0074.行ってみよう、一件目
あっ、会計のプレート発見! やったー、無事に着いたよぉ。早速、担当の方に渡さねば。
「失礼致します。魔国から書類をお届けに上がりました」
「すみませーん。私の所へお願いします」
おっ、あのお姉さんですね。トコトコ部屋の中を進んでいくと、あちこちから二度見される。白族を見るのは初めてなのかな?
「ごめんなさいね。もうちょっとだけ、計算のキリがいい所まで……」
うんうん、分かります。最初からになったら、ムキーッてなっちゃうもんね。書類を取り出してから、じっと待つ。
「はぁ、終わった。お待たせしてしまって、ごめんなさいね。……あれ、居ない?」
「すみません。下を見て下さい」
「えっ、下⁉ わぁ、かわいいー。こんにちは」
「こんにちは。書類の確認とサインをお願いします」
「はーい。うわっ、最重要になってるぅ。ごめんね、今すぐ見ちゃうから、直ぐにまた、ミナモ様に戻して貰えるかな?」
「今日はお届けするだけとの指示になっているので、今、確認しますね。――ミナモ様、白族のニコです」
「―――はい、ニコちゃん、どうしましたか?」
「一件目の書類なのですが、確認し終わったら、ミナモ様に戻して欲しいと依頼されました。如何致しましょう?」
「次の国に行ってからで大丈夫ですよ。その様子だと、次の国も同じ事を頼まれると思います。纏めて持って来て下さい」
「了解致しました。それでは、失礼致します」
「はい、頑張って下さいね。また分からない事があったら聞いて下さい」
「はい、ありがとうございます」
「それでは」
ミナモ様との通信を終え、お姉さんに視線を戻すと拝まれた。
「ありがとう! この書類を自分で持って行かなくていいなんて! はぁ~、助かった……。寿命が縮む所だったわ」
何があるんだろう? お説教かなと首を傾げていると、後ろのお兄さんから声が掛かる。
「それ、期限忘れていたんだろう?」
お姉さんの肩が跳ね上がる。図星だったらしい。
「うぅ、紛れ込んでいたのよ。気付くのが遅れたのよぉ。反省してるわよぉ」
「だから、日頃から片付けろって言ってんのに。この、アホ」
「やめてよ~。こんな可愛い子の前でばらすなんてー」
ばらすも何も机を見れば丸分かりだ。片付けるのが苦手な人なんだなぁと見上げていると、手で顔を覆ってしまった。何とも憎めない人だ。
「おい、待たせているんだから、さっさとサインしろ。――悪いな。今度はちゃんと躾とくから」
お兄さん、ありがとうございます。僕もサイン下さいと思っていました。
「ひっどーい。私は子供じゃないわよ。はい、お待たせ」
「ありがとうございます」
受け取ると、新たな依頼の方にも、きっちり内容とサインが書かれている。
「確かにお預かり致しました。それでは、失礼致します」
「お疲れ様。あっ、道分かる?」
「はい、大丈夫です。それでは、また」
手を振ってくれる皆さんに、お辞儀してから手を振り返す。いい人達で良かった。さぁ、次の配達だ。
良かったね! 無事に辿り着けました。
立っている人の顔の位置あたりに目を向けているので、ニコちゃんが視界に入っていません。
一日一回は書類や資料の雪崩が起き、後ろの男性に毎日叱られています。
次話は、困った人が登場です。
お読み頂きありがとうございました。




