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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第三章 二人の王子と極悪令嬢

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死んじゃダメだからね

 お屋敷までの道のりは、ゴールの見えないマラソンのように果てしなく感じた。


 一歩歩けば激痛が走り、血液が流出していく。その証拠に、私が歩いた跡には血の混じった水溜りができていた。


 ロゼッタは、もうずいぶん前から大人しくなっている。それでも、私は彼女に話しかけていた。


「……ほら、ロゼッタ。お屋敷が、見えて、来たわよ……はあ、はあ……っ。私の、根性、見た? もう二度と、甘やかされて、育った、ご令嬢なんて、言わせない、んだから、ね……」


 そうぶつぶつ呟きながら、激しい痛みを歯を食いしばって耐える。すると、やっとお屋敷の敷地内へと辿り着いた。


「救護所……どっち? ナッツ先生は……?」


 ダメだ、視界がボヤける。あともうちょっとなのに。


「アンジェリーク様!」


「それにロゼッタさんまで!」


「二人とも大丈夫かいっ?」


 そう声をかけてきてくれたのは、ミネさんとヨネさんとココットさんだった。三人は土砂降りの雨の中、傘も差さず私達に駆け寄ってくる。開いたままの玄関から中を覗くと、遠目にもたくさんの人達がひしめき合っていた。たぶん、あれが避難してきた領民達だ。


 ひどい有様の私達の近くまで来ると、三人は一様に息を呑んだ。


「ジルと、ルイーズは、連れ帰りました…。ただ、ジルが重傷で、今、エミリアが、魔法で、治療しています……。あの……ナッツ先生は、どこに、いらっしゃいますか?」


「せ、先生なら、まだ向こうのテントにいらっしゃいますわ」


「ひどい怪我……ロゼッタさんまで。早く手当てしないとっ」


「私がロゼッタさんを代わりに担ぐよ」


「ダメです!」


 ロゼッタに伸びていたココットさんの手を、私は振り切るように避けた。


「ダメです、これ以上、私達に関わってしまったら……。みなさんには、本当に、感謝してるんです。だから、これ以上、迷惑は、かけたくないんです……っ」


「アンジェリーク様……」


 深々と頭を下げた後、ナッツ先生を探しに教えてもらったテントを目指す。


「ロゼッタ、ナッツ先生、いるって……はあ、はあ……。これで、やっと、治療して、もらえ……」


 すべてを言い終わる前に、足がもたれて私は倒れた。ロゼッタが投げ出され地面に落下する。立ち上がろうにも、力がまったく入らずもう身体が動かなかった。


「ロゼッタ……」


 すぐ隣に横たわる彼女に、私は必死に手を伸ばす。


 絶対、死んじゃダメだからね。あなたが死んだら、悲しむ私がいるんだからね。だから絶対、生きなきゃダメだよ。


 そう心の中で叫びながら、私は静かに目を閉じた。


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