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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0298.怖い顔

「私も……私も行くわ。こんな小さな息子が守ろうとしてくれているのに、震えて怯えているだけなんて、もう嫌よ。私達は何も悪い事をしていないわ。堂々と生きる権利が私達にもある筈だわ」


「そう、だな。嘆く日々は終わりにしよう!」


「では、私達も行きましょう。あの頑固なお爺さんに前から一言いってやりたかったんです」


「俺も行こう」


 次々と上がる声にクマちゃんも決意した様に顔を上げる。


「クマも行くのキュ。誰かに押し付けられた訳じゃないキュ。クマはクマの気持ちに従って行くのキュ。頑固爺ちゃんにガツンと言ってやらなきゃ気が済まないのキュ!」


 その言葉にカハルちゃんが微笑む。


「気持ちは決まったみたいだね。じゃあ、皆で行こうか」


「ふふふ、そうだね。あいつ、カハルや僕の大事な人達の悪口をよく言っていて、前から気に入らないなぁと思っていたんだよ。そろそろ、あいつの取り巻きじゃない若い人に変わってもいい頃だと思うんだよねぇ」


 シン様が真っ黒い笑顔だ。でも、カハルちゃんの悪口を言う奴なら当然の対応だ。僕も怖い顔にしておかないと。むんっ!


「ニコ、変な顔」


「えっ、酷いよ、ヴァンちゃん! 僕はいま怖い顔をしているの。ドラゴンさんに舐められないようにしているんだよ」


「にらめっこの時の顔にしか見えない」


 ガーン……。指で目を吊り上げてみる。


「どう、ヴァンちゃん? 怖い?」

「う~ん、変顔?」


 ガーン……。何をしても無駄という事ですか?


「いつもの顔でいいよ。僕らが笑っちゃって怖い顔が出来なくなっちゃうから」


 シン様がクスクス笑いながら抱き上げてくれる。他の人達、そんなに深く頷かないで下さい。心にダメージが……。


「……はーい。怖い顔はシン様達にお任せします」

「うん、任せて。とびっきり怖い顔をしてあげるよ」


 えっ⁉ それは僕達も怯える事になりそうだけど……。


「私も頑張る!」

「クマもでキュ!」

「いや、二人も止めておけ。迫力が皆無だ」


 セイさんに反対されて二人が頬を膨らませている。うん、怖さゼロ。可愛いです。


「フェイ、長老はどこに居るの? いつもの場所?」

「はい、シン様。取り巻きと一緒に窪地に集まっております」



 黄の国に近い場所なのか黄褐色の岩だ。直径が五十メートルはありそうな広い円形で、深さ三メートル位の窪地に二十人くらいの人が集まっている。中央が一段高くなっている岩に偉そうな人が座り、その周りを他の人達が片膝を立てたり、胡坐をかいたりと、思い思いの恰好で座りながら囲んでいる。


 僕達の足音に気付いて次々と周りの人達が立ち上がるが、偉そうな人はどっしりと座ったままだ。短く刈り込んだ白髪で鼻の下と顎に髭があり、白いローブを着ている。全身白ずくめだけれど、中身も白く綺麗だとは到底思えない、狡猾で残忍な目をしている。


「これは何の集まりですかな?」

「うん? 抗議団体かな。随分と好き勝手やっているみたいじゃない。そろそろ引退したら? こんなに反感を買うなんて耄碌してきた証拠でしょ」


 シン様が早速、強烈な言葉を叩き付けている。あ~、味方で良かった……。僕なら速攻で泣いてしまいます。


 ざわつく取り巻きさん達に手を翳して黙らせると、長老さんが立ち上がる。


「その者達とはどこでお知り合いに? あなた様や創造主様がお付き合いされるのに相応しくない者達です。こちらで罰しますのでお引渡し下さい」


 その言葉にムカッとしたのは僕だけではないようだ。前方に立っているシン様、セイさん、カハルちゃんから震え上がるような殺気が一瞬放たれる。あ~、心臓麻痺が起きそう……。怖いよぉ~(泣)、とヴァンちゃんと抱き合う。


「それを決めるのはあなたじゃないよ。彼らはこの世界の大事な住人なの。私が創り出した世界を否定するの?」


「い、いえ、そのような事は。ただ、その者達は禁忌を犯して――」


「いつ、私や『世界』が禁忌だと言ったの? 本当に禁忌だったら、そもそも生まれないよ。属性の違うドラゴンの間に子供が産まれる事は奇跡なの。認識が大分間違っているみたいだけど、本当に大丈夫なの? お父さんが言うように引退した方がいいんじゃない?」


 カハルちゃんも今日は容赦なくいくな。大分、お怒りのようだ。長老さんは悔しそうに唇を噛んでいるので、今度は取り巻きさん達が抗議してくる。


「では、なぜ彼らは成長しなかったり人型になれないのですか? 奇跡に相応しいなら、我らの上をいくのが当然でしょう?」


「あなた達も何を見ているの? 奇跡なら十分に起きているでしょ。時を操る能力がスタードラゴンには備わっているの。無意識に時に干渉しているから、成長が遅かったり、魔力を常に大量消費している。魔力が無い訳じゃなくて、日々使い果たしているの。そして、人型についてだけれど、なるには一度力を解放しなければならないでしょう。でもね、力が強大過ぎて人型に押し込める前に暴走してしまう。だから、完璧に制御出来るまでは人型になれない体のつくりになっているの」


 スタードラゴンって凄いんだ~と僕やヴァンちゃんは呑気に聞いているけど、ドラゴンさん達は初めて聞く事だったのか、驚愕で口が開いたままだ。


「昔はこんな事はどのドラゴンも知っていたよ。だから、スタードラゴンとそのご両親はとても大切にされていた。だけど、今は何? 禁忌? 追い出した? 長老という立場に居ながら知らないなんて呆れて物も言えないよ。その所為で、周りも碌な教育をされていない。責任を取って今すぐ退任してくれる?」


 凄い! シン様の出る幕がない。カハルちゃんがここまでキツイ事を言うのは初めてかもしれない。よっぽど腹に据えかねているのだろう。


ニコちゃんは怖い顔をしようとすればするほど変顔になります。得意なシンにお任せしましょう!

カハルが今回はいっぱい喋っています。冷静さは失っていませんが、かなり怒っています。

シンは怖い顔を作りながら、うちの娘がかっこいいと内心で喜んでいます。


次話は、新たな長老候補が登場です。


今日は新作『クマ戦隊 ゴッキュマン』をこの後に投稿します。舞台は『NICO&VAN』と同じイザルトです。五人の熊がマネージャーさんやスタッフさんと共に馬車で旅しながら、ヒーローショーをしたり、困っている人を助けたりなどします。ご興味がある方は是非読んでみて下さいね。


お読み頂きありがとうございました。


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