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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0089.白族探検隊

 昨日、急遽お休みが決まった。だが、やる事は既に決めてある。シン様の家がある空間を探検するのだ。川に洞窟に畑に山など盛り沢山だ。


「僕は魔物退治をしてくるね。カハルはヒョウキに預けるからね。それと、何か困った事があったら、ヒョウキやミナモに相談するんだよ。本当は僕が対応してあげたいけど、交戦中は通信の鏡に出られないから。ごめんね」


「そんな、謝らないで下さい。僕達は探検に行って来ますね」

「ああ、そうだ。――はい、お弁当」

「わぁ、ありがとうございます」

「ありがとうございます」


「うん。おにぎりと卵焼きとかが入っているから。ヴァンちゃんの好きな沢庵も入っているよ」


「おぉ、沢庵。昼が楽しみ」


「ふふっ。気を付けて探検するんだよ。それと、しっかりご飯を食べてね。空いた時間は箸の練習が出来るように用意してあるから頑張るんだよ。それじゃあ、僕は行くね」


「「いってらっしゃい」」

「行って来ます」

「あぶー、あー」

 

 カハルちゃんも元気に「いってきます」のようだ。手を振って見送り、行動開始だ。リュックにお弁当やお茶を入れたら、しゅっぱーつ!


「ヴァンちゃん、どこから行く?」

「山からにしよう。遠くから攻略して、川辺で昼ご飯にしよう」

「いいねぇ。そうしよう」

 

 僕とヴァンちゃんは並んで走りながら山に向かう。地図も後で作ろうっと。山はお家を背にして左斜めにある。大分、距離がありそうだな。山に行くまでは森が続いている。僕達が走り抜けていくと、鳥さんが羽ばたいたり、リスさんが興味深そうに僕達を見たりする。


「ニコ、左横から大きな動物の気配がする」

 

 答えようとした所で草むらがガサガサと大きく揺れ始めた。これは相当大きいんじゃ? 僕とヴァンちゃんは武器を構え待つ。


「グオォーーー」

 

 吠えながら飛び出て来た巨大な熊さんが二本足で立ち上がり、僕達を見て――お辞儀した。


「へっ?」

 

 思わず拍子抜けして、まじまじと熊さんを見つめる。ヴァンちゃんもぽかーんとしたままだ。熊さんは近くに生っていた木の実をブチっともいで僕達に差し出してくれる。疑問符でいっぱいになりながらも、ありがたく頂戴すると、嬉しそうにもう一度お辞儀して去って行く。


「……なんだったんだ?」

「さぁ……。きっと良い熊さんだったんだよ」

 

 新たな謎を一つ抱えたまま、僕達はまた山を目指す。その後は特に何事もなく順調に森を抜けた。


「ニコ、見ろ。洞窟が山の麓にある」

「本当だ。暗いかな?」

「取り敢えず入ってみるか」

「うん」

 

 中に入ると壁が淡く発光している。これなら奥まで行けそうだ。少し進むと広い空間に出る。壁際に箱が幾つも置いてあるので近付いて行くと、サツマイモが大量に入っていた。


「ニコ、モヤシが栽培されている」

「本当だ。ウドにアスパラもあるよ」

「この洞窟は野菜を栽培する為にあるのかも」

「うん。もうちょっと進んでみる?」

「うむ。行ってみよう」

 

 進んでいくと、暫くは細い通路が続いていた。広い部屋は最初の所だけなのかな? てくてくと更に進んで行くと、発光している壁の色が深い青に変わり始めた。綺麗だなぁと、ゆっくり進んでいくと広い空間に出る。


「ニコ、上を見ろ」

「うわぁ、綺麗だねぇ……」

 

 満天の星空のようだった。深い青の洞窟の天井に大小の白い光が瞬き、カーン、カーンと遠くで鳴り響いている鐘のような音が空間を満たしている。心の深い所にすっと入ってくる聖なる光と音に、なんだが涙が出そうだ。ヴァンちゃんも瞳を潤ませながら、服の胸元をギュッと掴み、感嘆の溜息を吐きながら見入っている。


 大いなる存在が創り出した刹那の煌めきを一片たりとも逃さないように、僕達は暫く無言でこの光景を見ていた。


「――ニコ、名残惜しいが、そろそろ進もう」

「うん。また来ようね」

「ああ。必ず」

 

 更に進んで行くと、上へと階段が続いている。どこに続いているのだろう? なんだかワクワクしてきた。


「まだ続いているね」

「ああ。結構長いな」

 

 タッタッタと走りながら登っていると風を感じ始める。そろそろ外が近いのかもしれない。


「ニコ、出口だ」

「おお、着いた。眩しっ」

 

 辿り着くと絶景が広がっていた。この階段は山のてっぺんに続いていたのか。


 森がぽっかりと開けている部分が、シン様のお家がある所だよね。岩が平らになっている所に二人で並び、遠くまで見える魔道具の筒を覗く。


「ニコ、あそこに畑がある」

「本当だ、結構広いね。川が途中で二手に分かれているよ」

「うむ。森も結構広いな。ニコ、物置の後ろが広く開けているぞ」

「あそこは行った事ないね。帰り道で寄ってみようか」

「そうだな。何に使っているのか見てみよう」

 

 頷こうとした僕のお腹がキュルキュルと鳴く。絶景よりもご飯ですか……。もうちょっと空気を読んで、お腹さん。


「……お腹空いたね」

「そうだな、川に行くか。下りる道は他にありそうか?」

「うーん……行けなくもないだろうけど、急だし足が滑りそうだよ」

「ふむ。大人しく階段で帰るか」

「そうしようか」

 

 ぴょんぴょんと勢いよく階段を下りて行く。うん? 壁に違和感がある。


「ヴァンちゃん、待って」

「どうした?」

 

