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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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それだけは阻止

「ニール、お前アンジェリークのことが好きなのか?」


「殿下まで何をっ!? それはあり得ません。誓って言いますが、私はアンジェリークをそのような目で見たことは一度もありません」


「ほんとだな?」


「本当です」


 ラインハルト殿下とニール様の目が交錯する。そして、何かわかったのか、ラインハルト殿下は「わかった」といって頷いた。


 なんだあれ。殿下の婚約者に、っていうありがちな冗談にあんな食い気味な感じで本気にするなんて。よほどご令嬢達の相手が大変なんだな。可哀想に。


 そんな同情的な目を殿下二人に向けていると、ココットさんが「でもさあ」と私に視線を向けた。


「いくら傷跡が残ってて悪い噂が付きまとってるからって、結婚する気はない、なんて自暴自棄にならなくてもいいんじゃないかい?」


「私もそう思います。まだ若いのですし、もしかしたらそんなアンジェリーク様が良いって言ってくれる殿方が現れるかもしれないじゃありませんか」


「諦めるにはまだ早すぎますわ。もう少し考え直してもよろしいのでは?」


 ミネさんヨネさんまで同情的な眼差しで語りかけてくる。


 わかってる。これは私のことを心配して言ってくれていることで、みんなの優しさなんだって。それでも。


「いい加減にしてください! 結婚する気はないって言ってるじゃないですか。ただでさえ今は解決しなきゃいけない問題が山積みなのに、そんなこと考えてる暇なんてないですよ。いいから放っておいてください」


 前世の頃、実家に帰省すれば両親から必ずいい人はいないのか、結婚はしないのかと聞かれて辟易していた。


 まるで、結婚しないことが悪いことのよう。責められているような気がして実に不愉快だった。


 結婚したくても相手がいないし、積極的に作る気もないのだから放っておいてくれ。今はその時の感情に似ている。だから最後の方の言葉は少しキツくなってしまった。


 あ、しまった。


 そう気付いた時には、みんなの空気が気まずくなっていた。そんな中、エミリアがポツリと呟く。


「アンジェリーク様が結婚したくないのは、忘れられない人がいるからですか?」


 その一言に、全員の注目がエミリアに集まる。私だけ小さく首を傾げた。


 は? 忘れられない人? いったい誰のことだろう。文脈から考えてみると……はっ!


 まさか、あの事実を百倍美化したレオ様との駆け落ちの話を、今ここで話す気!? ダメダメダメ! あんなのこんなみんなの前で話されたら、私恥ずかしくて死ぬっ!


「忘れられない人? それはどういうことだ?」


 早速ラインハルト殿下が話に食いついて、エミリアから聞き出そうとする。エミリアはというと、自分で言っておいてしまったと思ったのか、「えっと……」と困惑していた。


 これはマズイ。殿下に押されたらエミリアは話ちゃいそう。その前に先手を打たないと。


「エミリア!」


「は、はいっ」


「それ以上は私のプライベートに関わることです。勝手に話すことは許しません。口を慎みなさい」


「っ……申し訳、ありませんでした」


 ちょっと怒っている風に見せるために、わざと語気を強めて牽制する。すると、エミリアは叱られた子犬のようにしおしおと肩を窄めて俯いてしまった。


 ごめん、エミリア。でもこれで誰もツッコめなくなったはず。その思惑通り、使用人ズでさえ黙り込んでしまった。ただ、ロゼッタだけが顔を逸らして肩を震わせていた。なんだ、ちゃんと聞こえてんじゃん。後でシバく。


「………………」


 ヤバい、どうしよう。めっちゃ空気が重い。まだロイヤー子爵についての話し合いが残ってるのに、誰も何も話そうとはしない。ニール様ですら無言のままだ。


 自分で作ったとはいえ、この気まずい空気耐えられん。無理っ。


 重い空気に耐えられず、ついに私は席を立った。


「話の途中ですが、体調が優れないので部屋に戻ります。この後、剣士志望の方々に読み書きを教えないといけませんので」


 食べかけのガトーショコラに後ろ髪引かれたけれど、私はそれを振り切るようにその場を後にする。すると、ロゼッタも立ち上がった。


「アンジェリーク様は、先ほど嘔吐されたばかりですので。心配なので私も失礼させていただきます」


 そう言った彼女のお皿の上のガトーショコラは、綺麗に跡形もなく消えていた。


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