0032.去る者
「そうか、ご苦労。さて、今後について話すから座れ」
急いで座った僕達を見渡したダーク様が話し始める。
「今回の封印は多分、三週間は持つと思う。その間に、奴を完膚なきまでに叩き潰す策を練る。お前達にも協力して貰うぞ」
「ですが、今まで一度も倒せなかった相手ですよね。戦力が落ちている状態では封印を続ける事しか出来ないのではないですか?」
ヴァンちゃんが、国宝の魔法剣も駄目にしてしまったしと続けながら首を傾げる。
「そうだな。いつもなら奴以外の相手もしながら戦わなければならなかった。だが、今回は確実に一人だ。そして、ここに居る全員に強い殺意をもっている。そこに勝機がある」
皆が顔を引き攣らせる中、冷静にヴァンちゃんが頷く。
「特に俺ですね」
「そうだ。それと、ニコも確実に顔を覚えられている筈だ」
あんな粘っこいのに目を付けられるなんて最悪だ。もう、こうなったら全力で向かうしかない。
「やります! あんな奴とは絶対に縁を切ります!」
「よし、良く言った。他の者達は後方支援で構わない。だが、降りたい奴は責めたりしないから、今すぐ言ってくれ。どうだ?」
ここに居る仲間達は、魔力が高いという基準で選ばれている。封印の作業には向いているが、戦闘経験は殆どない。
鏡が活発化したのを受けて、僕とヴァンちゃんが急遽加わったのは、そんな仲間達の護衛の為だ。正直な所、全員降りると言われても驚かない。
「あ、あの、僕は降ります。もう足を引っ張りたくないですし……」
結界を出てしまった子が、おずおずと手を挙げている。
「そうか。お前には大分怖い思いをさせて、すまなかった。ミルンにはこちらから、きちんと説明するから心配しなくていい。それと、怖がらせてしまった分、報酬に上乗せしておく。こんな事しか出来なくてすまないが、許して欲しい」
「い、いえ。こちらこそお役に立てなくて申し訳なく……すみません」
「気にしなくていい。他にも降りたい者はいるか? 遠慮なく言ってくれ」
結局、三人が村に戻る事になった。寂しいけど無理強いは出来ないもんね。
ダーク様のお話はこんな感じだった。
一つ目、僕とヴァンちゃんに、魔物にダメージを与えられる武器を支給する。二つ目、仲間達による魔法粉の攻撃支援。三つ目、ダーク様の能力で相手の魔力を吸収し、カハルちゃんに渡す。
何と、現在進行形で魔力を吸収しているそうだ。ダーク様の血で描いた魔法陣だから出来るらしい。本当に抜け目がない方だ。
魔力を吸収する度に血が使われ、完全に消えてしまうのが、先程言っていた三週間という期限らしい。
人数が減って、ちょっと寂しいですね。
三人となっていますが、獣族も人で数えます。
匹と言うと、少し失礼な感じになります。
次話は、ダークがニコちゃんに、あんな事を! します。
お読み頂きありがとうございました。