 勢いよく下っていたヴァンちゃんが戻って来る。


「ここ何か変じゃない?」

「この壁か? 確かに他の所と光り方が少し違うような?」

 

 ヴァンちゃんがペタペタと触ると魔法陣が浮かび上がった。


「うぉっ、触っちゃいけない物だったか?」

 

 僕達が恐々と伺っていると、魔法陣がふっと消えた。ほっと二人で胸を撫で下ろし、階段を下りて行く。


「後で、シン様に報告しよう」

「うむ。そうしよう」

 

 星空の様な洞窟をゆっくりと歩いて通り過ぎ、細い通路を進み外へと出る。


「行きとは違う道にするか?」

「そうだね。上から見た感じだと、そっちにも川がある筈だし」

 

 キラキラと葉の間から光が降り注ぐ森の中の道を歩いて行く。森のいい匂いだ。こういう匂いを嗅ぐと安心する。


「シイタケ発見」

「おぉ、沢山ある」

 

 採ってもいいのか分からないので場所を覚える。その他にも次々と森の幸が見付かった。豊かな森だなぁ。動物さん達もここなら快適に暮らせるだろう。


 散策を楽しみながら歩いていたら、あっという間に川に着いた。いっぱい歩いたけど、楽しみながらだったからか距離を感じなかった。


「ニコ、あの大きい石の上なんか良さそう」

「いいね。あそこでご飯にしよう」

「うむ。その前に手を洗おう」

「そうだね。――うわっ、冷たくて気持ちいい」

「気持ちいい。魚もいる」


「そういえば、ヴァンちゃんはシン様にお魚釣って来てねって前に言われていたよね」


「うむ。釣り竿があるらしい。でも、俺は手掴みの方が得意かも」

「確かに。サッと捕まえちゃうもんね」

 

 問題点は、手が小さいので大物は捕まえられない事だろうか。


 魔法石で手を乾かしながら岩に向かう。よっこいしょっと。水筒とお弁当を岩の上に広げる。


「「いただきます」」

 

 まずはお茶を飲もうっと。ぷはぁー、おいしい。動き回ったから大分喉が渇いている。ヴァンちゃんも喉が渇いていたのか、ゴクゴクとお茶を飲んでいる。僕も、もう一杯飲もう。


 お弁当の蓋を開けると、色鮮やかで可愛らしい。


「ヴァンちゃん、このウインナーはカニみたいだよ」

「これはチューリップみたいだ」

 

 シン様が言っていた、おにぎりと云うのはこれかな? ご飯の中に具を入れて握って海苔を巻いて完成らしい。手で掴み頬張ると昆布だった。うん、おいしい。ヴァンちゃんは沢庵をポリポリと嬉しそうに食べている。この、沢庵好きめぇ。僕のを一切れサービスだ。


「ヴァンちゃん、沢庵を一枚あげる」

「いいのか⁉ じゃあ、ウインナーを一つ食べていい」

「ありがとう。おにぎりも美味しいよ。昆布が入っていたよ」

「ほう。――もぐもぐ。ん? 昆布じゃないぞ?」

「えっ、違うの? 本当だ。鮭だね」

 

 もう一つのおにぎりををガブッと齧ると鮭が出て来た。


「ヴァンちゃん、こっちが鮭だったよ。二種類あるんだね」

「どっちもうまい。この卵焼きもうまかった」

「どれどれ。――甘い卵焼きだね」

「うむ。この鶏肉を揚げたのもジューシーでうまい」

 

 二人でうまいうまいと言いながら食べきる。はぁ、お腹いっぱいだ。食後にお茶を飲みながら川を見て、のんびりと過ごす。ここに来る為の移動の魔法は怖いけど、非常に素晴らしい場所だ。早くカハルちゃんを連れてお散歩したいなぁ。


 隣を見るとヴァンちゃんが寝そうになっている。ちょうどいい気温で、気持ちいい風も吹いているもんね。僕も少しだけ寝ようかな……。


「ニコ、起きろ。家に帰るぞ」

「んはっ⁉」

 

 本格的に寝てしまっていたようだ。


「大分、遅くなっちゃた?」

「今、十三時半」

「あれ、そんなに経ってない。ごめんね、帰ろうか」

「ああ」

 

 小走りで家まで戻る。こっちの道も木の実とかが沢山あるなぁ。あっ、あそこからはランニングで通った事がある。段々と森が開けていき、お家が見えてきた。そうだ、物置の後ろの空間を見るんだった。


 いつもとは違う横道に逸れて歩いて行くと、そこには沢山のニワトリさんが居た。


「いっぱいいる」

「ねっ。あそこのニワトリさんの尾羽、一本が金色だよ」

「おぉ、凄い。もう少し近寄ってみるか」

 

 そろそろと近付いて行くと、気付いたニワトリさんが一斉に近寄って来た。


「コケー、コッコッコ」

「コケッ、コケッ」

 

 囲まれてしまった。ヴァンちゃんと頷き合い、取り敢えず挨拶だ。


「初めまして。白族のニコです。暫くここで暮らす事になったので、よろしくお願いします」

 

 深々と頭を下げるとニワトリさんも一斉にお辞儀を返してくれる。良かった、怒ってはいないみたいだ。


「白族のヴァンです。これからよろしくお願いします」

 

 お辞儀し合った後に、手を振って別れる。帰ったら箸の特訓だ。


お休みを満喫していますね。

熊さんに貰った木の実は大事に持ち帰り、シンに報告です。

外でのんびりご飯、いいですねぇ。岩の上で寝たので少し体が痛い二人です。


次話は、箸の特訓を頑張ります。


お読み頂きありがとうございました。

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