第四話プロローグ
「赫翼族の身でありながら、よく足掻くものだ」
息を乱す俺を見下ろしながら、蒼翼族の少年は何の感情も込められていない声を落とす。戦う前まで空を覆っていた木々は根こそぎ倒され、辺り一帯の景色を一変させていた。
青空を思わせる翼を広げた少年は、さもそれが自然の摂理だと言わんばかりに、会ったときとまるで変わらない状態で空中に浮かんでいる。
ありえない、まだ十代半ばだというのに……。奴は化け物か?
「だが、天に抗った罪は重い。罰としてその翼と心、私自ら折ってやろう」
「なっ!?」
辺りの空間に満ちる奴の魔力が一層強くなる。馬鹿な。奴はまだ本気を出していなかったのか?
絶望的な気持ちで見上げた奴の口から、断罪の開始が告げられた。
「魔界:『羽異天変』――!」
◇ ◇ ◇
「せんせー? 赤翼せんせー?」
「ん……あ……」
目を開けると、そこは馬車の中だった。目の前にいる人間族の少女は、心配そうな表情で俺を覗いている。
「ああ、リン。もう着いたのか?」
「もう少しかかるみたいです。けど、せんせーうなされてたから、心配になっちゃって」
「もしかして先生、緊張してんのか?」
「はは、そうかもな」
カールの軽口に笑って応える。カールの言う通り、でもないが、今更あんな夢を見たのは、これから向かう先が関係しているんだろうな。
「……大丈夫。先生と一緒に造ったこれがあれば、私たちも戦える」
「ええ。僕たちの実力を見たら、グリマールの生徒も驚くはずですよ」
布袋を大事そうに抱えたミスティとクロムも、初めて会ったときにはなかった自信を示してくれる。非常勤講師という身でも、生徒が成長した姿を見るのは感慨深いものがあった。
「ああ。お前たちが強いことは、先生が保証する。国内最高峰の学院の優等生たちを驚かしてやろうぜ」
はい! と頼もしい返事が重なる。可愛い生徒たちが優等生を相手に戦う姿を想像し、俺は自然と頬を緩めた。




