0070.初来店記念
「メイド長さん、ヒョウキ様達が好きなお菓子って何ですか?」
「そうですね……チョコレートでしょうか」
「ありがとうございます。お姉さん、お薦めのチョコレートを教えて下さい」
「あら、お姉さんですって。嬉しいこと言ってくれるわねぇ。お二方ともナッツ入りのチョコレートが好きだから、それにする?」
「はい、それでお願いします。――ヴァンちゃん、それ欲しいの?」
「欲しいというか、不思議な物がある。飲み物なのにビー玉があって飲めない」
んん? 本当だ。瓶の口の所にビー玉がある。どうやって飲むんだろう?
「気になる? ラムネって言うのよ。一本開けてあげましょうか? 私のおごりよ」
「えっ⁉ いいんですか?」
「初来店記念って事でね。じゃあ、開けるわよ」
突起がある道具を瓶の口に当てて、お姉さんがビー玉を押すと、ビー玉がカコンと落ちて泡がシュワーッと上がってくる。おぉ、溢れそうだ。でも、お姉さんは慌てる事無く泡が落ち着くまで待つ。そして、僕達にニッコリと笑って差し出してくれる。
「どうぞ、飲んでみて」
ヴァンちゃんがお礼を言って受け取り、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「パチパチしてる」
「うん。泡が出てるね」
ヴァンちゃんが恐る恐る口に運ぶ。
「おぉっ! シュワシュワしてる。ニコも飲む」
ごっくりと多めに飲んだら、喉に刺激が来た。何だ、これ! もう一口飲んで、ゆっくり飲みこむ。ふおー、シュワシュワ!
「面白いね、ヴァンちゃん。こんなの初めて飲むよね?」
「うむ。開け方も面白い」
「気に入ったかしら?」
僕達が大きく頷くと、お姉さんとメイド長さんが微笑ましそうに見ている。
「ニコ、もう一本買う?」
「あの紫色のラムネも気になるよね」
「あれは、この城限定のブルーベリー味のラムネなのよ」
「限定! 買います!」
「はい、これもお買い上げね。自分で開けてみる?」
「やります! あっ、ヴァンちゃんもやりたいよね」
「ニコ、やっていい。俺は、また買いに来た時にやらせて貰う」
「ヴァンちゃん、ありがとう!」
お姉さんから道具を借りて、瓶の口にグッと押し込む。うわっ、泡凄い! さっき見たように泡が落ち着くまで待ち、道具を返す。
「上手に出来たわね。いっぱい溢しちゃう人も多いのに、君は偉いわねぇ」
やった、褒められた。照れながら飲もうとして思い出す。お会計して貰わなきゃ。
「お姉さん、以上でお会計をお願いします」
「はーい、五百圓になります。――千圓のお預かりね。はい、五百圓のお釣りね」
大事にお金をポケットにしまい、お菓子を受け取ろうとしたら持ちきれない事に気付く。
「私がお菓子をお持ち致します。執務室まで一緒に戻りましょう」
「えっ、でも……」
「遠慮はいりません。それに、先程もご説明致しましたが、慣れていないと危険ですから。さぁ、参りましょう」
そう言って、メイド長さんはお菓子を持って歩き始めてしまう。お待ちを~。
「ヴァンちゃん、行こう。お姉さん、ありがとうございます」
「はーい、またいらっしゃい」
ヴァンちゃんと共に会釈して、メイド長さんを追いかける。おぉ、ラムネがこぼれそう。気を付けねば。
階段に辿り着くと、メイド長さんがラムネを持ってくれる事になった。お菓子を腕に抱えて、ピョンピョンと勢いをつけて登って行く。一緒に来てもらって本当に良かった。
ヴァンちゃん達は炭酸を飲むのが初めてなので大興奮です。
売店の品物は100圓のものがほとんどです。
仕事終わりに来たり、おやつの時間に来たりと、城の人達の楽しみです。
明日は、ヴァンちゃん目線のお話をUPする予定です。今後も「NICO&VAN」をよろしくお願い致します。
皆様に読んで頂ける事が書く力となっております。
お読みいただき、ありがとうございました。




