0076.みんな、個性的
何とか時間内に終わった……。個性的な人が多いなぁ。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい。少しよれよれしていますが大丈夫ですか?」
「何というか個性的な方々が多いですね……」
「すみません。慣れるまでは少し大変かもしれませんね。明日、特に個性的な方の対処法をお教えしますね」
「ありがとうございます。最初の方達とかは中々、書類を受け取ってくれなくて時間が掛かってしまって。件数が増えた時とかは、あれじゃ困っちゃうなと思っていたんです」
「あの問題児達は、ニコちゃんにまで迷惑を掛けたのですか……。その時は、私を通信の鏡で呼んで下さい。直接話します」
「分かりました。あっ、そうだ。メモが凄く役に立ちました。凄い勢いで走って来ましたよ」
「そうでしたか。あれで良いようなら幾らでも書きますよ」
ミナモ様はやっぱり優しいと思う。ニコニコし合っていると、ヴァンちゃんが帰って来た。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい。ヴァンちゃん」
ミナモ様にお辞儀したヴァンちゃんが僕を見付ける。
「ニコより遅かった。残念」
「でも、ヴァンちゃんだって時間内に終わってるよ」
「うむ。頑張った。ミナモ様、ご確認をお願い致します」
「はい、ありがとうございます」
「ヴァンちゃん、個性的な人が多かった?」
「ああ。というか、個性的な人しか居なかったという方が正しい」
ぶほっと噴き出す音が聞こえた。ヴァンちゃんと振り返ると、ヒョウキ様が爆笑している。
「はははっ。まともな奴が少ないよな。でも、めちゃくちゃ頭が良い奴ばっかりだぜ」
確かに。全員、処理速度も頭の回転も速い。次々に指示を飛ばしたり、受けたりしているのに、手元の仕事もやっている。誰も顔を上げずに言葉が飛び交っていて、不思議な光景だった。
「ううっ……」
カハルちゃん、起きちゃった? 思わずヴァンちゃんと顔を見合わせる。
「カハル、うるさくしてごめんな。よーし、よしよし」
ヒョウキ様が抱っこに替えてあやし始めた。でも、カハルちゃんの顔が歪み始めた。あー、泣いちゃう。
「うう、うっ、うっ……」
「わぁっ! カハル、泣くなっ。なっ⁉」
「ただいまー」
まずいタイミングでシン様が帰って来た。
「……ヒョウキ? カハルに何をしたのかな?」
笑顔が怖すぎる。いっそ、分かりやすく怒った表情なら……。いや、それはそれで怖い。混乱した頭でグルグル考えていると、ヴァンちゃんがカハルちゃんの元へ走って行く。
「カハルちゃん、よしよし」
ヴァンちゃんがカハルちゃんの頭をナデナデすると、不思議そうな顔でヴァンちゃんを見上げる。更にぷにぷにの頬を優しく撫でると、嬉しそうに笑い始めた。流石、ヴァンちゃん、頼りになる。
「ん? 俺の手、気に入った?」
「あぶっ、あっ」
嬉しそうにカハルちゃんがヴァンちゃんの手を撫でる。モフモフなのが気に入ったらしい。
「ふふっ、可愛いねぇ。ありがとう、ヴァンちゃん」
「ん。カハルちゃんは笑顔が一番」
「そうだね。――それなのに、ヒョウキは泣かせるし役に立たないし」
「そんな事ないって。俺、ずっと魔力供給しているぞ。今回は、ちょっと――」
冷たい一瞥を投げられてヒョウキ様の言葉が止まる。僕があの目を向けられたら気絶しそうだ。これ以上、見ちゃいけないと本能が訴えてくるので、カハルちゃんに視線を固定する。はぁ、癒される……。
「シン様、ヒョウキ様には私から強く言っておきますので、お帰り下さい。今日は難しい仕事をお二人に頼んだので、大分疲れている筈です」
「ミナモ、ありがとう。ニコちゃん、ヴァンちゃん、ごめんね。疲れているのに長引かせて。帰ったら、直ぐにご飯の準備をするからね。その間にお風呂に入って疲れを癒してね」
「「ありがとうございます」」
「ほら、ヒョウキ。カハルを渡す」
渋々とカハルちゃんを渡すヒョウキ様。少し憐れだったので、飴をあげた。
「どうぞ」
「ニコ! お前はなんて良い奴なんだ!」
がばっと抱きしめてこようとするので、さっと避ける。僕はまだ気を許していません。
さて、荷物を取ってこよう。さっさと走り出す僕とヴァンちゃんの後ろで、「何故⁉」と聞こえたけど無視しておく。シン様を待たせる方が怖い。
レベルが違うだけで、個性的な人しか居ませんでした。
赤髪さんはトップレベルです。
ニコちゃん達は、きちんと誰に逆らってはいけないかを把握していますね。
次話は、ニコちゃん史上、最高のじゃがいもです。
お読み頂きありがとうございました。




