表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
294/390

0293.嵌った

 噴水広場を抜け、住宅街へと向かう大きな道を進む。そして、あまり歩くことなく、『レネット』というお店に辿り着く。


 ダーク様が丸いドアノッカーを鳴らすと、若い男の人が出て来た。


「――いらっしゃいませ。あれ、ダーク様? え、子供?」

「邪魔するぞ」


 カハルちゃんを抱っこしたダーク様にびっくりしつつも、扉を大きく開いてくれる。その足元をトコトコ歩いていると前から声を掛けられる。


「いらっしゃいウチャ」


 ウ、ウサギさんが喋ったー! しかも、色が凄い。ショッキングピンクだ。完全に見付けられる気満々だ。生物としてこれはいいのか⁉


「ニコ、落ち着く。口からみんな出てる」

「にゃ⁉ にゃんですとーーー!」


 全員、苦しそうに笑っているけど、ウサギさんは怒っていないのだろうか?


「ウチャチャチャ! 正直者ウチャ。気に入ったウチャ。座るウチャ」


 三十センチくらいのウサギさんが、爆笑した後にマシンガントークで椅子を勧めてくれたので、大人しく座る。


「君、凄いね。ヴィーが誰かを気に入るなんて滅多に無いんだよ」

「そうなんですか? あの、怒っていないんですか?」


「ウチャは正直者が好きウチャ。買いに来てくれたウチャ? それともオーダーメイドにするウチャか?」


「え、えっと……」

「俺の宝飾品を直して欲しい」


 な~に~⁉ という感じで険しい顔のヴィーちゃんが振り向く。


「すぐに見せるウチャ! まったく、けしからんウチャ!」

「悪かった。報酬に色を付けるから許せ」

「お金はありがたく頂くウチャ。でも、大事に扱わない人には鉄拳ウチャ」

「待って、ウサギさん。魔物に攻撃されて壊れちゃったの。許してあげて?」

「そうなのウチャ? ダーク様、そういう事は早く言うウチャ。理由があるなら怒らないウチャ」


 下ろして貰ったカハルちゃんを見たヴィーちゃんが、手を取ってじっと見ている。


「きっと、あれが似合うウチャ!」


 ダーク様そっちのけで、まっしぐらに棚に向かって行く姿に苦笑したお兄さんが、代わりに宝石を丁寧に受け取っている。


 ヴィーちゃんは、ふっくらめのウサギさんなので、あちこちにつかえている。生物としてという言葉が出掛かるのをゴクッと飲み込む。肉食獣に狙われる生活じゃないからいいんだ! 僕は可愛いと思うので問題なし!


「これ嵌めてみてウチャ。お嬢ちゃんには、この赤い石の指輪がとっても似合う筈ウチャ」


 どうしよう? と見上げられたダーク様が膝を付いて指輪を受け取る。


「金と赤で可愛いのではないか? ヴィー、これはどの指だ?」

「中指がピッタリだと思うウチャ」

「俺が嵌めてやろう」


 ダーク様がそっと右手の中指に嵌めてあげている。ちょっと力を入れたらポッキリいきそうな細い指なので、物凄く慎重だ。


「――よし。うん、ピッタリだな」

「そうウチャ。ウチャの目は確かウチャ」


 しばらく、じーっと見惚れていたカハルちゃんが見せに来てくれた。


「見て見て、綺麗な宝石だよ。私、初めて指輪したよ」

「え、初めてなんですか?」

「うん。お店に行ったことが数える程しかないし、剣を握る時に当たるでしょ。だから、買った事がないんだよ」


 カハルちゃんにとって当たり前の事実に胸が痛む。ずっと戦いに身を置いていて休息もほとんど無かったのだろう。


「剣ウチャ? じゃあ、鎖もあげるウチャ。そしたら邪魔にならないと思うウチャよ」


「え? 指輪をくれるの?」


「お安いやつだから気にしないウチャ。君達にもあげるウチャ。どうしても気になるなら、ダーク様にお金を請求するウチャ」


 またもや、つかえながらゴソゴソと探している。お尻がプリティー。


「いいのかな、ダーク?」

「貰っておけ。よく似合っているぞ。それに、宝飾品なら俺がいくらでも買ってやる」


 はにかみながらカハルちゃんが頷いている。本当はとても気に入ったのだろう。


「あったウチャ! ――ふぬぬぬっ、抜けないウチャ! ヘルプ!」


 とうとう棚と重たそうな工具箱の間に嵌ってしまったようだ。ヴァンちゃんと一緒に手を引っ張る。やはり、原因はあのプリティーなお尻か!


「あ~あ~、そんな狭い所に入るから。二人共、ちょっといいかな? コツがあってね」


 場所を譲ると、代わりにお兄さんが手を引っ張りながら声を掛ける。


「はいっ! お腹を凹ませてお尻に力を入れる!」

「フンッ!」


 力を入れた途端、スポーンと抜けたので、「おぉー」とパチパチ拍手する。


「ありがとウチャ。お騒がせしたウチャ。あーっ! 嵌ったのに気を取られて置いてきちゃったウチャ! ぐぬぬ、もう一回ウチャ~」


「また嵌るよ。僕が取るから、どれか教えて」


 取って貰ったヴィーちゃんが、銀色の物を手に走ってくる。


「こっちが、えーと、名前聞いていなかったウチャ」

「遅くなってすみません。僕はニコです」

「俺はヴァンです」

「じゃあ、僕も自己紹介ね。僕はここの店主をしているギンです。よろしくね」


 手を差し出してくれたので握手すると感激された。


「わぁ、フワフワだね~。君は何ていう種族なの?」

「白族です」

「うーん……。ヴィー、知ってる?」


「当たり前ウチャ。有名なエリート集団ウチャよ。獣族で白族を知らない人なんて居ないウチャ」


「そんなに有名なの? ごめんね、僕は世間の事に疎くて」

「本当ウチャ。ダーク様ぐらい、強かに生きて欲しいウチャ」


 何だかヴィーちゃんの方がお兄さんみたいだ。悪い奴が来たら、後ろ足キックで追い出していそうだな。


新たなモフモフは、生物として大丈夫なのか⁉ とニコちゃんに心配されるウサギさんでした。

丸々としてますが、ショッキングピンクなので食欲を誘いません(笑)。

ウチャならいける! と思っていますが、いけません(笑)。しょっちゅう狭い所に入って嵌っています。


次話は、意外とよく見ているヒョウキです。


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