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センター側の戦い

「……戻ってこないね」


 大規模魔法用の魔術式を構えた僕は、暫く前にここを出ていった四人のことを考えながら呟く。フレイが探知魔法を発現させているクリフに声をかけた。


「クリフ、どう?」

「……反応なしだ」

「まさか全滅? なんて」

「ちょっと、そういうことは冗談でも言わないでよ」

「あはは、ごめんごめん」


 あまりいい冗談じゃなかったけど、フレイが僕の軽口に反応してくれたお陰で、多少空気が軽くなる。けれど現実的に考えれば、拠点を構えたにしろ戦闘があったにしろ、一人でも脱落せずに残っていたなら連絡しに戻ってくるはずだ。……冗談で済んでくれたらいいんだけど。


『こちらレフト、こちらレフト、戦況報告を行う』


 静まったところで、サブオブジェクトの下にある通信魔法石から、少し興奮しているような声が届く。レフトと言えば、ユート君が配置されていたところだ。まさか、もう脱落してるとか……!?


『ユートの活躍により八人を撃破。現在攻撃係を含めた四人でオブジェクトの破壊に向かっている。こちらの被害はゼロ。報告は以上だ』

「は、八人!?」


 予想とは真逆の、どころか信じられないくらいの大活躍を聞いて、一瞬魔術式の維持を忘れてしまった。僅かに歪んだ魔術式を慌てて元に戻しながら、段々とその事実を呑み込んでいく。

 たった一人で相手の約三分の一を削るなんて……! やっぱりユート君はすごい! すごすぎる!


「あいつ、実力隠してやがったのか?」


 訝しむクリフの言葉を、フレイが首を振って否定する。


「ユートはそんな奴じゃないよ。多分、練習試合でやって見せた石投げが上手くハマったんじゃないかな?」

「だとしてもよ、練習試合じゃ三人しか倒せなかったじゃんか。いや、三人も多いけどよ」

「何言ってんのよ。不意打ち受けてからこっちのメンバーほぼ全員で警戒して、それでももう二人やられたのよ? しかもここ、練習試合の時より広いし、隠れられる場所も多いんだから、別に不思議じゃないわ」


 あまり驚いていないようなフレイの様子に少し驚く。元々フレイはユート君に対して好意的ではあったけれど、そこまで実力を評価してただなんて。

 そう感じたのは僕だけじゃなかったようで、クリフも目を丸くしていた。


「……意外だな。お前、そんなにあいつを買ってたのか?」

「それはそうよ。なんてったって、チーム対抗戦の本戦で戦うことになるかもしれないライバルなんだから」


 ね? とフレイは僕に向く。口元には笑みを浮かべていたけど、その目には闘志の炎が燃えているように見えた。味方からの視線だというのに、受けた僕は背筋が震える。


『ホーム了解。センターはどうだ?』

「あ、私が報告するね」


 アランの声を聞いたフレイが、僕から視線を外してサブオブジェクトを支える柱に近づく。僕は小さく息をついた。大きな魔術式を維持したままの僕とクリフは動けないので、報告はフレイの役目だ。


『こちらライト!』

「あら?」


 しかしフレイが報告するより先に、切羽詰まったような声が届いた。


『今交戦が始まった! 敵は三人でこちらが四人! 至急応援を、うわっ!?』

『ボン!』

『こちらホーム! どうした!? 応答しろ!』


 光弾が炸裂する音、それを聞いたアランの声が響く。それから暫く、離れたところから拾われた悲鳴や炸裂音が続いた。

 不穏な空気が流れる中、長いようで短い時間経った頃、通信魔法石の近くで別の誰かが叫ぶ声が聞こえた。


『敵は五人! 一人はキーラだ! 光弾が曲がって――』

『ボン!』


 その言葉を最後に、通信が途絶えた。通信魔法石に魔力の供給を行っているオブジェクトが破壊されたんだろう。


「……こちらセンター。攻撃係四人が戻ってこない。遊撃係の私と防御係の二人で相手の襲撃に備えている。報告は以上よ」

『ホーム了解。ライト側からの攻撃を警戒せよ。ホームからレフトへ、センターへの人員派遣を要請する』

『レフト了解』

「敵襲!」


 突然、クリフが叫びながら魔術式に魔力を込める。アランの『ストーン・ウォール』程ではないけれど、大きな半透明の壁がせり上がるようにして発現した。オブジェクトに覆い被さるように出現した防御魔法は、木の上を飛び越えて飛んできた光弾を防ぐ。

