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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0092.憂鬱な魔物退治(シン視点)

 カハルが一人で座り、喋れるようになった。今日はお祝いしてあげよう。


「はぁ……。帰りたい」

「シン、出てきたばっかりだろう。何とか耐えてくれ」


「喋れるようになったのに、側に居ないとかあり得ないだろう? あんなに可愛い喋りをどれだけ聞き逃すと思っているんだ」


「俺も聞きたいのはやまやまだが、今日は無理だ。数が多い」


「全く次から次へと……。世界をぶん殴ってやりたい。リセットの時に魔物を全滅にすればいいだけだろ?」


「まぁな。だが、嘆いたところで現状は変わらないだろう? ペルソナは倒したのだから、俺達の理想はこれから叶うさ」

 

 ダークの言う事や世界の事情も分かってはいるのだ。ペルソナの力が強大過ぎて手が出せなかったのも、奴の守護を受けている魔物を滅せないのも。だが、その所為でカハルは……。考えていたら余計に腹が立ってきた。この怒りは魔物に受け取って貰おう。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「本を見せて貰いたい。通知は受け取っているだろう?」

「は、はい。こちらへ」

 

 魔物は本に封印されている事が多い。魔法の本は価格が高いので、所有者は貴族や研究者が殆どだ。権力を使って口外禁止にし易いのが、せめてもの利点か。


 今はカハルの代わりにヒョウキが全土に魔力を送り出してくれている。それにより魔物独特の魔力をヒョウキが詳細に感じ取れるようになった。


 魔物の状態や居場所を参考にして、ミナモが事前に本の所有者に連絡を入れくれている。そこを次々に尋ねて行くのだ。


「魔法書は全てこの部屋に集めました」

「急で済まない。危ないから暫く離れていて貰えるか?」


「ダーク様、当家にも魔法使いがおります。何かお手伝いする事はございますか?」


「いや、手伝いはいらない。お前達の護衛に回してくれていい」

「畏まりました。お気を付けて」

 

 礼をして所有者が去って行く。


「魔物の封印に気付けない魔法使いの力などいる訳がないだろう」

「こら、シン、悪態を吐くな。さっさと終わらせるぞ」

「……了解」

 

 どの本かは直ぐに分かった。表紙がゆっくり、ゆっくりと持ち上がっている。床に叩き落し靴でガンッと踏みつけ、剣で一突きにする。それでも抵抗するので光の魔法を剣から注ぎ込む。事切れたのか沈黙した本が灰に変わる。


「次、行くぞ」

「シン、待て。一応、挨拶するぞ」

「ふんっ、面倒な」

 

 ダークが苦笑し、所有者の待つ部屋に向かう。嫌々その後ろを歩きながら、カハルの笑顔を思い出して気を紛らわせる。今朝の「――おいちっ」は可愛かったな。


「待たせたな。処理は終わった」

「ありがとうございます。魔物は何体居たのでしょうか?」

「一体だ。倒したから本は灰になっている。済まないが、灰の片付けを頼む」


「はい、畏まりました。魔物が封印されていると知ってから眠りも浅くなっていたのですが、これで安心して眠れます。本当にありがとうございました」


「ああ。もう安全だから、ゆっくり休んでくれ。それじゃあ、俺達はこれで失礼する」

 

 ダークに喋りは全て任せ、去り際にニッコリと笑っておく。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 次々と魔物を処理し、本日最後の家だ。もう少しで帰れる。


「お待ちしておりました。どうぞ、中へ」

「ああ、邪魔するぞ。早速、本を見せて貰えるか?」

「ええ。どうぞこちらへ」

 

 案内された部屋は甘ったるい匂いがする。案内してくれた所有者の付け過ぎの香水と同じ香りだ。頭が痛くなりそうなので、さっさと終わらせよう。


「こちらですわ、シン様」

 

 所有者の女性が胸を押し付けて来ながら、腕を絡めて来る。


「不快だ。俺に触るな」

 

 振り払われるとは思っていなかったのか愕然とした表情を向けて来る。自分の容姿に随分と自信があるようだが、俺の顔にしか興味が無いような女性など御免だ。


 その時、部屋がふっと暗くなった。こんな問答をしていなければ間に合ったものを!


「グルルルル、グガーッ!!」

 

 復活した魔物から風の刃が次々と放たれる。女性の襟首を掴み、移動の魔法で部屋の外に飛ばす。


 ダークが長剣の一閃で全ての刃を落としている間に、羊に似た魔物が長い角を向けて迫って来る。剣に光の魔法を注ぎ込み、――振り下ろす。


 空中に吹き飛んだ魔物が灰と化すが、力が強すぎたのか部屋の壁に大穴が開き、外の空気が流れ込んで来た。


「空気がうまいな」

「確かに辟易とする匂いだったが、どうするんだ? これ」

「さぁ、どうでもいいな。俺は帰る」

「はぁ……。シン、口調が素になっているから気を付けろよ」

「そんなヘマはしないさ。それに、カハルの前だと自然とああなるから問題無い」


「ニコとヴァンにも優しくしろよ。しなかったら取り上げるぞ。あの二人は俺のお気に入りだからな」


「ああ、それも問題無い。あの子達は非常に素直で裏表がなくて可愛いから、自然と優しくなれる」


「そうか、ならいい。さて、帰るか」

 

 廊下に出ると女性が近寄って来て、部屋の中を見て絶句する。


「すまんな。魔物を倒す過程でああなった。弁償するから、魔国に請求書を送ってくれ」

 

 聞いていなそうなので途中からダークは執事に話し掛けている。


「畏まりました。他に何か問題はございますか?」

「いや、魔物も全て倒したので安心して過ごしてくれ。それと、分かっているとは思うが口外無用だ」

 

 深々と礼をする執事に見送られて屋敷を出る。


シンが苛ついていますね。ダークにほぼ丸投げです。

素の状態だと『俺』となり、口調も変わります。

イライラの分、力が入ってしまいました。

強大な力を持っているので、気を付けないと威力が大きくなりがちです。


次話は、子供たちに癒されます(シン視点)。


お読み頂きありがとうございました。



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