表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
306/390

0305.ドラちゃんは友達

「この小さいドラゴンはお前達の子か?」

「は、はい、そうです。ほら、ドラ、離しなさい」


 ラーハムさんが口をこじ開けようとすると、ようやく口を離す。


「痛くありませんでしたか?」


「ああ、甘噛みのような感じだったぞ。こいつなりに気遣ってくれたんだろう。なぁ?」


「クワー」


 ダーク様が撫でようとすると、サッと避けてクマちゃんを抱き締める体勢に戻ってしまった。


「嫌われたか?」

「大丈夫ですよ。あの子は人懐っこい子ですから」

「そうか。で、お前の息子の名前は何というんだ?」

「ドラです」

「ドラ? それが名前だったのか。クマのようだな。カハルが付けたのか?」

「ううん、くまちんが付けたんだよ。ね!」


 カハルちゃんの嬉しそうな「ね!」に答える事なく、クマちゃんは両手で顔を覆って意気消沈している。


「ふーん。やはり、長く一緒に居ると思考が似通ってくるのだな」


 ダーク様が感慨深げに頷いていると、ガーーーン! という効果音が聞こえて来そうな顔でクマちゃんが顔を上げる。そんなに口を開けたら顎が外れちゃいますよ?


「ん? そんな顔をしてどうした。クマは自分の名前が大好きなのだろう?」

「キュ⁉ キュ、キュー……」


 ダーク様相手では言い返せないのか、「ムキュキュキュ……」と唸りながらカハルちゃんを睨んでいる。


「えへへ、くまちん、照れなくてもいいのに。さぁ、ダークに言っちゃって! 大好きキューって」


「キュッホーーーッ! にゃんちん、覚悟でキューーーッ!」


 叫んだクマちゃんが駆け出そうとすると、ドラちゃんが行かせまいと、すんでの所で足首を掴み、ビターンとクマちゃんが座布団に顔から突っ込む。


「ブキュッ⁉」

「わーっ⁉ くまちん!」


 カハルちゃんが慌てて抱き起こすと、「プキュー……」と言ってぐったりしてしまう。


「ドラ、優しく扱ってあげないと駄目でしょ。ドラゴンと違って、他の種族はとても脆いのよ」


 エイブリンさんに注意されてしょんぼりとしたドラちゃんが、そっと頬擦りしている。


「キュ、キュ~、大丈夫キュよ、ドラちゃん。これから気を付けてくれればいいのキュ。キュ~、くすぐったいのキュ」


 ホッとしたようにドラちゃんがクマちゃんのお腹を鼻でつついている。


「ごめんなさいね、クマちゃん。まだ、上手く力加減が出来なくて……」


「エイブリンさん、大丈夫キュ。ドラちゃんならすぐに出来るようになるのキュ」


「ふふふ、ありがとう。あなたがドラの主様になってくれて良かったわ」


「主様でキュか? クマとドラちゃんは友達なのキュ。これから大親友になるのキュ。楽しみなのキュ」


 パチパチと瞬いたエイブリンさんが泣きそうな顔で笑う。きっと、ご両親にとってこんな嬉しい言葉はないのだろう。


「……ええ、ドラと大親友になってあげてね。主従ではなく隣に立つ存在として……」


「勿論でキュ。エイブリンさんとラーハムさんの所にもちょくちょく行かせて貰うのキュ」


「ええ、いつでも訪ねて来てね。クマちゃんとドラの好きなお菓子を用意して待っているわ」


 わーい! とクマちゃんとドラちゃんがバンザイしている姿を、ラーハムさんが寂し気な微笑みを浮かべて見ていたが、振り切るように目を逸らして口を開く。


「……エイブリン、そろそろお暇しようか」


「……ええ、そうね。寂しいけれど会えなくなる訳ではないものね。ドラ、体を大事にして元気に過ごすのよ」


「クワー!」


 ドラちゃんは心配を掛けまいとしているのか、元気よく鳴いている。お二人で交互に撫でると、僕達に向かって深々と頭を下げてくれる。


「私達を救って下さって本当にありがとうございました。こんなに心が晴れ晴れしているのは初めてかもしれません……。気持ちが溢れて上手く言葉に出来ないのですが……本当にありがとうございます」


「私達がお力になれる事があればいつでも呼んで下さい。これから、ドラをどうぞよろしくお願いします」


 もう一度深々と頭を下げてくれたご夫妻に、僕達も心を込めて頭を下げ返す。泣くのを必死に堪えるエイブリンさんの肩をラーハムさんが抱いて帰って行く姿を見て、こんな良い家族が幸せになれて良かったとしみじみ思った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「カハル、お弁当だよ」

「ありがとう、お父さん」

「これがニコちゃんとヴァンちゃんの分ね」

「わーい、ありがとうございます」

「シン様、ありがとう」


 リュックに水筒と共に詰めていると、フォレストさんがやって来た。あれ、まだ約束の時間までは大分ある筈じゃ?


「カハル、ごめんね。さっき見張りをしてくれていた精霊から報告があって、大精霊の森の魔物が復活しそうなんだって」


「うん、分かった。すぐに行こう」


 準備は整っていたので、シン様に見送られてすぐに出発した。


ダークは正直に名前に対する感想を言っただけですが、クマちゃんには大ダメージです。あんな適当に言った名前が承認されるなんて聞いてないキュ! という感じです。

ドラちゃんが力加減が出来るようになるまで、日々、クマちゃんの変な悲鳴が続く模様です。ヴァンちゃんが密かに、どんな悲鳴だったか日記に書いていそうですね。


次話は、頑張って森の中を進みます。


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