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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0299.新たな長老

「お、お待ち下さい。不勉強だったのは認めます。ですが、簡単に退任など――」

「代わりなんて幾らでもいるでしょ。なんならラーハムがやったっていいんだし。ねぇ?」


 シン様の言葉にラーハムさんが真っ青な顔で首を横に振っている。心の準備が必要ですよね~。


「それにドラゴンマスターも誕生したしね。くまちん、おいで」

「モキュ。クマがドラゴンマスターらしいのキュ。よろしくでキュ」

「はぁ、熊⁉ 創造主様、どういう事ですか!」


「どういう事もないよ。目の前に現実があるだけでしょ。ラーハムさんの子供に名付けもしたよ。ね、ドラちゃん」


「クワー」


 ドラちゃんが大きくなって、その姿を見せつける。ここまで見せられたら信じるしかあるまい!


「そんな馬鹿な事があってたまるものか! そんなちっぽけな熊に従えと? 我らは生物の頂点に立っているのです!」


「取り巻きも使い物にならないみたいだね。ぎゃーぎゃー煩いよ、君」


 シン様が右耳に指を入れて顔を顰めてみせる。でも、僕も同意見だ。生物の頂点? 上も下もある訳ないじゃんか。みんな同じように『世界』に魂を貰って、カハルちゃんの魔力の恩恵を受けて生きている仲間なのだ。


「クマちゃんを馬鹿にするな。人を平気で嘲る奴は人にも嘲られているんだ」


 ヴァンちゃんが言い返すと、グッと言葉に詰まって悔しそうに睨んで来る。よーし、今こそ僕の怖い顔を――。


「うん、ニコちゃん、止めておこうね。シリアスな空気が笑いに変わっちゃうから、僕が睨んであげる」


 気付いたシン様に速攻で止められた。無念だが、シン様の殺人光線並みの睨みで震え上がっているので良しとしておこう。


「くまちん、ドラゴンさんの長老になる?」

「そんな大役は無理なのキュ。自分の仕事だけで手一杯でキュ」

「そっか。フェイ、誰か良い人居る?」


「そうですね……。無口な奴ですが一人心当たりがあります。水竜で名前をコウキと言います。多くの者に慕われているので反対意見は少ないかと思います」


「じゃあ、コウキを呼んで来てくれる?」

「はい、畏まりました」


 だんだんと血の気が引いていく長老さんや、不安そうに互いを見合っている取り巻きさんを無視して、話がドンドン進んでいく。これは、もう退任決定だな。


「わ、私は承諾しておりませんぞ!」


「あなたの承諾なんて必要としていないよ。これは決定なの。この地に住む私の大事な人達を傷つけた罪は重いよ。命が奪われないだけいいじゃない。あなた達は禁忌だとか言って、想い合う人達を引き裂いたでしょう。ねぇ、名前も付けずに追い出したドラゴンが生き延びられる確率ってどれくらいだと思う?」


 その言葉で毛が逆立っていき、思わずカハルちゃんの服を握る。


「どういう事ですか? 名前が無いとどうなるんですか?」


「ドラゴンは他の種族と少し違っていてね、自分の名前を使って『世界』と契約するの。そうする事で私と『世界』の両方から必要とする膨大な魔力を得る事が出来る。だから、名前はとても大事なの。名前が無い間は、自分が作り出している魔力と食べ物で命をある程度繋ぐ事は出来る。でも、さっき言ったように、スタードラゴンは常に時に干渉して魔力を大量消費しているの。魔力が完全に枯渇してしまうと……自分の命を魔力の代わりに使いだす」


 ぞっとしてドラちゃんを見る。スタードラゴンが短命だったりするのは命を捧げているから……。制御出来るようになれば希望があるのかもしれないけど、人型になれない子が多い事からも、至極難しいのだというのが察せられる。


 さっきのドラちゃんみたいに、よちよち歩きしか出来ないままで両親が先に亡くなったら死に直結する。それに気付いた途端、僕は長老に向かって走り出していた。一発殴ってやらなければ気が済まない!


「――はい、ストップ。裁くのはカハルや他のドラゴン達に任せようね」


 僕がシン様に掴まっている横で、ヴァンちゃんはセイさんに掴まってジタバタしている。気が合うね、ヴァンちゃん!


「二人共、落ち着こうね。ドラゴンて固いから手で殴ると痛いよ」


 殴るなとは言わないんだ。思わずヴァンちゃんと一緒にニヤッとしてしまう。


「こら、カハル、煽るような事を言わないの。ほら、武器を仕舞う」


 ちぇー、怒られた。しょうがないのでトンファーを元に戻す。


「――お待たせ致しました。コウキ、あの方が創造主様だ」

「遅くなり申し訳ありません。話を聞いて激怒した者達を抑えるのに手間取りました」


 紺の髪と目を持つ武闘派な感じのドラゴンさんだ。一見冷たそうだけど、セイさんと同じ匂いがする。絶対、側に寄って行ったら構ってくれそうだ。


「気にしないでいいよ。抑えられたという事は、あなたが上に立つ器を持っているって事でしょう。長老の話は受けて貰えるのかな?」


「私でいいのでしょうか? ドラゴンマスターが誕生したと聞いたのですが」

「断られちゃったからね。それとも、あなたが推薦したい人が居るの?」

「私はフェイにやって貰えたらと思っています」

「断る。私はあくまでもカハル様の守護龍だ。今の仕事だけで十分だ」

「……そうか、残念だが仕方あるまい。――では、私が謹んでお受けいたします」


 カハルちゃんの前に片膝を付いて頭を下げる恰好が決まっている。カッコイイ長老の誕生だ。


「この者達の処分は如何致しましょうか?」

「煮るなり焼くなり好きにしていいよ。ラーハムさん、殴っとく?」

「……いいえ。彼等と同レベルにはなりたくありません」


「そう。じゃあ、ドラゴンの法に従って裁いていいよ。あー、でも、この人達が作った法なら従っちゃ駄目だよ。昔の法でもいいし、新たにコウキ達で考えてもいいよ。そこら辺はお任せするね」


 カハルちゃんがあっさりと丸投げしている。創造主様はその変に深入りしないようだ。


クマちゃんには長老をお断りされてしまいましたが、大勢のドラゴンの前に立つクマちゃんを想像してみましょう……。

「みんな、おはようキュ。今日も頑張っていこうでキュ~!」と拳を天に突き上げるクマちゃん。

「お、おぉー?」とぎくしゃく拳を突き上げるドラゴン達。

みたいな感じですかね。……やっぱり、コウキにお任せしましょう。みんな戸惑っちゃいますからね(笑)。


次話は、時の魔法です。


この後、外伝集に『卵(カハル編)』をUPします。以前、活動報告で書いたものですが、ご覧にならない方も居るかなと思い載せてみました。まだの方は読んでみて下さいね。本編の卵三部作の後日談となります。


お読み頂きありがとうございました。

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