 僕は急いで光弾が飛んできた方向、ライト側寄りの前方に魔術式を向ける。攻撃を終えた相手は木の後ろに隠れた。


「斬り分けろ! 『ブレイド・ブランチ』!」


 その木の横を狙って魔法を発現させる。魔術式から現れるのは先端が大きな黒い刃だ。同じ大きさの魔術式で発現させる『ブレイド・ルーツ』と比べると、刃自体はそこまで大きくはない。

 だけどそれには勿論、理由があった。


「そこだっ!」


 狙った木の横を通り過ぎるそうなところで、魔術式の一部に魔力を込める。すると刃の先端が枝分かれし、まっすぐ伸びるものとは別で、左右にも刃が伸びていった。


「ぐあっ!」


 横に伸びた刃に相手が当たり、木の陰から転がり出た。薄膜が強く光っているということは、今ので戦闘不能になったってことだ。僕は魔法を破棄するために、さっきとは別の部分に魔力を注ぐ。すると魔法が動きを止め、速やかに空気へと溶けていく。それとほぼ同時に、相手の薄膜も消え去った。


「お前、あんな繊細な魔法使えたのか?」

「まあね。同じ失敗はしたくないから」

「やるじゃない」


 戦闘開始と一応の終息を報告したフレイが親指を立てた。魔術式を構えたままの僕は、笑みを浮かべて返す。

 おっと、少し上の方に魔力が偏っちゃってるな。魔術式の維持も楽じゃないや。


「良かった、三人とも無事みたいだな」


 とそこで、レフト側からユート君が現れる。


「え、ユート君!?」

「お前、オブジェクトを破壊するほうには行かなかったのか?」

「ああ。そっちはチャールズ達に任せてきた。俺は足が速いし、人数が足りないところに応援に向かった方がいいと思ってさ」

「ナイスタイミング! 今丁度、こっちも攻められてるところなんだ。ユートが来てくれて、とっても心強いよ!」


 ユート君の到着を報告をし終えたフレイが喜びの声を上げる。確かにこれで人数は四人、しかも個人対抗戦に出場するフレイや今まさに大活躍したユート君もいる。これならどんな相手でも一方的にやられるなんてことはまずないだろう。


「それで、この後どうするんだ? 俺もここの防衛を手伝えばいいか?」

「そうね……。できたらでいいんだけど、ライト側の方を探ってきてもらえる? もしかしたら私たちを無視して、直接ホームに攻めにいってるかもしれないから」

「分かった」


 頷いたユート君は、早速ライトオブジェクトの方へと走り出す。


「おいおい、本当に大丈夫か?」

「一分経ったら戻ってくる」


 それだけ言い残して、ユート君は森の中へと入っていった。少し進んだだけで、もうその姿が見えなくなる。


「探知魔法もねぇのに突っ込んで……。待ち伏せされたら終わりじゃねぇか」

「その時はその時よ。ただ、ユートなら不意打ちされてもなんとかなる気がするのよね」

「それは、同感かな」


 勿論心配ではあるけれど、複数人からの攻撃を一人で防ぎ、かわし、受け流せるユート君だ。森の中っていう環境にも慣れているみたいだし、よっぽどのことがなければやられたりはしないだろう。


「あ」


 なんて考えていたら、さっき行ったばかりのユート君が戻ってきた。ただし、こちらに背を向けたまま。それが意味することは明らかだった。


「敵が向かってきてる! 少なくとも四人!」

「了解! こちらセンター、敵の狙いはここの模様!」


 声を張り上げながら、フレイが魔術式を形成する。クリフは魔術式を維持しながらライト側に移動し、僕もまた魔術式をそっちに向ける。ユート君が振り返って――


「シイキ、左だ!」

「え? わっ!」

 ボン!


