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プロローグ
荒れ狂う嵐の中、罅割れ荒廃した大地の上で、女は今にもその生涯を終えようとしていた。
実際、彼女の全身はまだ無事な部分を見つけるのが難しい程に傷だらけで、夥しいほどの打撲と裂傷をおっていた。中でも背中一帯に至る一番大きな裂傷の中からは白が垣間見える程であった。
身体の限界などとの昔に超えていた。尋常ではない痛みと眠気が絶え間なく彼女を死の世界に連れさろうとしていた。
しかし、彼女はそれに抗い続けた。
彼女はその生を、決して諦めなかった。
それどころか、彼女はこの期に及んで立ちあがろうとすらしていた。自分に全て掛かってるのだと、それだけを自らに言い聞かせ、折れたり、ちぎれ飛んだ四肢の名残を使って、無様に這いずりまわった。
獣はそれをただ見ていた。感情は読み取れないが、それは自らを殺そうと少しずつ近付いてくる彼女を、少しでも目に焼き付けようとしているようだった。
やがて彼女が獣に辿り着いた時、獣は小さく一鳴きし、彼女の頭を噛み砕いた。
そうしてその場には、頭のない女の亡骸と、口を血で濡らした一匹の獣だけが残っていた。獣は、一際大きな咆哮を上げた。