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作戦会議

「先ず不思議に思ったのは、竜が現れたのに誰一人として死ななかった、どころか大怪我を負った人さえいなかったということです」

 林の中を進みながら、シイキは自分の考えを口にする。荷物をほとんど持ってないためか、昨日よりも格段に早く移動できているにも関わらず、シイキも体力に余裕を持てているようだった。

「ふむ、確かにな」

「けどよぉ、それは竜の方がなめくさって遊んでたとか、本気を出してなかったってだけじゃねぇのか? 知能の高い竜はそういうふざけたこともするって聞いたことあるぜ」

「かもしれません。けどそれならそれでいいと思います。竜の目的が遊びであったのなら、ある程度の交渉はできるでしょうから」

「目的……。確かに、竜がどうして生贄を求めたのかは不思議」

 リズさんの言葉に、俺も頭を捻る。言われてみると、なんで竜は若い女を差し出せなんて言ったんだ?

「お嫁さんにでもするつもりにゃのかにゃ?」

「そ、そうなんですか!?」

「流石にそれはないと思いますけど……」

「にゃはは、軽い冗談にゃ」

 シルファはどんな反応をしていいか困ったような表情になる。シイキが一つ咳ばらいした。

「一先ず竜の目的については置いておきます。こればかりは竜自身にしか分かりませんから。けれど分かることもあります。その竜は好戦的ではないだろうということです」

 一同が頷く。

「そこは間違いないだろうな」

「好戦的な奴なら今頃、村は壊滅状態だったろうしなぁ」

「生贄を求める理由もない」

「そういうことです。少なくとも竜の目的は、殺戮などではありません。寧ろ逆に、できるだけ被害を出さないようにしていたとさえ思えます」

 俺は村の様子を思い出す。確かに家屋が破壊されてたけれど、魔導士が怖がるほどの魔物が暴れたにしては、被害は大きくなかったように思える。

「あえて村人たちを生かしたってことかにゃ? 行動がよく分からにゃいにゃ」

「生き残った村人たちの反応を見たかった、とかかしら?」

「で、でも、竜は山に帰っていったんですよね? それなら見れないんじゃ……」

「ああ。そう聞いている」

 村で何が起きたのか、残った人たちの証言を全て知っているボルドさんが答えた。

「気になったことはもう一つあります。ボルドさん、防衛隊の皆さんが竜と戦ったときのことを、詳しく聞かせてくれませんか?」

「構わないが、さてどこから話したものか……」

「あ、すみません。聞きたいのは、防衛隊の方が魔法で攻撃したときのことです。手応えがあったと聞きましたが、どうしてそう感じたのか、何か聞いていませんか?」

「む、そうだな……。竜に攻撃を与えた時、苦しそうに呻くことがあったらしい。そのことから、魔法が有効であると考えたようだが」

「苦しそうに呻く、ですか。その時、竜が頭を気にしていたような素振りはありましたか?」

「っ! 確かに苦しんでいる時、竜は手で頭を守るようにしていたそうだが、何故それを?」

「やっぱり……!」

 シイキが笑みを浮かべた。

「おいおい、そいつぁどういうこった?」

「竜は頭が弱点?」

「弱点といえばそうかもしれません。正確には、頭ではなく角ですが」

「角にゃ?」

「はい。それこそが僕の気になったことなんです。僕の知る限り、額から角の生えた竜なんて存在しません。竜の角は頭の後ろ、左右に二本あるのが普通、というよりも常識です」

 そう言えば、俺も何度か竜を見たことはあったけど、どの個体も角は頭の後ろに二本あるだけで、額から生えていた奴はいなかったな。

「そ、そう言えば、ゴラさんもそんな竜、聞いたこともないって……」

「けれど竜も魔物の一種なんだし、突然変異を起こすこともあるんじゃない?」

「その可能性もなくはないけど、シルファも知ってのとおり、突然変異ってのはそうそう起きるものじゃない。大きくて存在が安定している竜だったら尚更だ。その考えを切り捨てるつもりはないけど、それよりももっと、ありえそうな原因がある」