 いつの間にか飛んできていた光弾を左肩に受けてしまう。薄膜の強い光に目を細めながら見ると、正面に一人、相手の生徒が立っていた。

 正面にも敵がいたなんて。悔しさに歯噛みしながら倒れると、その相手の薄膜も何かが当たって強く光った。

 脱落者用の魔法石に魔力を込めつつ視線を動かすと、ユート君が僕を倒した相手に向かおうとして、向き先を僕らの方へと変えるのが見えた。元々迎撃のために持っていた石を振り返りざま投げて、外したときのために追撃しようとしていたみたいだ。あまりの行動の早さに舌を巻く。

 そして、虹色の薄膜が発現するのと同時に、ライト側の森の奥から敵の姿が現れた。その数は五。そして一人はキーラ。報告の通りだった。

 僕は薄膜に魔力を込めたまま、匍匐前進をしてその場から離れようとする。戦いの巻き添えになってはならないからだ。少なくともオブジェクト周りの広場から出るまでは身を低くしてないといけない。

 いつもなら面倒に感じるその移動も、今回は少しありがたく思った。


「行け! 『ファイア・ボール』!」


 フレイの魔術式から赤く燃える火球が放たれる。キーラを狙った攻撃は、その前に立つ女子生徒の防御魔法によって防がれた。その隙に他の三人がサブオブジェクトに対して攻撃を行う。


「させるかよ!」

 ボボボン!


 クリフの防御魔法が再び発現し、三方向からの光弾を防ぐ。その陰から飛び出したユート君が投石を行うも、三人は攻撃してすぐ木の陰に身を隠してしまい、石は森の中に消えていった。

 どうやら連射はできないものの、その分威力が高い光弾を使っているみたいだ。それなら一撃ごとに隠れられるし、こっちの防御魔法も大きく消耗させられる。

 けれど攻撃間隔が長いということは、無防備になる時間も長いってことだ。妨げるもののない空間を前に、ユート君は両方の手それぞれに形成した楕円形魔術式による強化魔法を足に付与し、僅かに迂回するような形で端にいる相手との距離を一気に詰めていく。


「今!」


 半分ほど距離を縮めたところで、キーラを守る女子生徒が声を張り上げる。それを合図に、隠れていた三人は一斉に姿を現した。その両手で、形成し終える直前の魔術式を構えながら。

 狙いはユート君!? そうと悟った時にはもう、攻撃が始まっていた。さっきとは違う連射性の高い光弾魔法、三人分のそれがユート君へと向かう。

 だけど、流石はユート君、攻撃が始まる時にはもう回避の準備をしていたようで、一旦距離を取りながらそこまで大きくない光弾をかわしていく。いつの間にか片方の手の魔術式を形成し直してもいたようで、小さな防御魔法で攻撃を防いだりもしていた。


「『ファイア・ボール:スピード』!」

「あっつぁ!」


 攻撃に夢中になっている相手の一人に、小さな火球が高速で突っ込んでいく。魔術式の一部を改変して速度に重きを置いた攻撃だった。薄膜越しに熱が伝わったのか、攻撃を受けた男子生徒はそう言って倒れる。火傷はしないだろうけど、これで一人脱落だ。


「行け!」

「おわぁ!」


 続けてもう一人、攻撃を中断して木の陰に隠れようとしていた相手に二球目が当たる。残った一人は、反撃しようと魔術式をフレイの方へと向けた。


「食ら、え?」


 だけどその前に、ユート君が投げた石が薄膜を破る。あっという間の流れだった。

 これで三対二! しかもオブジェクトも破壊されていない。大逆転だ!

