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0359.宝石を探せー!

 朝食を食べるとポンポコさんと共に町へ出掛ける。僕達の他に護衛さんが二人、後ろを歩いている。


「まずは宝石店を覗くかのぉ」

「いらっしゃいませ」


 店員さんが扉を開けてくれる高級店に尻込みする僕らを置いて、ポンポコさんは躊躇いもなく入って行ってしまう。見て分かると思いますけど、ただの護衛です。宝石は勧めないで下さい……。


「ほら、おいで。綺麗だよ」


 ガラスケースを覗くと、様々な色の石がある。


「オパールってどれですか?」

「これ全部だ。ここは専門店だからね」


「えっ、そうなんですか⁉ 白を主体に水色と赤と緑とかが、ぐんにゃり混ざったような石だと思っていました」


 お店の人が笑いながら近付いて来る。


「この町は初めてでしょうか?」

「はい」


「ピンクやイエロー、赤、ブラック、緑や青がほぼを占めている物などございます。お客様のように思われている方も多いのですよ」


 おぉ、仲間が居たよ! 護衛さん達も「へぇ」と言っているから仲間で決定です。


「このブラックオパールは緑が濃くて綺麗だのぉ」

「ポンポコさん、まだ緑色の物を買うんですか?」


「儂にとって緑は幸運の色だからのぉ。少し店内を見て来るから待っていておくれ」


 目が届く範囲だからいいか。ヴァンちゃんを見ると、何かを熱心に見ている。


「何を見ているの?」


「ピンクオパールのネックレス。ヘッドがリボンの形になっていて可愛い。カハルちゃん、似合いそう」


「本当だね。はぁ……」


 二人同時に溜息を吐く。きっと「着けてみて下さい」って言ったら、恥ずかしそうに「どうかな?」って言って、シン様が「可愛い!」って抱き締めるんだろうな。


「欲しい物でもあったのかい?」

「いえ。ポンポコさんは買ったんですか?」


「ああ、指輪を一つ買った。そうそう、店主に面白い話を聞いてのぉ。町の外れに自分でオパールを探せる場所があるそうだ。行ってみんかね? ちょうど、儂らが向かう方向にあるらしい」


「面白そうですね。行きたいです」

「よし。では宿に戻って出発しよう」

「はい!」


 馬車に乗って西へ向かう。オパールの採掘に行くのか、男の人達が馬車に乗り込んで山へ向かって行く。僕達は海の国の方へ向かうので、途中で道が分かれる。


「山に行かずに探せるんですか?」

「観光客向けだと言っておったのぉ。ふらっと立ち寄れるらしい」

「へぇ、そうなんですか」


 暫く道なりに進んでいると、白い壁で囲まれた石積みの建物が見えて来る。


「あそこかのぉ。採掘体験できると書いてあるわ」


 黄色の板に黒字で書かれ、入口に立てられている。馬車を空き地に止めて建物に入る。護衛さんは三人だけ付いて行く事になったので、熱きじゃんけん大会をしている。皆、採掘体験に興味があるらしい。


「いらっしゃいませ」

「あれ? テラケル族ですか?」

「おや、私らの種族をご存じで? この国の方ですか?」

「いえ、違います。僕はドンさんと知り合いなんです」


「親分をご存じでしたか。私は宝石の加工をしているチョリと申します。こちらへどうぞ」


 チョリさんは黄色のヘルメットを被り、ドンさんからブチを失くして茶色くした感じだ。


 部屋の中は原石や宝石が飾られた一角と、研磨などの作業をする一角、テーブルセットと小さなキッチンがある。先に一人五百圓支払うが、ポンポコさんが全員分払ってくれた。お小遣いが少ない僕らにはとてもありがたい。支払いが済むと、ヘルメットとハンマーと小さなバケツのセットを貰う。


