表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
291/390

0290.微妙な憧れ

「他の子にも何かあげた方がいいのかな?」

「う~ん……。キリがないのでいいと思いますよ」

「その通りです。今日のお料理や魔法で十分ですよ」


 ミルンさんが安心させるように微笑む。


「そう? ――あ、トウマ君が戻って来た」


 きっちり全員捕まえてお仕置きしたトウマが駆け寄って来る。


「すみません、お待たせしました」

「気にしないで。怪我していない?」

「はい。俺も他の奴らも大丈夫です」

「そっか。どれにするか決まった?」


「その前に質問があるんです。あの飛ぶ馬って、背中に乗れるんですか?」

「風で出来ている体だから乗れないんだよ」

「あー、そうなんですか。うーん……じゃあ、火の鳥にします」

「うん。ちょっと待ってね」


 魔法を込める為なのか、空っぽの弾を握り、じっと拳を見つめている。


「――出来たよ。他のと区別がつくように、金色にしてみたよ」


「ありがとうございます。さっきの鳥って、俺のお願いも聞いてくれるんですか?」


「トウマ君の魔力量だと厳しいかな。撃ち出すと、敵の中で一番強い奴に自動で向かって行くよ。それと、この弾は一回しか使えないからね」


「分かりました。貰えたのは凄く嬉しいですけど、そこまで強い奴が出て来ないのを祈ります」


 皆で「そりゃそうだ」と笑い合う。これは、お宝として扱うのがちょうどいいよね。


 残り少なくなっていた料理を平らげて、そろそろお開きの時間だ。


「今日はありがとうね。可愛い子達に囲まれて幸せだったよ。ね、カハル?」

「うんっ、大満足だよ! 干し芋もありがとう」


「そこまで喜んで頂けたのなら、嬉しい限りです。しかも、こんなに美味しい物まで食べられて、私も幸せです」


 ミルンさんと挨拶していると、小さい子達がワラワラと寄って来る。


「えー、もう帰っちゃうの? 泊まっていきなよー」

「そうだよ。もっとお話したいよ」

「ヴァン兄ちゃん達、帰っちゃ駄目だよ」


 腕を巻き付けて、「逃すものか!」と見つめてくるので困ってしまう。


「困らせては駄目ですよ。また来てくれますからね」

「でも、でもぉ~」


 ヴァンちゃんの手をギュッと握った子が涙目だ。うぅ、罪悪感が……。


「俺と同じように強くなりたいと言っていた。あれは嘘?」

「そ、それは嘘じゃないよ!」

「こういう時に気持ちよく送り出せる子が、俺は強いと思う」


 うっ、となった子が手を離すが、ヴァンちゃんの手を見つめたまま動けない。


「良く頑張った。俺もお前も村の子。ちゃんと、また会える」


 俯いている頭をヴァンちゃんが撫でると、「うん」と小さく頷き、ギュッと強く抱き付いてから走って行く。その姿を見た他の子達もだんだんと離れて行く。


「僕、課題を頑張るね!」

「ヴァンちゃんより強くなるんだもんね」

「僕だって負けないもん!」

「うむ、頑張れ」


 ヴァンちゃんの励ましに満面の笑みを浮かべて走って行く。良い光景だと思うと同時に少し寂しい。誰か僕にも憧れてくれないかな……。落ち込んでいると、小さな手が僕の手を握る。


「僕、ニコちゃんぐらい頬をパンパンに出来るようになるね! またね」


 駆けて行く背中を呆然と見つめていると、あちこちで皆が噴き出したり、残念そうな目で見てくる。な、何故だ……よりにもよって、頬をパンパン……。


「――こほんっ。えっと、帰ろうか」


 傷心の僕は無言でシン様の足に抱き付く。いつか、僕だって……皆の頼れる兄貴に……。ぐすっ、想像が付かないよぉ~(泣)。


「ニコちゃん、元気出して。私は愛嬌のあるニコちゃんが好きだよ」

「俺も。ニコらしさを失っちゃいけない」


 感激して二人を見つめる。なんて優しいんだ! このままの僕でいいんですね? そうなんですね! わーい、わーい!


 浮かれながらお家に帰り、その日は気分が良いまま眠りに就いた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 海の社は、切り立った崖のゴツゴツとした岩肌を下りた所にあるらしい。ここからじゃ見えないけど洞窟があるそうだ。身を乗り出して下を覗くと、結構な高さがあり、落ちたら海に浮かぶ岩で止めを刺されそうだ。


 さて、下りるかと鉤縄を取り出していると、カハルちゃんに止められる。


「私がエレベーターを作るよ」

「えべれたー?」


「ふふっ、ヴァンちゃん、エレベーターだよ。箱が上下に動いて運んでくれるんだよ」


「ほぉー」


 見守っていると、どこまで続いているか分からない縦穴を岩に開け、土の魔法で縦長の四角い箱を穴の上に作り出す。浮いているのかな? と僅かな隙間を覗いていると、扉を作ったカハルちゃんが僕達を手招く。


「乗って乗って」


 中は空洞になっていて、僕達全員が乗ってもまだ余裕がある。扉を閉めると、カハルちゃんが『海の社』と書かれているボタンを押した後に、三角が下を向ているボタンを押す。


「では、これより海の社に参りまーす」

「「はーい」」


 外が見えないけど下に動いて行くのを感じる事は出来る。う~ん? どういう仕組み?


「その光るボタンで動くんですか?」

「ううん。ただの演出」

「へ? 演出?」

「到着でーす」


 ポカーンとしている間に到着してしまった。カハルちゃんに続いて降りると、どうやら洞窟の中のようだ。暗いけど全然見えない程ではないかな。入口が近いのか、海の匂いと風が頬を撫でていき、湿度が高めでちょっと不快だ。聖域は快適だといいなぁ。


ヴァンちゃんは、小さい子達の目標です。

ニコちゃんは、ちょっと残念な憧れを抱かれていましたね。愕然としますが、すぐに復活です。

誰か、この立ち直りのはやさを見習ってくれたらいいですね。……無理かな。超速ですもんね。

ボタンは押せば光る凝りようですが、ただの演出です(笑)。


次話は、海の社で魔力を流します。


お読み頂きありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