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ただのモブキャラだった私が、自作小説の完結を目指していたら、気付けば極悪令嬢と呼ばれるようになっていました  作者: 渡辺純々
第三章 二人の王子と極悪令嬢

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ルイーズの異常な魔力

「いいですか? 今回は殿下達の救出の時とは違って、戦力的にも圧倒的にこちらが不利です。ですから、いちいちダークウルフを相手にしていたらキリがありません。ですので、目の前にきた分のみ蹴散らしながら行きます。そして、ジルとルイーズを見つけ次第、速やかに門を目指して逃げます」


「わかった」


「わかりました」


 ロゼッタの作戦に、私とエミリアが同意する。そして、ロゼッタの号令で走り出した。


 私達に気付いた数匹のダークウルフが、こちらに近付いてくる。ロゼッタはそれを剣で捌いたり魔法で蹴散らしたりしながら走っていた。


「アンジェリーク様は、無理に倒そうとしないでください。剣を振り回すだけでも、彼らは警戒してすぐに襲ってはきません」


「了解!」


 とは言っても、私が剣を振り回す暇なく、ロゼッタが来た端からじゃんじゃんやっつけていく。少し前を走る彼女の背中が頼もしい。


 森の道へ入ると、周りはもう焦げ臭い匂いが充満していた。身体が徐々に熱を帯びていくのがわかる。


「でもさ、どうやってジルとルイーズを見つけ出すの?」


「ルイーズは魔法を暴走させています。その痕跡を手がかりに探そうかと」


「なるほど」


 とはいえ、そんなわかりやすいものとは限らない。注意深く観察しないと。


 すると、再び大きな地震が起きた。走れなくて、三人ともその場で踏ん張る。しばらくすると揺れは止まった。マラソン再開だ。


「今さらだけど、こんな大地震を魔法で発生させるのって、どんだけすごいの?」


「異常です。どれだけ最高位の魔法師でも、地続きの大地を揺らせるのは極めて限定的な範囲に限られます。それを、これほどの広範囲で、しかも連発するなんて信じられない」


「ロゼッタがそこまで言うってことは、本当に異常なのね。ルイーズすげー」


「そういえば、彼女が初めて魔法を暴走させた時、周囲の地面が隆起してしまって。幸い怪我人は出ませんでしたが、それを見た子ども達は気味悪がってルイーズを敬遠してしまいました」


「そうなんだ」


「でも、そんな中ジルだけが変わらず彼女のそばにいてあげた。だから、ルイーズにとってジルは特別なんだと思います。同い年だけど、家族というか、兄妹みたいな存在というか」


「兄妹……」


 それがほんとならジルがちょっと可哀想。いや、彼らはまだ若い。それがいつか恋心に変わるかもしれないし。ジル、頑張れ。


 先ほど来たばかりの孤児院を抜ける。しばらく走ると、そこはもう火の海だった。


「ウソ、でしょ……」


 生い茂る木や草が、肉食獣のような炎によって食い荒らされ、その屍が炭となって無惨に現れる。その炎はまだ食い足りないと、手当たり次第の木々を丸呑みしていた。そりゃ、魔物も慌てて逃げ出すわけだ。


 想像を絶する光景に、思わず立ちすくむ。ヘルマンさんやみんなが自殺行為と叫んだ意味がようやくわかった気がした。


 呆然とする私達に、再び地震が襲いかかる。しかし、今回はそれだけにとどまらなかった。周囲の地面がまるで氷柱のように突然隆起し、傾いた木を串刺しにする。しかも、一箇所ではなく複数箇所で。その土の氷柱達は、まだ燃えていない森の中へと続いていた。


「どうやら、近くにいるみたいですね」


「これ、急がないとヤバくない? すぐ後ろまで炎が迫ってるじゃん」


「わかっています。急ぎましょう」


 背中に熱さをジリジリ感じながら、ロゼッタの後へと続く。すると、奥に進めば進むほど隆起した地面の数が増えていることに気付いた。


 これを辿れば二人に会える。たぶん、ロゼッタもそう思っているから、迷いなく走っているのだろう。


 エミリアはというと、緊迫した表情を浮かべながらも、必死にロゼッタの後についてきていた。


 この炎が迫る中、ジルとルイーズは無事なんだろうか。ルイーズは魔法が発動しているから生きてはいるんだろうけれど。ジルはどうなのかわからない。もし魔物にでも襲われていたら……。ダメだ、そんな弱気なこと考えちゃ。


 不吉な考えを吹き飛ばすため頭を振る。すると、突然ロゼッタの足が止まった。


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