0073.魔法道
「ここが魔法道の入口になります。そちらを一般の方達が利用します」
並んでいる人達を横目に、もう一つの入口に向かう。
「あの、ミナモ様、入口の上の方に『ネクスヴィア』と書いてあるんですけど、どういう意味ですか?」
「ああ、あれは魔法道の正式名称です。今では、通称である魔法道と呼ばれる事が多いですね」
ほぉ、一つお勉強になりました。僕もずっと魔法道と言っていた。ヴァンちゃんも興味深そうに頷いている。
「ミナモ様、お疲れ様です」
「お疲れ様です。今日からこの子達が書類を運ぶ事になりました。色々と面倒を見てあげて下さいね」
「「よろしくお願いします」」
「はい、よろしくね。名前を教えて貰ってもいいかな?」
「はい、僕がニコです」
「俺はヴァンです」
「ニコちゃんとヴァンちゃんね。二人共、よく似ているなぁ。違いは……」
確かに白族って見分けにくいとよく言われる。でも、僕とヴァンちゃんだけなら簡単だ。
「ヴァンちゃんは、いつも頭に何か被ってます」
「おっ、そうなんだ。ありがとう。他の当番にも伝えておくよ。じゃあ、こっちに来てくれるかな。まずは何処に行くんだい?」
「俺は水の国です」
「僕は火の国です」
「了解。じゃあ、ヴァンちゃんからね。この白い石柱の間に立ってくれるかな」
ヴァンちゃんが石柱の間に立つと、緑色の光る線が石柱の間を縦横無尽に走る。光が消えると、石柱に嵌め込まれている透明な石が緑になった。
「承認されたから、もう進んでいいよ。その魔法陣の中心に立ってね。準備はいいかな?」
ヴァンちゃんがコックリと頷く。
「では、お気を付けて」
兵士さんが何かを操作している。台が高くて見えないなぁ。ヴァンちゃんに視線を戻すと魔法陣がカッと光り、手を振るヴァンちゃんが消えた。おぉ、次は僕の番ですね。
「次はニコちゃんね。そこに立ってくれるかい? ――はい、いいよ。次は魔法陣に進んでね」
僕も問題無く緑になって良かった……。恐る恐る魔法陣の中心に立つ。笑顔で手を振ってくれるミナモ様に見送られて、いざ火の国へ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
魔国で見たのと同じような光景が広がっている。
「はーい、こちらに進んで下さい」
兵士さんの誘導に従ってゲートを抜ける。
「腕章を確認させて下さいね。――はい、いいですよ。次は、あちらの受付に進んで下さいね」
「はい、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げ、次の場所に向かう。
「こんにちは。今日はどの様なご用件でしょうか?」
「魔国から書類をお届けに上がりました。会計の方にお取次ぎ願えますか?」
「はい、少々お待ち下さいね」
受付の人が通信の鏡で連絡してくれている。
「はい、会計です」
「魔国から書類が来ています。取りに来られそうですか?」
「すみません。今はちょっと手が離せなくて……」
「では、そちらに向かって貰いますね」
「お願いしまーす」
「お待たせ致しました。直接、担当の方のお部屋に向かって頂けますか?」
「はい。あの、初めて伺ったので、お部屋の場所を教えて頂けますか?」
「はい。地図をお渡ししたいのですが、城の内部構造が外部に漏れる恐れがある為、今から口頭で説明致しますね」
おぅ、いきなりの難関が。覚えられるかな?
「お願いします!」
「はははっ。そんなに気合を入れなくても大丈夫ですよ。分からなくなってしまったら、城の皆さんにどんどん聞いて下さい。じゃあ、説明しますね。まず、この通路を真っ直ぐに進んで下さい。次に――」
腕章と承認が無いと専用魔法道は使えません。
ニコちゃんが最初からピンチですね。覚えられるかな?
次話は、早速ミナモに通信の鏡で確認です。
お読み頂きありがとうございました。




