててっ」


 突然、二人の間に男の叫び声が聞こえてきた。見ると、ギャレット様が捕まえた盗賊の一人の胸倉を掴んでいる。彼は手を後ろ手に縛られているから抵抗できなくて悲鳴を上げていた。


「どうしたんですか、ギャレット様」


「いや、常闇のドラゴンの連中が集まりそうな場所を聞いたら、知らない、とシラを切るからな。ちょっと締め上げていたところだ」


「あ、なるほど」


「おい、首領や幹部連中はどこにいる?」


「し、知らない! 俺達下っ端は知らないし、会ったこともねぇよっ」


「ウソをつくな」


 そう低い声を出すと、ギャレット様は男の人差し指を握って逆方向に力を入れる。


「いでーっ」


「答えるまで指を一本ずつ折っていく。まずは人差し指だ」


「待って、待ってくれ! ほんとに俺達は知らないっ」


「こいつの言うことはほんとだ! 俺達はつい最近入ったばっかで、組織の構成とかそんなのまったく知らねぇんだよ」


「それを信じろと? 冗談だろ」


 当然、昨日のお茶会に参加していたギャレット様だから、この下っ端連中がほんとに首領達の居場所を知らないことはわかっているんだろうけれど。たぶん、あえて知らないフリして別の情報を聞き出そうとしているんだろう。


「お前達下っ端が見たことない幹部達は、どうやってお前達が仲間だと認識できる?」


「それは、このネックレスだっ」


「ネックレス?」


 そう言われて見てみると、男達の首には木でできた、丸の中にバツと彫られたネックレスがぶら下がっていた。


「指示役だっていう奴にこれをもらえば、それで仲間入りした証明になるって言われて。それで」


「なるほどな。これでいちいち顔を覚えなくても見極められるというわけか」


「雑なシステムね。これなら誰でも気軽に潜入可能じゃない。刺青入れろって言われるより、はるかに気が楽だわ。それに、いつでも簡単に辞められる」


「そうなんだよ。毎日誰かが辞めてくけど、指示役はほっとけってさ。また新しい奴が入ってくるから、いちいち気にしてらんないんだと」


 これはニール様の情報通りだ。ほんとに執着しないのね。


「そういえば、あなた達にドラゴンの刺青はないんですね」


「あれは、人を殺したことのある奴がもらえる勲章だ。あれがあればただの下っ端より手取りが多くなる」


「俺達が奪った金品は、すべて指示役が取っていくんだ。下っ端にはほんのわずかしか与えられない。最悪だよ」


「なるほどな。そうやって人を殺すよう誘導しているのか。そうすれば、常闇のドラゴンへの恐怖が増す」


「ほんと嫌な連中」


 嫌悪感を吐き捨てる。どうやら、ギャレット様も同じらしい。すると、一度言って枷が外れたのか、何故か連中が愚痴り始めた。


「ってか、俺達が集めた金、指示役が持っていくのおかしくないか?」


「こっちは命からがら手に入れたってのに」


「金もちょっとしかもらえないし。これならヘルツィーオにいた頃と変わんないじゃん」


「しょうがないだろ。働きたくても、市民権の無い俺達なんかどこも相手してくれなかったんだから」


 捕らえられてるのも忘れて、やいのやいのと愚痴り合う。私はそれに待ったをかけた。


「ちょっと待って。あんた達ヘルツィーオ出身なの?」


「そうだよ。ヘルツィーオのスラム街出身」


「領主様曰く、掃き溜めのゴミ置き場」


 嫌味を込めて、男達が自嘲気味に笑った。


「あそこは貧しいなんてもんじゃない。三日に一回パンを食べれれば御の字。道を歩けば路肩に餓死した遺体が転がってる。地獄のような所だ」


「毎日生きてくのに必死で、誰もが自分のことで精一杯。相手蹴落としてでも目の前のパンを掴まなきゃ自分が死ぬ」


「そういう暮らしが嫌で、命からがらヘルツィーオを脱走してみたはいいものの。どこも俺達なんか相手にしてくれなくて」


「そんな時盗賊に襲われて。事情を話したら仲間に入れてやるって言われたんだ」


「ほんとは嫌だったけど、このままじゃ俺達死ぬだけだったから。生きるために入った」


「でも、俺達やっぱ盗賊なんて向いてねーな。ガキにだって簡単にやられるくらいだし」


 そう言って、再び自嘲気味に笑う。その後で四人とも視線を落として静かになった。


「なるほど。盗賊になったのは貧困が原因、ということね」


「やはり、市民権を掌握されているのが痛いですね。カルツィオーネでも管理はしてますが、出入りに金はかかりませんから」


「いいよなー、カルツィオーネは。俺もここで生まれたかった」


 盗賊の一人がそうこぼす。すると、向こうからジルが走ってやってきた。


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