0054.目覚め
夕食まで一緒にカハルちゃんと遊んで過ごした。一勝も出来ないとは、此は如何に?
そんな僕を慰めようとしているのか、目の前には大きなハンバーグが‼ デミグラスソースがいい匂いです。はぁー、と幸せに浸っていると扉がノックされる。
「はい、どうぞー」
「ニコ、見舞いに来たぞ」
「トウマ! お仕事大丈夫なの?」
「あんまり……。これから、ぎっしり予定が詰まっているから、その前に顔を見に来た。ヴァンも見て来たけど寝ていたから、俺が元気になった姿を見られるのは大分先だな」
「そっか……。わざわざ会いに来てくれてありがとう。いっぱいお仕事押し付けちゃってごめんね……」
「何、しみったれているんだ。俺なら問題なく出来るに決まっているだろう。俺を誰だと思っている?」
「はい、トウマ様です。すてきー、さいこうー」
「お前、棒読み過ぎだからな。まったく……。元気そうで安心した。俺、もう行くな。今度会う時までに、ちゃんと治しておけよ。じゃあな」
「うん、またね。気を付けて」
「ああ、またな」
トウマは急ぎ足で部屋を後にして行った。僕も早く治して、トウマの負担を減らさなきゃ。
気合を込めてハンバーグを食べる。コーンスープもおいしい。残ったソースをパンに付けて食べ終えた所で、精霊さんが部屋に来てくれた。
「お口に合いましたか?」
「はい、とーーーっても美味しかったです!」
「それは良かったです。では、今日はお風呂に入ってから寝ましょうか。お口の周りも大分汚れてしまっていますし」
白族あるあるですね。今、きっと凄い顔になっていますよね。ええ、よく分かります。別の精霊さんが必死に笑いを堪えているのも分かっていますよ。そりゃもう、痛いほど。ぐすん(泣)、早く綺麗にしてこようっと……。
見違えるほど真っ白になって戻って来ました! もう笑わせるものかと言っても、自分で洗った訳じゃないけど。今日も何から何まで精霊さんにお世話になりました。ありがとうございます。感謝の気持ちと共に就寝した。
翌日はヴァンちゃんが目覚めるかもしれないという事で、カハルちゃんと共に部屋に来ている。スヤスヤと眠るヴァンちゃんを見つつ、今日は静かに読書だ。半分を読み終わって、固まった体をグーッと伸ばしていると、布団が動いた様に見えた。
「…………?」
あっ、ヴァンちゃんの目が開いた!
「カハルちゃん、ヴァンちゃんが!」
「あっ、起きた! フォレスト呼んで来るね」
慌てて立ち上がったカハルちゃんが扉を開けると、ちょうどフォレスト様が廊下を歩いて来た。
「フォレスト、ヴァンちゃん起きたよ」
「お目覚めかい? じゃあ、診察しちゃおうか」
不思議そうにパチパチと瞬くヴァンちゃんの顔をフォレスト様が覗き込む。
「おはよう、ヴァンちゃん。ここは病院だよ。僕は君の担当医で名前はフォレスト。よろしくね」
「フォ……レスト……様?」
「そう、フォレスト。まだ眠いようなら、また後にしようか」
「だい……じょうぶ。少し……ぼーっと……する」
「うん。瘴気の影響が出ていたからね。君は三日間寝込んでいたよ。記憶はあるかな?」
「そう……だ。まも……の、どう……なった?」
「ヴァンちゃん、ちゃんと倒せたよ。ありがとね」
カハルちゃんが目に涙をいっぱい溜めて、ヴァンちゃんを撫でる。
「カ……ハル……ちゃん。無事で……よかっ……た。ニコは?」
「ヴァンちゃん、僕も大丈夫だよ」
「そ……うか。よ……かった……」
ヴァンちゃんが目を閉じてしまった。フォレスト様を見上げるとニコリと笑って頭を撫でてくれる。
「疲れて寝ちゃっただけだから大丈夫。二人は部屋に戻ってね。昼食の時間だよ」
「はい……」
心配だけど僕が付いていても仕方ないもんね。カハルちゃんに抱っこされて部屋に戻ると、難しい顔をしたダーク様が待っていた。
此は如何に・・・これはどうしたことか、っていう意味らしいです。
皆様、お気付きかもしれませんが、使ってみたかったんです!
ヴァンちゃんが目を覚ましましたね。まだ、休養が必要です。
次話は、ニコちゃんが大号泣です。
お読み頂きありがとうございました。