「ありえそうな原因?」

 俺が尋ねると、シイキは表情を険しくして頷いた。

「多分だけど、その竜、誰かに操られている気がするんだ」

「なにっ!?」

「んなことできんのか?」

「竜を、操るなんて……」

「にゃるほどにゃあ」

 それは魔導士でさえも信じられない内容だったようで、ヌヌさん以外の三人が驚愕していた。

「ヌヌさん、過去にそういった事例はあったのですか?」

「それは分からにゃいけど、できにゃくはにゃいと思ったのにゃ。契約は勿論、操作魔法や眩惑魔法を使えば、魔物を意のままに動かすこともできるしにゃあ」

「け、けど、竜ってすごい魔物なんですよね? それを操るなんて……」

「まあ相当にゃ実力者じゃにゃいとまず不可能だろうにゃあ。それにどんな手段にしろ、ずっと操り続けることはできにゃいにゃ。定期的に魔法をかけ(にゃお)したりする必要があるにゃ」

「……んで? それが角と何の関係があんだ?」

「魔法石……」

 俺の呟きに、シイキを除いた全員が息を呑んだ。

「まさか、その角が魔法石だと?」

「……けど、魔法をかけ続けなきゃいけないなら、わざわざ魔術式を形成するよりも効率的」

「いや待て待て! 竜を操るような魔法が刻まれた魔法石だぁ? そんな魔法、魔術式自体まず作れねぇだろうに、魔法石に刻むなんざ不可能だろ?」

「いや、そうとも限らにゃいにゃ。物凄く難しいことは間違いにゃいけど、理論的には可能にゃ。ちょっと信じられにゃいことだけど、そう言われると納得(にゃっとく)できることも多いにゃ」

 ヌヌさんの言葉に、俺も頷いた。

 竜自体、そうそう目にすることなんてない魔物だ。村にやってきて竜神を名乗ったことといい、やはりその竜は十中八九、村人たちに信奉されたいた竜神なのだろう。村のおじいさんは角を理由に竜神様じゃないと断定していたけど、その角が何者かによって着けられた魔法石だとしたら、村を襲った理由も含め納得しやすい。

「そ、そんな凄い魔法を使う相手がいるってことですか?」

「そうとは限らないわ。魔法石を作った人間と、それを使っている人間は違うかもしれない。……同じかもしれないけど」

「何にしろ、もし本当にその角が魔法石だったとしたら、裏で操っていた奴がいるってことか」

 ボルドさんの言葉を最後に、暫くの間、沈黙が続く。

「……ここまでは全て憶測です。もし間違っていたらすみません。けれど、そういう可能性もありそうだと、伝えておきたかったんです」

「いや、よく言ってくれた」

「もしそうだったら、その角をぶっ壊せばいいってことか?」

「それで竜を操っているなら、壊せば元に戻るはず。上手く不意を衝ければ、戦わなくて済むかも」

「誰かに操られているのにゃら、それだけ意識にゃりにゃんにゃりに負担がかかっているはずだから、竜も本来の実力は発揮できにゃいはずにゃ」

「ならその分、アイさんを救うチャンスもあるってことね」

「そうですね。きっと……!」

 シイキの考えは、皆を前向きにさせたみたいだ。俺自身、何とかなるんじゃないかという気持ちが強くなる。

 しかし、竜を操っている存在、か。本当にそんな奴がいるのだとしたら、一体何の目的で……。

「さて、そんじゃそろそろ作戦会議を始めるか」

 ボルドさんの声で意識が切り替わる。シイキも言っていたけど、目的なんてそいつ自身にしか分からないんだ。考えても仕方ない。今はアイを救うことに集中しないとな。

 それから俺たちは、アイを救出するための作戦を立て始めた。


 ……お、出てきたにゃ。やっぱりあの大きにゃ(あにゃ)が竜神様の住み処だったにゃ。

私はそこから少し高い位置にある岩の陰から、その姿を捉えるにゃ。日が沈んでからかにゃり経ってるし、空は分厚い雲に覆われているから、周りは真っ暗にゃ。けれど私は暗視魔法のおかげで、昼間みたいに明るく見えるにゃ。別に魔法を使わにゃくてもそこそこ夜目が利くけれど、魔法を使った方がよりはっきり見えるのにゃ。

