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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0093.至福のひと時(シン視点)

「ただいま。カハル、僕の所においで~」

「ただいま。ミナモ、ちょっといいか?」

「はい、どうされましたか?」


「シンが最後の屋敷で壁を破壊した。請求書が送られてくるから処理して貰えるか?」


「はい、畏まりました」

 

 背で会話を聞きながら、ヒョウキに近付いて行く。


「おとちゃ、おかえりぃー」

「ただいま。ヒョウキ、早くカハルを背中から降ろして」

「あー? ちょっと待て。サインする所までやる」

 

 こちらを見てニコニコしているカハルの頭を撫でる。はぁ、可愛い。荒んでいた気持ちが一気に癒された。


「――ほいよ、受け取れ」

「ありがとう。カハル、良い子で待っていたかな?」

「うんっ。ロウちょうぐんとおはなししたよぉ」

「ロウ将軍?」

「はい、そうなんです。ロウ将軍がこちらに立ち寄った際に、カハルさんに随分と興味を持たれて、お話していたのですよ」

 

 ダークの報告が終わったのか、ミナモが近付いて来ながら教えてくれる。


「どんなお話をしたの?」

「えーっと、まごににゃらにゃいかぁって、いったよ」

「孫? ロウ将軍って孫が居そうだよね」

「いないぞ。独身だ。若い頃から、ずーっと城で暮らしているぞ。今は偉くなったから、離れの高い塔の上に住んでいる」

 

 ヒョウキが纏めた書類をミナモに渡しながら会話に入ってきた。


「モテそうなのにな」

 

 うんうんとカハルがダークに頷く。


「ちぶくて、かっくいー」

「カハル、気に入ったのか?」

「うん。ニコちゃたちもちゅきなのー」

「そうか。俺の城の将軍も渋くて格好いいぞ」

「ほぉー、みったい!」

「今度、ニコ達と見に来ればいい。喜ぶぞ」

「うんっ」

 

 ロウ将軍か……。カハル達が気に入っている人物なら問題は無いと思うが、今度話してみるか。問題があるようだったら、早めに引き離そう。傷が浅いうちに。


 その時、ヒョウキが俺を探るような目で見ている事に気付く。


「お前って、心配性だよな」

「ほっとけ」

 

 ヒョウキの呟きに囁き返し、ついでにデコピンする。「痛った!」と叫ぶヒョウキにニッコリ笑い掛け、カハルに見えないように脛も蹴っておく。余計な事を喋ったら、ただじゃ置かない。


 ダークが微妙な顔で俺を見ているが気にしない。カハルが毎日を無事に楽しく過ごしてくれればいいのだ。その障害となる物は俺が全て取り払う。


「おとちゃ、おこってるのぉ?」

「カハル、怒ってないよ。考え事をしていただけだから安心してね」

「ちょうだんちてね」

「もう、カハルは優しいな。お言葉に甘えて、困った事があったら相談させて貰うからね」

 

 カハルが大きく頷いて、任せろと言うように胸を小さな拳でトンと叩いている。可愛さに思わず、ぎゅーっと抱き締める。はぁ、カハルの甘くていい匂いだ。先程の甘ったるさとは全然違う。


「ただいま戻りましたー」

「あっ、ニコちゃだ!」

「カハルちゃーん、戻りましたよ。えへへ、いい子、いい子」

 

 喜び勇んで走り寄って来たニコちゃんとカハルの目線が合うようにしゃがみ込むと、嬉しそうにカハルの頭を撫でている。


「ただいま戻りました」

「おかえりなさい。ヴァンちゃん」

「ミナモ様、こちらが預かって来た書類です。ご確認をお願い致します」

「はい、ありがとうございます」

 

 ニコちゃんがハッとした様に、ミナモの元に駆けて行くのと入れ違いにヴァンちゃんがやって来る。


「カハルちゃん、ただいま」

「ヴぁっちゃ、おかえりなしゃい」

 

 頷いたヴァンちゃんが尻尾をフリフリしながら、カハルの手を握る。言葉は少ない子だが、全身からカハルが好きだという事が伝わって来る。思わず頭を撫でると、不思議そうに見上げてきた後に、はにかむ。


「ああ、もう、二人共可愛い」

 

 ヴァンちゃんとカハルをぎゅーっと抱き締めると、揃って抱き付いてくる。至福のひと時だ……。


「シン、俺は先に帰るぞ」

「ん? ああ、ダーク、お疲れ。またね」

 

 片手を軽く上げて、ダークが帰って行く。ニコちゃんの報告も終わったようだ。今日はお祝いだから、カハルの好きな桃を買って帰ろう。


「二人共、今日はお店に寄って帰るからね」

「お店⁉ どこに買いに行くんですか?」

「そうだねぇ。土の国に行こうか」

 

 頷いた二人が僕の足にビタッと抱き付く。最初に教えた、離れたら異次元に落ちて戻ってこられないという話が衝撃的だったらしく、毎回、一生懸命だ。


 駄目だ、可愛いすぎて笑いがこみ上げて来た。馬鹿にしていると誤解されないように、腹筋に力を入れ、歯を喰いしばって耐える。動きを止めた僕を不思議に思ったのか、カハルが顔を見上げてくる。


「おとちゃ?」

「――お父さんは大丈夫だよ。お店に寄ってから帰ろうね。ヒョウキ達、またね」

 

 ミナモ達の労いの言葉を聞きながら移動の魔法を発動させた。


ニコちゃんは報告を忘れて、カハルに一直線です。シンと行動が一緒ですね。

ダーク、大人です。でも、本当は皆を抱っこしたいダークでした。


次話は、ヴァンちゃんが活躍(シン視点)です。


お読み頂きありがとうございました。

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