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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0087.隠し事はいけません

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい。お昼ご飯にしましょうね」

「はい。お腹ペコペコです。あれ、ヴァンちゃんが居ない」

「まだ、戻って来ていないのですよ。そろそろかとは思うのですが」

 

 その時、ヴァンちゃんが大きな荷物を抱えながら戻って来た。


「ただいま戻りました」

「お帰りなさい。その荷物はどうしたのですか?」

「闇の国の宰相様からヒョウキ様に渡すようにと預かって来ました」

 

 ミナモ様が不思議そうに包みを開いていくと、大きな魔法陣が描かれた布が現れた。


「おっ、届いたか。鏡の魔物を倒す時に余ったダークの血で描いて貰ったんだ。封印されている魔物に使おうと思ってさ」

 

 ヒョウキ様が嬉しそうに近付いて来た。


「早速、設置されますか?」

「そうだな。ご飯の前にやってくるか」


「お二人はこちらに座って下さい。配達はどうですか? 何か困った事などありましたか?」


「俺は今の所、順調です」


「ヴァンちゃんは問題無しですね。引き続きよろしくお願いしますね。ニコちゃんはどうでしたか?」


「特には……」


「ニコちゃん、隠し事はいけません。この任務について起こった事は、全てきちんと報告して下さい」


「でも、告げ口みたいな気がして……」

 

 僕が俯くと、ミナモ様が頭を撫でてくれる。


「告げ口ではなく、ニコちゃんは私に頼まれて報告をするのです。それに対する判断は私に任せて下さい。報告した事でニコちゃんは心を痛めなくてもいいのですよ」

 

 ヴァンちゃんが僕の背に手を置き、そっと促してくれる。


「……えーと、昨日の赤髪の部長補佐さんがミナモ様の様子を知りたがっていて、肩を掴んで中々離してくれませんでした。それを見兼ねた通りすがりの方が助けて下さいました」


「なるほど……。ニコちゃん、もう彼の所には二度と行かなくてもいいです。私の所に直接呼び出します。嫌な思いをさせてしまいましたね。申し訳ありません」


「ミナモ様、頭を上げて下さい。僕、困っちゃいます。えーと、そのですね、あっ、そうだ! お聞きしたい事があるんです」

 

 頭を上げてくれないミナモ様に焦り、なんとか話題を絞り出す。


「――聞きたい事ですか? 何でしょう?」


「えっと、助けてくれた方が、とっても可愛いぬいぐるみを持っていたんです。お聞きしたら、お父さんがお店をやっているそうです。土の国のビジュ・コパンというお店なのですが、ご存知ですか?」


「はい、知っています。私もよく行きますよ」

「ミナモ様、ぬいぐるみが好きなんですね!」


「好きというか、私の場合は贈り物として購入する事が多いです。あのお店は、ぬいぐるみのお洋服などに本物の宝石を使用していて、とても高級感溢れる物となっていますから、貴族の方達に贈るには最適です」


「宝石⁉ じゃあ、僕が買えるお値段じゃないですね……。カハルちゃんが喜びそうな感じだったのに。いや、貯金をおろせば買えるかも」


「ニコ、俺もお金出す」

「本当⁉ じゃあ、今度一緒に見に行こうね」

「うむ。カハルちゃんが欲しがるのを買う。楽しみ」

「大丈夫ですか? 服なども一式揃えるとなると、何十万もしますよ」

「えっ、そこまで高いんですか⁉」


「はい。本体自体も手が込んでいて良い素材を使っていますから、他のお店よりも高いです。そこまで高い物をニコちゃん達から貰ったら、カハルさんは困ってしまうのではないでしょうか? ぬいぐるみより、お二人が側に居てあげる方が喜ぶと私は思いますよ」

 

 確かにそんなに高かったら、カハルちゃんは受け取るのを躊躇してしまいそうだ。よし、僕とヴァンちゃんの毛皮を心ゆくまで撫でて貰おう。ふわふわにしておかなきゃ。


「そうですね。お二人共、ふわふわな毛並みですから」

 

 なぜ、思考が筒抜け? おかしいな……。


「ヴァンちゃん、僕、口に出てた?」


「いや、出てない。でも、大きく頷いて自分の毛並みをチェックしていたから分かる」


「俺にも触らせて欲しいな。抱っこもしたいな。シッポも触りたいな」

 

 ……聞かなかった事にしよう。さて、ご飯ご飯。


「無視なのか⁉ よし、ヴァン、遠慮はいらない! さぁ、来い!」

 

 ヴァンちゃんは、腕を広げ、片膝をついて待っているヒョウキ様をチラッと見た後、ミナモ様の足に抱き付く。


「ミナモ様がいい」

「ふふっ、ありがとうございます。――よいしょ。さぁ、ご飯を食べましょうね」

 

 ミナモ様に抱き上げられてヴァンちゃんが机に向かう。僕も付いて行こうっと。


「もう少し俺に優しさをくれてもいいんじゃないか⁉」

 

 全員が一斉に首を横に振った。

 


 撃沈したヒョウキ様を放置したまま、ご飯を食べる。今日のメニューはパン、野菜の旨味たっぷりのミネストローネ、バターのいい香りを纏った鮭のムニエル、サラダだ。デザートはオレンジ。


 お腹が空いていたので黙々と食べ進み、デザートのオレンジを頬張っていると、ミナモ様が慌てたように僕達に話し掛けてきた。


「すみません、私はお二人にお休みの事を話しましたか?」

「聞いていないと思います」

 

 ヴァンちゃんも首を横に振っている。


「急で申し訳ありませんが、明日はお二人共、お休みの日です。今頃になってしまい大変申し訳ありません」


「そうなんですね。了解しました。ヴァンちゃん、お家の周りを探検しに行こうね」


「うむ。山とか洞窟に行く」

「それは楽しそうですね。休み明けにお話を聞かせて下さいね」

「はい、しっかり見てきますね」

 

 デザートまでを綺麗に平らげて、お腹を撫でる。ふぅ、美味しかったなぁ。視線を上げると、ヒョウキ様と目が合う。


「おやつには戻って来いよ。休憩はしっかり取らないとな」


「はい。あの、他のお城でも売店を見付けたんです。そこでおやつを購入してもいいですか?」


「ああ、構わない。お小遣い足りるか? 俺も少し出してやるぞ」

「昨日のお金で十分に足りるので大丈夫です」


「そうか? 因みに何を買おうと思っているんだ?」

「限定ラムネです!」

「ニコ、俺の分も一緒に買ってきて欲しい」

「うん、任せておいて。お菓子は何がいいの?」

「ラスクがいい」


「了解。ミナモ様達は何がいいですか?」


「私達は昨日のチョコレートが少し残っているので、お二人の分だけ買ってきて下さい」


「分かりました。それじゃあ、午後の配達に行って来ます。行こう、ヴァンちゃん」


「うむ。ミナモ様、行って来ます」

「はい、お気を付けて」


ニコちゃんは隠し事が出来ませんね。正直者です。

ミナモの怒りを感じて、今頃、赤髪さんはビクッと周りを見渡していそうです。

お高いぬいぐるみでした。でも、自分の毛皮であっという間に解決です。


次話は、グラタンを食べますよ~。


お読み頂きありがとうございました。

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