 むむ、あれが例の角かにゃ?……にゃるほど、自然のものにしては形が整いすぎてるにゃ。やっぱりあれは魔法石みたいだにゃ。

「っ」

 立ち上がったその竜は、人間の大人(おとにゃ)六人分くらいの高さがあったにゃ。尻尾まで含めた全長はもっとありそうにゃ。

 そしてその手には、目を閉じたアイちゃんが捕らえられていたにゃ。

 ほんの僅かだけど、アイちゃんは竜の動きに反応しているから、どうやら気絶しているだけのようにゃ。命が無事だったことにほっとするけれど、ああして掴まれてちゃ救出は難しいにゃ。置いていってくれてたら楽だったんだけど、流石にそこまで甘くはにゃかったようにゃ。

とりあえず、通信魔法でリズに連絡するかにゃ。麓で(にゃに)も起きてにゃければいいんだけどにゃあ。……お、(つにゃ)がったにゃ。

「ヌヌにゃ。アイちゃんは無事みたいだけど、竜の手に捕まってるにゃ。恐らくそっちに連れていくつもりにゃ。それと角は予想通り、魔法石みたいにゃ」

『了解。こちらは既に配置についた。いつでも作戦を実行できる』

「分かったにゃ。私は竜が飛び立つのを確認してから戻るにゃ。……お?」

 丁度飛び立つみたいにゃ。うわ、ここまで届くだにゃんて、すごい風だにゃあ。

 そして竜はアイちゃんを掴んだまま、私たちのキャンプがあった方角へと飛んでいったにゃ。

「今しがた竜がそちらに向かっていったにゃ。私もすぐに――っ!」

 私は反射的にその場から跳び退いたにゃ。するとさっきまで私が居た場所から、まるで間欠泉みたいに水が噴き上がってきたにゃ。こんにゃところにそんにゃものあるわけがにゃいから、明らかに誰かの魔法にゃ。

『どうしたの?』

「敵にゃ。多分、竜を操っている奴の一人だろうにゃ」

『なっ!?』

「こっちの心配はいらにゃいにゃ。そっちはアイちゃんを助けることだけを考えるのにゃ」

『……分かった! 気をつけて!』

 通信魔法を霧散させると同時に、噴き出る水に乗るようにして、敵が姿を現したにゃ。

 全身を銀色の甲冑に包んだ奴だったにゃ。魔術式が見当たらにゃいってことは、どうやら魔界を展開しているようにゃ。竜を操る誰かが只者じゃにゃいだろうとは予想していたけれど、これは結構手強そうにゃ。

「あんたが黒幕かにゃ?」

「………………」

 敵は一言も発さずに、私に手を向けたにゃ。

「うにゃっ!?」

 するとまた私の足元から水が吹きあがってきたにゃ。今回も間一髪避けることができたけど、今度は噴き出した水が蛇みたいに襲い掛かってきたにゃ。防御魔法を発現させて防ごうとするけれど、水の蛇は突然迂回して防御魔法を避けたにゃ。

 上手いにゃあ。形を保ったまま動かすだけでも、にゃかにゃかに難しいっていうのににゃあ。

 やっぱり……、手加減はできにゃいみたいにゃ。

「むっ!」

 気配を消していた私の契約精霊、二つに分かれた尾を持つ大きにゃ猫の姿で顕現したマタタビが、敵の背後から攻撃をしたにゃ。けれど敵はギリギリでそれを避けたにゃ。

魔法の操作にかかりっきりだと思ってたんだけどにゃあ。折角もう少しで倒せそうにゃ状態を演じていたのに、どこまでも甘くにゃいにゃ。

 けれど、この感情をぶつけるには丁度いいにゃ。

「………………」

「おっ? 私の認識を改めたかにゃ? その甲冑から洩れてくる魔力の量が増えたにゃ。にゃはは、それでいいにゃ。不意打ちで倒せれば一番いいけど、あまりに弱いとやり過ぎちゃうかもしれにゃいからにゃあ」

 私は目を細めて、敵を見据えたにゃ。

「私、今かにゃあり、怒々(ぬぬ)だからにゃあ」

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