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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0297.ドラゴンマスター

「坊や、一体何が起きたんだい?」

「グワ? グワー」


 自分でもよく分からないらしく、首を傾げた後に体を見回している。その様子を冷静に観察しつつ考え込んでいたカハルちゃんが、「まさかねぇ」と言いながらクマちゃんを見て目を見開く。


「あっ! やっぱり、くまちんがドラゴンマスターになってる!」

「キュ? クマはドラゴンさんじゃないのキュよ」


 クマちゃんが不思議そうに自分の手などを確認しているが、僕から見ても特に変化は見当たらない。カハルちゃんには分かると言う事は、魔力に変化があるのかもしれない。


「そうなんだけどね、名前が付けられたでしょ。それってドラゴンマスターの証なんだよ。それに魂が赤い輝きに変わってる。力が目覚めたんだよ」


 ざわっとなったドラゴンさん達がクマちゃんを囲む。


「この子がドラゴンマスター⁉ では、他の子も名前を得られる可能性が出たという事か?」


「ラーハム、きっとそうですよ! 名前を得られれば、この子のように良い変化が訪れるかもしれない!」


 興奮して頭上で話すドラゴンさんに、クマちゃんは怯えたように体を小さくして視線を向けている。それを見て眉をひそめたフェイさんが、ラーハムさんの肩を掴む。


「落ち着け。クマちゃんが困っているだろう」

「あっ、済まない! 辛い状況に光が見えたものだから、つい……。創造主様は何故このような事が起きたかお分かりですか?」


 普段は普通の女の子で、僕達と楽しそうに遊んでくれたりするから意識していないけど、ラーハムさんが恐る恐る尋ねる姿を見ていると、カハルちゃんて物凄く偉い人なんだなぁと実感する。


「多分、私の能力の一部がくまちんに譲渡されたんじゃないかな。私がドラゴンマスターだった時と同じ魂の状態になっているから」


「譲渡ですか? 何故、そのような事が……」


「うーん、詳しくは言えないんだけど、今世は色々とイレギュラーが起こっていてね。これも、そのうちの一つだと思うよ」


 日本に生まれてしまった事と関係があるという事かな? 戸惑うクマちゃんをカハルちゃんが抱えあげる。


「くまちん、その能力は嫌?」

「キュ? 他には何が出来るのキュ?」


「長老と同じだけの権限があって、ドラゴンたちにお願いを聞いて貰えるよ。反発する相手を強制的に従えさせる事も出来る。中には馬鹿にしたり、認めないっていうドラゴンも居るからね」


 ドラゴンからしたら他種族なんて格下の吹けば飛ぶような相手という事か。しかも、クマちゃんは庶民で小さな熊さんだから、余計馬鹿にされてしまいそうだ。


「クマちゃん、危ない?」


「大丈夫だよ、ヴァンちゃん。ドラゴンマスターに手出しは出来ないように縛りがあるから。逆らおうと思えば出来るけどね」


 クマちゃんが抱えてくれているカハルちゃんの手を見ながら考えている。あんな強大な相手には怖さを覚えて当然だ。しかも、嫌なドラゴンさんも居るみたいだし。


「キュー……。クマは命令とか従えたいとかいう思いは無いのキュ。でも、スタードラゴンさん達を救えるかもしれないのキュ。さっき、皆がそう言っていたのキュ」


 期待に満ちた目でドラゴンさん達がクマちゃんを見ている。でも、僕の中に疑問が生まれる。


「それは、本当にクマちゃんがしたい事ですか? 断り難くて無理していませんか?」


 僕の言葉にドラゴンさん達が、頬を張られた様な顔をする。一方的にただ期待して相手を潰すような事はあってはならないと思う。優しいクマちゃんは自分を殺して必死に想いに応えようとしてしまう所があるから……。意地悪な事を言っているとは思うけど、僕は僕でクマちゃんを守りたいのだ。


「そうだよ、クマちゃん。全部を背負う事はないんだよ。これはドラゴン達が自らで解決すべき問題でしょ。長老達が変わらないなら、この状況を何とかしたいドラゴンが集まって、引きずりおろす事も考えるべきだよ」


 シン様の手厳しい言葉にドラゴンさん達が俯く。嘆いているだけじゃ何も変わらない。分かってはいるけれど、恐くて一歩が踏み出せない。ジレンマを抱いているのは分かるけど、それをクマちゃんに押し付けるのは許さない。


「くまちん、どうしたい? 私に能力を戻す事も出来るよ。ただ、それをすると……二度とこちらの世界には来られなくなるかもしれない。その能力がこちらの世界に来るためのキーになっている可能性が高いの」


「……にゃんちん、クマは……」


 考えが纏まらないクマちゃんが芝生へ下ろして貰い、困ったように頭を抱えてウロウロとしている。そこへ、元の小さい姿に戻ったドラちゃんが近付いて頬擦りする。


「キュワッ⁉」


 またもや転んだクマちゃんにドラちゃんが抱き付く。


「ギュ⁉ つ、潰れるキュ……」

「クワー!」


 元気に鳴いたドラちゃんは羽根でクマちゃんを包んだまま、カハルちゃんの前にやって来る。クマちゃん、大丈夫かな? 大分ぐったりしてるけど……。


「ん? ドラちゃん、どうしたの?」


 そのまま二人でお互いの目を見たまま時々頷き合っている。この様子だと頭の中で会話しているのかな? 痺れを切らしたラーハムさんが話し掛けようとした所で、カハルちゃんが目線を上げてクマちゃんを見る。


「ドラちゃんはドラゴンマスターとか関係なく、くまちんが好きなんだって。温かい心が感じられる、白いフワフワなくまちんの為に働きたい。ずーっと側に居たいんだって。それと、名前をありがとう、嬉しいって言ってるよ」


 ドラちゃんに抱き締められたまま、驚いた顔で聞いているクマちゃんに伝え終わると、今度はラーハム夫妻に向き合う。


「『なかなか成長しない僕を諦めずに大事に育ててくれてありがとう。長老には僕が文句を言いに行ってくるから、お父さん達は苦しまないでいいんだよ。クマちゃんのお蔭で僕は飛ぶことも働く事も出来る。まだ人型にはなれないけど、いつか必ずなってみせるから。だから、僕はお家を出てクマちゃんと行くね。僕、守られるだけじゃなくて、今度は守れるドラゴンになってみせるから、見守っていてね』、だって。この子はくまちんの守護龍になる事を選んだよ」


 目に涙をいっぱい溜めて聞いていたエイブリンさんが泣き崩れ、ラーハムさんも涙を流しながら支える。


クマちゃんはドラゴンマスターでした~。イザルト史上、最弱のドラマスの誕生です。いつもはカハルがドラマスしてました。クマちゃんが転がされ潰され、ぐったりです。ドラちゃんを持ち上げるぐらいムキムキで大きくなりたいクマちゃんなのでした。


次話は、ニコちゃんが怖い顔に挑戦です。


お読み頂きありがとうございました。

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