 このまま相手を全滅させられる。そう確信した僕の目は、さっきからずっと大人しかったキーラが、大きく広げた左右の手それぞれで光弾を放つのを捉えた。

 防御魔法に守られたままのキーラの光弾は、空中で動きを変えてオブジェクトへと向かう。けれどその前にはクリフの防御魔法が立ち塞がって――


「二人ともよけろ!」

「は?」

「え?」


 クリフとキーラが戸惑いの声を上げた、その時だった。


「なっ!?」


 防御魔法に当たる直前、二つの光弾はまるで何かに叩き落とされたかのように落下した。一つはフレイに向かって、もう一つはそれとは逆に。


「はあっ!?」

「ウソっ!?」


 そして光弾は、急いで防御魔法の陰に隠れたフレイの動きを読んでいたかのように、三度軌道を変えて防御魔法の脇から入ってきた。その逆側から、もう一つの光弾も。


 ボボン!

「…………何が」

「あー、やられちゃった……」


 未だに現実に理解が追いついていないクリフと、悔しそうに息をつくフレイが、脱落した。僕は思わず、その場で止まってしまう。

 今のは、まさか、三段変化? キーラがあんな技術を身につけていたなんて……。


 ボン!


 その音で我に返る。そうだ。まだ戦いは終わってない!

 見ると、ユート君が相手の防御魔法を光弾で破ろうとしていた。前方を広く守る防御魔法は、周りに木や茂みがあることも相まって回り込みにくそうだ。しかも光弾を変化させられるキーラがいたんじゃ尚更後ろを取りづらい。ユート君もそう判断したのか、正面突破を選んだようだ。

 たった一発で光弾じゃ破れないと悟ったらしく、ユート君はすぐさま魔術式を形成し直す。『盾蹴り』をするつもりだ。数秒もしないうちに落下する小さな防御魔法が発現し――


「ええっ!?」


 爪先で蹴ろうと右足を上げた瞬間、相手の防御魔法が前進した。

 シールドバッシュ! いや、あの大きさだから全然速くないし、受けたところで少し押されるくらいで済むだろう。けれどユート君にとっては致命的だ。タイミングを外されたユート君の攻撃が、自ら発現させた防御魔法を挟んでではなく、直接相手の防御魔法に触れた時点で失格になる!


「っとぉ!」


 ユート君は蹴りの動作をする足を、右手で押さえることで無理矢理止めると、地についている足で小さく後ろに跳ぶ。どうにか自爆は避けられたようだ。

 だが、それすらも織り込み済みだとでも言うように、キーラが放った光弾がユート君を襲う。左右から挟むようにして軌道を変えた光弾は、それぞれ頭と足を狙った。

 前からは防御魔法、左右からは光弾。三方向を塞がれたユート君は、振り下ろした右足で地面を強く踏みしめた。


 ドッ!


 ここまで聞こえるほど大きな音が響いた直後、ユート君の体が高く跳んだ。僅かに遅れてユート君の体があったところを通った光弾は、再び軌道を変えて正面へと飛んでいく。もしユート君が後退していたら追撃を受けていた。


「しまった!」


 キーラを守っていた女子生徒が驚きの声を上げている間に、前進する防御魔法を飛び越えたユート君は、右手の楕円形魔術式から光弾を放って彼女の薄膜を破る。


「伏せて!」


 今まで黙っていたキーラが叫び、両手の魔術式をユート君に向ける。手を広げたままの状態でありながら、器用にユート君の方へと狙いを定めた魔術式が光る。


 ボォン!

「きゃあっ!」


 直後、薄膜が破れたのはキーラの方だった。片方の魔術式が暴発したためだ。もう片方の魔術式から放たれた光弾はあらぬ方向へと飛んでいく。

 あれは僕もやられたことがある。発射口の前に防御魔法を置かれたんだ。至近距離での光弾の炸裂、そして光弾になりきらなかった魔力が逆流しての暴発、それによりキーラは自爆した。まさかユート君の方が相手に自爆させるだなんて。


「っ!」


 勝負あり。そう確信した僕は、キーラが放ったもう一つの光弾が軌道を変え、ユート君の方へと向かっていくのを見た。元々変化する光弾を発現させるための魔術式だったんだ。攻撃が戻ってくるよう魔術式を改変することも簡単だったんだろう。

 だけど僕は脱落した身だ。試合への干渉は厳禁となる。だから声を上げそうになるのを必死で抑え、表情からも悟られないよう顔を伏せる。


 ボォン!


