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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第四章 植物博士と極悪令嬢

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庭の手入れ中の話

 この物語の進捗状況を、今一度落ち着いて整理してみよう。


 私が書いた小説の主人公エミリアは、原作通りのクルムではなく、ここカルツィオーネの孤児院にいた。


 このままでは相手役のレインハルトと出会えないまま物語が終わる。


 そんなピンチの時、私の悪評を聞きつけたレインハルトとラインハルトが、クレマン様を心配してカルツィオーネへやってきた。そこで魔物に襲われ瀕死の重傷を負ったレインハルトを、エミリアが希少な回復魔法で助ける。


 原作と場所は違えど、二人の出会いはなんとか完了したわけだ。


「まあ、ここまでくるのにあまりにも色んなことがありすぎたけれど」


「しかも、これがまだ序章というのが信じられません」


「私もドン引きよ。まあ、私のしてきたことが結果的に殿下達をおびき寄せることになって良かったけど。あのまま何もなかったら、二人は出会えなかったわけだし」


 よく考えれば簡単なことだった。会いに行けないのなら向こうから来させればいい。それを無意識にしていたわけだ、極悪令嬢として。私天才じゃない?


「これからどうなっていく予定なのですか?」


「んー、原作ではレインハルトがエミリアを国で保護するよう陛下に進言して、彼女は王宮に行くの。そんで、ただいるのは申し訳ないからっていって使用人として働く、というのが流れだった」


「しかし、エミリアはヴィンセント家のメイドとして働いている」


「そう。さらに言えば、王宮に行ったエミリアは、養成学校へ行く前にその回復魔法を使って、傷付いた兵士を助けまくり、密かに慕われていく」


「しかし、現実は彼女は王宮ではなくカルツィオーネで、国王軍や自警団員や傭兵なんかを回復魔法を使って片っ端しから癒し、みなの信頼を獲得している」


「そう、はいズレましたー。……どう思う、これ?」


 目の前の雑草を引っこ抜きながら、ロゼッタに聞いてみる。彼女は目の前の枝を剪定バサミで切り落としながら考え込んだ。


「エミリアが活躍する場所は違っていますが、今のところ話の大筋はきちんと踏んでいるので、このまま様子見でもよろしいのではないですか?」


「やっぱそうかー。私もほぼほぼそう思ってるんだけど、ほんとにこれで大丈夫かなぁという不安もちょっとあるわけ」


「というと?」


「国の保護下に置かれていないこの現状だと、いつか誰かがエミリアを利用しようと動き出すんじゃないかと思って。殿下達だってずっとここにいるわけじゃないし、いつかは王宮に戻るでしょ。そうなった時、他の貴族の連中が彼女目当てに何かしてこないかなって。私の時のように」


「なるほど。それも一理ありますね。では、殿下達が王宮に戻られるタイミングで、国に保護を求めるのはどうでしょう?」


「……それを今のエミリアが素直に受け入れるかな。孤児院のことが心配で学問所行きまで渋ってた彼女よ? 自分のために素直に王宮に入るとは思えないんだけど」


「そう考えると、その責任感の強さが仇になってますね」


「そうなのよ!」


 うりゃ、と背の高い雑草を引っこ抜く。ついでに土がいくつかくっついてきたので、パタパタと叩いて落とした。


「エミリアがカルツィオーネにいることで、また話が変わるんじゃないか、それが心配なの。この前のジルとルイーズを助けにいくのなんか、原作にまったくなかったし。私の知らないエピソードが追加されそうで怖い」


「原作では、この後エミリアはどうなるのですか?」


「それがさ、断片的にしか覚えてないのよねー。確か、真面目に仕事をしていくうちに、煙たがられてた他の使用人達と仲良くなって……貴族同士のいざこざに巻き込まれて、それをレインハルトが助ける? みたいな」


「曖昧ですね」


「なんでちゃんと思い出せないんだろ。自分が書いた小説なのに。最初は事故の影響かなーって思ってたけど、あんなに大切にしてた小説の内容を忘れるなんて」


「もしかしたら、内容が歪められたせいではありませんか?」


「歪められたせい? どういうこと?」


「本来の物語が書き換えられたことでこの世界があなた様を消し去ろうとしているように、あなた様が書いた原作をこの世界が消し去ろうとしているのではないかと」


 そう言われ、思わず雑草に伸びた手が止まった。


「……なるほど。タイムトラベルの歴史改ざん的なことが起こってるかもしれないってことか。過去に戻って死ぬはずだった人を助けて結果未来が変わる。そうしたら、その人が死んだ後の世界は消えてなくなる。いや、並行世界の話だったら、死ななかった別の世界へ移動して、それまでいた世界へは戻れなくなる」


「アンジェリーク様?」


「つまり、ロゼッタが言ったようなことが起こってるかもしれないってこと。これは厄介だわ」


 もし本当にそうならば、この先エミリアに何が起こるかわからなくなる。ただでさえ、今予定外のことが起こりまくっているというのに。


「どうします?」


 ロゼッタにそう問われ、私は顎に手を当てて考え込む。しばらくして、私は再び目の前の雑草を抜き始めた。


「どうするもこうするも、とりあえずその時ぶち当たった問題を片っ端から片付けていくしかないわね。ここまできたら、元の小説を軸にして新しく小説を書き換えるくらいの心構えでいかないと、頭が混乱して対応できないわ」


「それもそうですね。そう開き直った方が、あまり悩まずに動けそうです」


「でしょ? ようは、最終的にレインハルトとエミリアが結婚しちゃえばいいわけ。そこさへブレなければ、あとはそこまで大した問題じゃない」


「あなた様の悲願はそこですものね」


「そゆこと」


 そう、内容はこの際どうでもいいことにしよう。とりあえず今は、エミリアを守りつつ、レインハルトとの愛を深められるようフォローしていかないと。そっちに集中しよう。


 そんな庭の手入れをしつつ作戦会議をしている私達のところに、殿下達二人とニール様が近付いてきた。


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