「では、地下に行きましょう」


 キッチンの左横にある白い扉を開けると、階段が下に続いていて、壁は剥き出しの赤茶の岩だ。光球が先にあるのか、地下の割に明るい。


「気を付けて下りてくださいね」


 下に着くと穴が幾つも掘られて奥に続いている。段々とテンションが上がって来ましたよ~。


「真ん中の穴に入ります。付いて来て下さいね」


 上は三メートル位まで掘られており、大人一人が余裕で通れる穴の広さだ。五分もせずに、大人が三人横に手を広げたくらいの空間に出る。


「この辺りに転がっている石の中にオパールが入っています。ハンマーで割ると中に入っているので、探してみて下さい」


 十センチ位の石が足元にゴロゴロと転がっているので、ハンマーを振り下ろす。真っ二つに割れたが、オパールは入っていない。次はこれにしようかな。――これも入っていない。宝石がそんな簡単に見付かる訳ないか。そう思っていたら護衛さんが声を上げる。


「あっ、これそうじゃないか⁉ オレンジ色してるぞ。チョリさん、これオパール?」


「はい、ファイアーオパールです。一センチ位ですかね」

「やったーーー!」


 簡単に見つかった……。僕だって見付けてやる! パコーン、パコーンと次々に割っていく。……無い。だが、諦めるものか!


「とりゃーっ!」


 十個以上割った時に、断面に透明感のある石を見付ける。はぁ~、大きいよ、これ!


「チョリさん、これオパールですか⁉」

「はい。これは二センチ位ですかね」


 勝ったと護衛さんを見ると悔しそうに石を連続で割り始める。ふっふっふ、やったよ、僕! だが、上には上が居る。


「ん? 密集してる」

「おや、大きいのがゴロゴロと四つも入っていますね」


 黙々と割っていたヴァンちゃんが一番でした。僕が見付けたのと同じ大きさの石が大量です……。


「――おっ、また密集」


 お隣失礼します。ヴァンちゃんは運が良いようなので、側でやってみよう。


「小さいのまたあった」


 おかしいな……。僕は横でやっているのに、さっぱりだ。


「儂は小さいのしか見付からんかったから、ヴァンが一番だのぉ。皆、そろそろ十時だから戻ろうか」


 うぅ、悔しい。護衛さんと一緒にトボトボと戻る。欲が強過ぎたのが駄目だったのかな?


 上に戻るとチョリさんが宝石を取り出して研磨し、小さなガラスのボトルに入れてくれる。僕は大きいのが一個と、小さいのが二個だ。


「ヴァンちゃんはいっぱいだね」

「うむ。宝石ジャラジャラ」

「ニコに儂の分もあげよう。小さいのが五つあるからのぉ」

「おぉ、僕もジャラジャラ! えへへ、やったー。ありがとうございます」


 チョリさんにお別れを言い、浮かれながら外に出ると、通信の鏡が光る。


「はい、ニコです」

「モモです。お掃除が終わったから、いつでも出発していいよ」


「わぁ、ありがとうございます! あ、モモ様、見て下さい。僕、宝石を採掘したんですよ。ほら!」


「ファイアーオパールだね。ふふふ、いっぱい採れたね。鉱山に行ったの?」

「いえ、観光客用の場所があって、テラケル族の方がやっているんですよ」


「え、本当? やっぱり私がお掃除に行けば良かった……。その町の地下にはテラケル族が多く住んでいて、宝石の加工や装飾品を作っているのだよ」


 モフモフ好きなモモ様には堪らない町なんだな。国内だけど時間が掛かるから、宰相様は中々来られないのだろう。


 ポンポコさんが後ろから鏡に頭を下げる。


「モモ様、ありがとうございました。これで安全に旅が出来ます」


「うん。私が知る限りでは海の国に賊は出ないみたいだけど、十分に気を付けてね」


「はい。また後日お礼に伺います」

「じゃあ海の国でお土産を買って来てね」

「畏まりました」

「ニコちゃん、ヴァンちゃん、またね」


 手を振って通信を切ったら出発だ。今日も仕事を頑張ろう。



 山の中の街道を南西に進んで行く。海の国に入っても内陸なので、海は見えないらしい。あ~あ~、打ち寄せる波を眺めたかったな。


 休憩を入れつつ進み、お昼は宿で作って貰ったサンドイッチを食べる。鶏肉を蒸した物とレタスが入っていて、マヨネーズで味付けされている。僕達以外の人は辛い物も平気なので、カラシが入っているそうだ。


