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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0295.ドラゴンさんと顔合わせ

 今日はクマちゃんのお店がお休みなので、お手伝いをしてくれるドラゴンさんと顔合わせをする事になっている。楽しみなのか、朝食を食べ終わると落ち着きなく部屋を歩き回ったり、座ったりを繰り返している。


「おはようございます。準備はよろしいですか?」

「モキュ。フェイしゃん、お願いしまキュ!」

「では、参りましょう」


 クマちゃんをフェイさんが抱っこして、僕達はいつものようにシン様にひっつく。


 着くと森の中だった。あれ? インフェテラじゃないの? フェイさんを見上げると、僕の疑問が分かったのか教えてくれる。


「最初にご紹介する子は大森林で暮らしているのです。こちらです」


 フェイさんに付いて行くと、膜のような物を通り抜けた感触がする。白銀の森で感じたのと同じ感触なので、結界があったのだろう。静かで緑濃い森の中を暫く進むと、木が伐採されて開けた空間に出た。そこには大きなウッドデッキがあるログハウスが建っている。


「ラーハム、居るか? フェイだ」

「――今、行く」


 出て来たのはフェイさんと同じく、とても背の高い男性だった。暗めの赤い髪で何となくフェイさんの雰囲気と似た感じがする。


「どうぞ、入ってくれ。神様、創造主様――」

「畏まらずに普通でいいよ。ね、お父さん」

「うん。堅苦しいのは無しだよ」


 苦笑したラーハムさんが扉を大きく開けてくれる。シン様達に続いて僕もペコリとお辞儀する。


「お邪魔します」

「ん? 君は白族の子かな?」

「はい、そうです。僕はニコです」

「俺はヴァンです」

「よろしくね。息子も喜ぶよ」


 息子? 部屋に入って行くと、ベビーベッドの後ろに立っている、水色の長い髪の女性が待っていた。


「ようこそお越し下さいました。私は妻のエイブリンです。この子はまだ名前が決まっていないのですが……」


 ベッドを覗き込むと、つぶらなアメジストの目とかち合う。


「えっと、こんにちは、ドラゴンさん」

「クワー」


 小さな翼をバタバタさせながら、よちよち歩いて僕に近付いて来る黒いドラゴンさん。まだ、生まれて間もないのかな?


「この子はスタードラゴンと呼ばれる珍しいドラゴンなのですよ」


 フェイさんが小さなドラゴンさんを仰向けにすると、お腹の中心に紅葉の葉くらいの大きさをした銀色の星がある。随分と大人しくされるがままになっているけど、フェイさんと仲良しなのかな?


「おぉ、スターあった」


 ベッドを覗き込んでヴァンちゃんが嬉しそうに声を上げる姿に、ご両親が微笑んでいる。


「スタードラゴンと言うのは属性の違うドラゴンの間に生まれるドラゴンです。その出生率は非常に低く、高い魔力を持つ幻のドラゴンと言われています。ただ、問題もあります。非常に体が弱かったり、人型になれなかったり、子供の姿のまま成長が止まってしまったりする子が多いです。中には魔力が殆ど無い子も居ます」


 フェイさんの説明にご両親が悲しそうに俯く。もしかして、どれか当てはまっているのだろうか?


「この子は非常に成長が遅くて、未だに人型になれません。ずっと、赤ちゃんのままです」


 仰向けになったまま、ジタバタと手を動かして楽しそうにしている小さなドラゴンさんの頭を、エイブリンさんがそっと撫でながら教えてくれる。


「そうなんだ。ねぇ、フェイ、この子は移動の魔法が使えるの?」


「はい、シン様。魔力が非常に高い子なので使えます。ただ、翼で飛ぶ事は出来ません」


「見せて貰ってもいいかな?」

「はい。坊や、あの椅子まで飛んでくれるかい?」

「クワー」


 ラーハムさんのお願いに一声鳴くと、離れた椅子の上にその姿が現れる。どうだ! という様に翼をバタバタさせる姿が可愛い。


「次はベッドに戻ってくれるかな?」


 シン様がお願いすると、首をコテッと傾げてから素直にベッドに移動する。


「正確に移動できるみたいだね。それに、ちゃんと僕達の言葉を理解出来ているね」


「はい、知能に問題はありません。クマちゃん、この子とお話してみませんか?」


 ご両親も「どうぞ」と頷いてくれたので、セイさんに大人しく抱っこされていたクマちゃんが目を輝かす。


「側に行ってもいいのキュ? じゃあ、失礼しちゃうのキュ。ドラゴンさん、こんにちはキュ」


「クワー。クワ、クワー?」

「乗っていいのキュ? ――よいしょでキュ。重くないでキュか?」


 シッポまで入れるとクマちゃんの二倍以上はあるだろうか? その背に跨ったクマちゃんが何処に掴まればいいのか迷っている内に、ドラゴンさんが動き出す。動きがドタバタしているので、すぐにクマちゃんがバランスを崩す。


「キュホォ⁉」


 変な悲鳴を上げたクマちゃんが後ろ向きに背中をコロコロと転がり、お布団へボテッと仰向けに落ちる。


「クワッ⁉」


 悲鳴に振り返ったドラゴンさんが慌てて近寄り、服を銜えて起こしてあげている。


「び、びっくりしたキュ……。ありがとキュ、大丈夫キュ」


 ごめんねと言うようにドラゴンさんが頬擦りすると、クマちゃんが勢いに負けてまた転ぶ。


「ブキュッ」

「クワーッ⁉」


 クマちゃんの変な叫びに皆が笑いを堪える。先程と同じ状況になるのを察したラーハムさんが、先にクマちゃんを助け起こしている。


初めてドラゴン以外に出会ったので大興奮です。嬉しさを伝えるつもりが、クマちゃんは小さくて軽いのでコロンコロン転がってしまいます。幾ら小さいドラゴンでもクマちゃんより大きくて力強いですからね。力加減はまだ難しそうです。ふかふかお布団の上なので怪我はせずに済んでいます。頑張れ、兄貴~。


次話は、ドラゴンの名前についてです。


お読み頂きありがとうございました。


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