0065.大自然があります
今朝は嗅いだことの無い、いい匂いで目が覚めた。眠い目をこすりながら天井を見上げる。……そうだ、シン様のお家だった。
むくりと起き上がると、ヴァンちゃんとカハルちゃんが両隣でスヤスヤと眠っていた。
「ニコちゃん、おはよう。よく眠れた?」
「おはようございます。ぐっすりでしたよ」
「ふふっ、なら良かった。昨日は食べながら、こっくりし始めたから心配だったんだけど、疲れは取れたのかな?」
「はい、元気いっぱいです!」
「よろしい。今日もカハルをお願いね」
僕は大きく頷き布団を出る。手早く着替え、日課の訓練をしようと外に出ると、そこには大自然が広がっていた。森や山に太陽もある。動物さん達も多く生息しているようだ。呆気に取られる僕の隣に、目をこすりながらヴァンちゃんがやって来た。
「ニコ、ふぁあ……おはよう」
「おはようなんて言っている場合じゃないよ、ヴァンちゃん。これ見て! これっ」
「うーん? ふぁ……」
あくびを噛み殺したヴァンちゃんの視線が周りに向かい、停止した。そのまま微動だにしない。どうやら思考も停止したらしい。
「二人共、顔はそこの井戸の所で洗ってね。乾かす為の魔石も置いてあるからね。洗濯物は僕に頂戴。……どうしたの、二人共? 固まっているけど」
「あ、あの、森とか山とか、太陽とかがあるんです!」
「そうだね。川も洞窟も畑もあるし、我ながら良い出来だなと思うよ」
「シン様が作ったんですか⁉ ここ全部?」
「そうだよ。創造主の力も借りたけどね。カハルと穏やかに暮らすには、うってつけだよね」
何だか驚いている僕達の方が、おかしいような気分になるのはどうしてだろう? 徐々に起動し始めたヴァンちゃんを見ながら、僕は内心、頭を抱えた。
ランニングをしつつ、近場を探索したら本当に川があった。魚も泳いでいる。ここは、かなり広いようなので、休日に気合を入れて探検してみようと思う。
戻ると朝御飯が用意されていた。昨日、教えて貰った『囲炉裏』という周りに座って食べるようだ。
「お帰り。川は見付けられた?」
「見付けた。お魚もいた」
「ヴァンちゃん、今度釣って来てね。囲炉裏で塩焼きにしよう」
「ん。いっぱい取ってくる」
「よし、ご飯にしよう。そこに座って」
ヴァンちゃんがロボットのように……。
超人たちと暮らすには常識を捨てるんだ!
次話は、戸惑いの朝食です。
お読み頂きありがとうございました。




