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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第一章 鏡の魔物
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0051.治療費は如何ほど?

「朝食を食べちゃおうか。その間に、お熱を測らせてね」

 

 頷いていると、扉が開かれる。


「ニコちゃん、おはよう。ご飯中?」


「カハルちゃん! おはようございます。来てくれて嬉しいです。皆、帰ってしまって寂しかったんです」


「そうだよね、急に静かになっちゃったよね。じゃあ、今日は私と一緒に過ごさない? 本とリバーシとトランプを持って来たよ」


「おぉ、やります! あの、フォレスト様、カハルちゃんと遊んでいても大丈夫ですか?」


「うん、いいよ。カハルからは癒しの力が常に放出されているから、体がだいぶ楽になると思うよ」


「常になんですか?」


「うーん、そうらしいんだけど、自分じゃよく分からないんだよね。でも、疲れた時や体調が悪い時に、皆が私を抱っこしに来るから本当みたい」

 

 じーっとカハルちゃんを見ても何も見えない。体の線に沿って周りの空間を手で撫でてみても何も感じない。不思議だなぁ。


「外見だけじゃなく中身も可愛い子だよね。カハルが気に入ったのもよく分かるよ」


「でしょう! ほんっと可愛いんだよ。ヴァンちゃんも凄くいい子だよ。早く目が覚めないかな……。私の所為なんだけどね……」


「カハル、そんな風に言うのは良くないよ。カハルがヴァンちゃんの立場だったらどう思う? 最後まで一生懸命に戦って、そう言われたら」


「……嫌だと思う。自分で選んで戦いに臨んだし、こうなったのは自分の力不足で、誰かに非がある訳じゃないのにって……」

 

 カハルちゃんは本当にヴァンちゃんの性格や考えを良く分かっている。きっと、ヴァンちゃんは今と同じ事を口にしただろう。


「うん、そうだね。じゃあ、どう言えばいいのかも分かるね?」

「ヴァンちゃん、ありがとう、だよね?」

「うん、正解。よく出来ました」

 

 フォレスト様が満面の笑みで、カハルちゃんの頭を撫でる。


「フォレスト様は、カハルちゃんのお父さんみたいですね」

「ふふっ、嬉しいな。僕はね、カハルの第二のお父さんだから」

「第二ですか? あっ、そうか。シン様が第一のお父さんですもんね」

「おや、シンの事を聞いたのかい?」

「はい、ダーク様からカハルちゃんの正体を教えて貰ったのと一緒に」

「そうかぁ。――あっ、食べ終わったね。じゃあ、歯磨きしたらカハルと遊んでいいよ。精霊を呼ぼうか」

 

 精霊さん? 羽根があってパタパタ飛んでいる小さい子達だろうか? 昨日は見なかったなぁ。


「フォレスト様、お呼びですか?」

「うん、食事が終わったから後をお願い出来るかな」

「はい、畏まりました」

 

 昨日の女性が精霊さん? 確かに独特の雰囲気があるなぁとは思ったけど。


「ニコちゃん、どうかしたのかな?」

 

 僕の凝視に気付いたフォレスト様が首を傾げている。


「僕、大きい精霊さんを初めて見ました。小さい精霊さんだけではないのですね」


「そう、初めて見たんだ? 高位の精霊は人間と同じ姿をしていて、大人と同じ位の身長なんだよ。高位な精霊になるほど森の奥深くや聖域に居る事が多いから、そうそう会わないよね。僕は精霊王だから高位の精霊が数多く仕えてくれているんだよ」

 

 ほーっと頷きながら思い至る。そんな凄い人達に看護してもらって治療費は大丈夫なんだろうか……。心配になって来た。ええい、聞いちゃえ!


「あの、治療費は如何ほどでしょうか? あんまり高いと払えそうになくて……。分割でもいいですか?」

 

 全員が軽く目を瞠った後、笑いだす。


「大丈夫だよ、ニコちゃん。治療費はダークから受け取るから。それに、お金が払えない人は無料で今までも診ているからね。心配は要らないよ」

 

 無料⁉ なんて太っ腹! 運営は大丈夫なんだろうか……。僕もせめて何かを渡したい。うーん、何かあったかな? あっ、干し芋がある! この干し芋は流通が少なく味も絶品な為、『幻の干し芋』と呼ばれている。これなら少しはお返しになるかも。


「じゃあ、せめてもの感謝の気持ちに、この干し芋を食べて下さい。凄く美味しいですよ」


「それは、ニコちゃんの大事なおやつでしょう? 僕達の事は気にしなくてもいいから、自分でお食べ」

 

 優しい人達だなぁ。でも、せめて一枚は渡したい。そう思いながら、フォレスト様を見上げていると頭を撫でられた。


「でも、とっても美味しそうだから一枚だけ貰えるかな」

「はいっ! どうぞっ」

「ふふっ、ありがとう。大きいから三等分して食べるね。はい、どうぞ」

「フォレスト様、ありがとうございます。ニコちゃん、大事に頂きますね。ありがとうございます」

 

 精霊さんが優しい笑顔でお礼を言ってくれた。バンザーイ。


「はい、カハル」

「ありがとう。ニコちゃん、いただきまーす」

「はい、召し上がれ~」


「――美味しい! これ、凄く美味しいね! 今度、ニコちゃんの村に買いに行こうっと」


「是非! 僕が村の案内もしますね」

「本当⁉ やったー♪ 楽しみにしてるね」

 

 皆、笑顔で完食してくれたし、干し芋のお蔭でカハルちゃんと嬉しい約束を取り付けました! 早く元気になるぞー。

 

 カハルちゃんと仲良く遊びながら、その日を終えた。ヴァンちゃん、嬉しい約束を取り付けたよ。だから、早く起きてね……。

小さい精霊さんは姿を隠している事が多いです。

この世界では、高位の精霊は一生に一度会えたらラッキーと言われていますが、

うまく人間に紛れているので、知らずによく会っていたりします。

白族はお芋が主食で、干し芋もよく食べます。

村でほとんど消費されてしまうので、あまり流通していません。


次話は、お散歩に行きます。


お読み頂きありがとうございました。



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