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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0058.リセット

 僕は生まれた瞬間からの自分の人生をずっと見ていた。目の前を小さな自分が走り抜けていく。そして、笑顔で繋いだ小さな手。あの手の持ち主は誰だっけ? そんな疑問が頭をかすめ、直ぐに消えていく。そして、次々に場面は変わり、今の身体と同じ大きさまで成長した僕は、もう一つ大事な手を見付けた。


 沢山の宝物のような記憶。辛い事も色々とあったけど、いつも僕と同じ白い手を持つ子に支えて貰っていた。でも、誰だか思い出せない。段々と焦りが頭を(もた)げ始めた。いつも僕を心配してくれた言葉少なな子。誰よりも僕を分かってくれた子。僕の大事な家族のような存在。そして、その子と同じ位に大切な、大切な女の子。


 思い出せっ、思い出せ! 僕の大事な人達を、思い出せっ!


 脳裏に優しい声が響いた。


「ニコ」

「ニコちゃん」


 僕の意識は覚醒した。


「ヴァンちゃん! カハルちゃん!」

 

 眼に飛び込んできたのは雲一つない何処までも真っ青な空。遠くで鳥が囀っている。視界の端に見付けた白色に、暖かで長閑な空気を切り裂いて僕は飛び起きた。


「ニコ、お帰り」

 

 僕は無言でヴァンちゃんに抱き付き、ぐりぐりと頬擦りする。僕のしたいようにさせてくれながら、ヴァンちゃんは安堵したように息を大きく一つ吐いた。


 少し気持ちが落ち着いた僕は周りを見渡す。何も消失していない、いつもの村だった。視線を動かしていくと、村中の人が倒れていた。慌てて駆け寄ろうとした僕をヴァンちゃんが凄い力で抱き締める。


「んぎゅっ⁉」

「落ち着け。寝ているだけだ」

「本当⁉ 良かった……。ヴァンちゃんは大分前に起きたの?」


「ニコの少し前だな。村を見て回ろうと思ったんだが、倒れている皆を放っておけないから、他の人が起きるのを待っていた」


「そっか……。あのさ、ヴァンちゃんは『リセット』されたと思う?」

「うーん……俺はちゃんと記憶がある。『リセット』されると消えるのだろう?」


「そう聞いたよね。でも、世界が元通りになっているから、されたのかなと思って」


「……確かペルソナとの戦いに深く関わると、前の記憶が残ると聞いただろう? 俺達は鏡の魔物と戦っているから、もしかしたら……」


「あっ、そうだった。んー、他の人に聞かないと分からないね」


「そうだな。とりあえずニコが起きた事だし、周りの様子を確認してくる。何かあったら通信の鏡で連絡し合おう」


「うん、了解」

 

 僕はヴァンちゃんを見送ると、井戸や食料の倉庫などを確認していく。うん、特に問題なさそうだ。皆から目を離さずに確認できる範囲を見終わると、見張り台に登る。


 消失した筈の森も、ひび割れた空も、何もなかったかのように、いつも通りだ。夢だと言われたら信じてしまいそうだ。


「カハルちゃん、無事かな……」

 

 僕の呟きに答えるかの様に通信の鏡が光る。


「はい、白族のニコです」

「あぁ、無事か。怪我してないか?」


「ダーク様! 僕とヴァンちゃん以外はまだ眠っていますけど、全員無事です。あの、ダーク様、顔色が良くないですけど大丈夫ですか?」


「あぁ、消耗が激しいだけだ。明日には回復する。これから後始末に飛び回らねばならないから要件だけ伝える。カハルは生きている。詳しいことは時間が取れるようになったら教える。じゃあな」

 

 余程時間が無いのか早口で喋ると通信は切れた。でも、本当に僕が知りたい事は教えてくれた。トコトコとこちらに戻って来るヴァンちゃんに、僕は大きく手を振り叫んだ。


「カハルちゃんが生きてるよぉーーー!」


ちゃんと大事な人を思い出せましたね。

カハルが生きていました! 

良かったね、ニコちゃん、ヴァンちゃん。


次話は、ちょっと変わった新規依頼が舞い込みます。


お読み頂きありがとうございました。


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