 やがて、光弾が炸裂する音が響いた。


「あ……」


 恐る恐る顔を上げた僕の目に映ったのは、消えゆく防御魔法を前にして立つ、薄膜を纏ったままのユート君の姿だった。



 ◇ ◇ ◇



 その後、主力を失ったクラス・リュードは防御で手一杯となり、攻勢に出ることはなかった。僕たちのクラスは攻撃を続け、三つのサブオブジェクトを落とし、残りはメインオブジェクトというところで時間切れになった。結果、一つのサブオブジェクトしか破壊されなかった僕たちの勝利で終わった。

 MVPは勿論、ユート君だ。


「ユートぉ! 活躍しすぎだろお前!」

「一人で八人も倒したって聞いたときはびっくりしたよー」

「いやまあ、上手く不意打ちが決まったってだけだよ。だからその、あんまり持ち上げないでもらってもいいか?」

「おいおい謙遜するなよ」

「もっと誇りなよー」


 そのため、試合が終わった後はボブやエミリーを始め、今まで実力を疑問視していたクラスメイトたちからも口々に誉められることとなった。

 しかし当の本人は居心地悪そうだ。そう言えば、誉められることに慣れてないんだったっけ。こういう時くらい素直に喜んでもいいと思うけど。


「皆、喜ぶのはいいけど、そろそろ次の場所に移動するわよ」

「そうだな。移動が遅れると、弁当を食べる時間がなくなるぞ」


 フレイとアランの言葉に、やべっ、そうだった、と声が続き、ようやくユート君を囲んでいた人垣がなくなった。


「全員いるわね? それじゃ、出発よ」


 フレイを先頭に次の試合会場へと歩き出すクラスメイト。その後ろを最後尾にいる僕たちも追っていく。前回は歩きとは言え試合の後にそれなりの距離を移動することに愚痴をこぼす生徒もいたけれど、今回は勝ったあとだからか気が滅入るような発言をするクラスメイトはいなかった。僕も正直馬車か何かで運んでほしいと思っているけど、雰囲気を悪くしないよう黙ることにする。


「ありがとな、アラン」

「気にするな。話があるのは本当のことだしな」


 隣にはアランと、今後の戦略で話があるという理由でアランに呼ばれたユート君もいた。アランもユート君は褒められることが苦手なのを知っているから、気を遣ってくれたんだろう。


「それで、話ってなんだ?」

「ああ。実は次の相手クラスなんだが、どうも厄介な生徒がいるみたいでな。お前にはその相手を頼みたい」

「厄介な相手? 具体的には?」

「俺も話に聞いただけで詳しくは分からないんだが、どうもそのクラス内の紅白戦で大活躍した生徒がいるらしくてな。俺たちを惑わせるデマの可能性もあるが」

「……まさか」


 アランの話を聞いた僕は、思わず呟きを洩らしていた。


「シイキ、心当たりでもあるのか?」

「いや、あるにはあるんだけど、でも……」


 もし僕の想像が当たっていたとしたら、どうして……。


「もしそうなら、面白いな」


 ユート君も僕と同じ想像をしているようだけど、その表情は晴れやかだった。


「……とにかく、不確定要素が多いんだ。そこで機動力があって、戦闘力も高いユートに警戒を強めてもらいたくてな。そしてその生徒の存在を確認出来たら、優先して倒しに行ってほしい」

「分かった」


 ユート君の了承に頷くと、アランは先に進んで、他のクラスメイト達とも相談をし始める。僕はユート君に近づくと、声を潜めて話しかけた。


「ねえ、事前に話しておいた方がいいかな?」

「一応知らせておいた方がいいかもな。アランの言う通り、俺たちを混乱させる嘘かもしれないし、全然別の生徒のことを言っているかもしれないけれど」

「そう、だね。後で伝えておくよ」

「ああ、頼んだ」


 それで会話が終わり、僕たちは静かに足を進める。

 向かう先にいる相手は、クラス・ジェンヌ。

 フルルのいるクラスだった。

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