 賊も全く出ないので快適な旅だ。今日はヴァンちゃんがポンポコさんと一緒の馬車なので、僕は呑気に青い空を眺めている。


 カハルちゃんは今何をしているのかな? 遺跡に魔力充填をしている所だろうか。五ヶ所も巨大魔石を魔力でいっぱいにするなんて、気が遠くなりそうだ。ペルソナさんから貰った魔力は、まだたっぷりあるのだろうか?


「今日の目的地が見えて来たぞ」


 御者の人に言われて前を見ると、リプソン湖が眼下に見えて来る。湖面の波がキラキラとして、変化の無い景色で飽きていた目を喜ばせてくれる。


 ウーリー町が湖を囲むようにあり、ここもパクテパの町と同様にオパールの採掘をしているらしい。


「さて、モモ様への土産を買うかのぉ」


 宿に着いて御者台から降りると、ポンポコさんが柔軟体操をしながら声を発する。あ~、後ろに反ったら危ないですよ! それに丸々としたお腹が強調されてしまう。人ごととは思えず自分のお腹を隠していると、隊長さんがポンポコさんを指さす。


「隠すなら、あっちの腹だろう」

「隊長さん、しーっ!」

「ほぉ、儂の腹に何か文句でもあるのかのぉ、隊長?」

「いえ、何も。ここで大人しく待っていますので、いってらっしゃいませ」

「ふんっ、お前もいつか腹が出る時がくるかもしれぬぞ」

「あり得ませんね。暗くなる前に帰って来て下さいよ」


 ポンポコさんは悔しそうに睨むと、ヴァンちゃんを手招いて歩いて行く。


「ニコ、来る」

「はーい」


 宿の斜め向かいの店に向かって行く。何のお店かと思ったら、宝石屋さんだった。長い旅だから食べ物は悪くなっちゃうもんね。


「いらっしゃいませ」


 この店は他の宝石や安価な物も置いてあり、庶民でも入りやすい店だ。


「モモ様はあまり高い物は受け取ってくれんでのぉ。二人も良さそうな物を探しておくれ」


「海の国のお土産じゃないんですか? ここはまだ桃の国ですよね?」


「二つ渡そうと思ってのぉ。海の国の土産は儂が選び、桃の国では二人が選んだと言った方が喜ぶはずだ」


 確かに僕達が何かあげると、いつも凄く喜ぶんだよね。ポンポコさんは、モモ様と僕達が仲良しなのを知って思い付いたのだろう。


「どれがいいかな?」

「ピアスにする」


 ヴァンちゃんが即決だ。二センチ位の涙型のピンクオパールが付いた銀のピアスを指さす。


「ではこれにするかのぉ。すまんが、プレゼント用に包んでおくれ」

「畏まりました」


 ポンポコさんも即決だよ。お値段を見ると、意外とお安く一万圓しない。これならモモ様も遠慮なく受け取れる事だろう。


「――お待たせ致しました」

「ありがとう。二人共、帰ろう」


 宿に戻って夕食を取り、各自のんびりと過ごして寝た。


 朝は少し早起きして湖を眺めに行く。釣り竿を垂らしている人が居るので、魚が居るのだろう。小さな石で埋め尽くされている湖岸を歩き、水を覗き込む。


「おっ、あっちで水がはねた」

「近くには居ないね」

「二人共、はぁ、はぁ、足が速いのぉ」


 ポンポコさんは歩きにくかった所為か息切れしている。息が整うまで湖面を眺めているか。


採掘というか割っただけな感じですが、ニコちゃん達が手に入れたオパールは安価なものです。でも、磨けばピカピカの宝石ですから、お金持ち気分です。


次話は、目的地に到着です。


お読み頂きありがとうございました。

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