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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0288.最先端の生き物

「今まで通り、カハルちゃんと呼びますね。僕は今の関係の方が好きです」

「俺も」

「そっかー。あー、良かった……」


 安堵する姿に皆で笑う。シン様がカハルちゃんを膝に乗せながら、昔はね、と話し出す。


「血を混ぜた染料で染めて糸を編むとか、あんな面倒臭い事をしていなかったんだよ。両親がお互いの魔力をリボンに定着させて木に結ぶだけだったんだけど、あまりにも失敗が続いてね。魔法を使えない子供の人数が半数を超えたり、種族の最大数に達していないのに産まれないとかね」


「そうだったよね。細かい魔力調整が出来ない人が多いから、リボンに魔力を定着させられないんだよ。そうすると、『世界』が魂を降ろせない。降ろせたとしても、リボンの魔力を目印に魔力が集まるようになっているから、赤子に与えられる魔力が微量になる。それで、確実に魔力を持った子を産み出す為に、今の血を使う形に落ち着いたんだよね」


「血には必ず魔力が含まれているという事ですか? 魔法を使えなくても?」

「そうだよ。この地に魔力が無い生物は居ないよ」


 はぁ、世界の仕組みを一つ知ってしまった。カハルちゃんが話すのを躊躇う気持ちがよく分かる。


「あの、質問いいですか?」

「いいよ、トウマ君」

「親は子供の可能性を考えて一色は選んで、もう一色は無属性の象徴である紫を編みこむかを選べるじゃないですか。後で取得するって、そんなに難しいんですか?」


 説明が難しいらしく、カハルちゃんが束の間、宙を見つめて考えている。


「うーんとね……。一種類の属性しか持たない子ってね、体の半分がわざと空けてある状態なの。だから、望めばイザルトに満ちている魔力から好きな属性を選んで取り込める。でも、コントロールする力とか感じる力が弱ければ、自分の意志で取り込めないんだよ。いま目の前にある魔力がどんな属性かすら分からないんだから。そうこうしている内に、体には空きを埋めたい欲求があるから、同じ属性の魔力が引かれ合う事を利用して、外にある魔力を吸収し始める」


 ああ、成程、期限があるのか。まごまごしていたら空きは埋まっちゃうんだ。


「要するに、魔法の才能がある魂じゃないと厳しいって事ですか?」


「うん。そうじゃない魂も、六歳くらいまでに感じる力とかを育てられれば可能性はあるけどね」


「ほとんど絶望的じゃないですか。そんな幼い頃から魔法をガンガン練習している奴なんて見た事ありませんよ。むしろ六歳から始める奴ばっかりですよ」


 トウマの言葉にカハルちゃんが苦笑している。ちょうど六歳が学校に行き始める年齢だもんね。それに、学校では基本的な事しか教えてくれないみたいだし。


「こうやって聞いていると、いま生きている人達って魔法を全然活かせていませんよね。宝の持ち腐れ状態ですよ」


「だから、野生のデラボニアが必要なんだよ。言い方は悪いけど、より優れた生物を作り出す為に『世界』が実験しているんだよ。そして、良かったら採用して魂を改造する」


 シン様が不快そうに言う。どうやら僕達の為に怒ってくれているらしい。


「シン様、俺とニコは気にしていない。この時代で皆に会えたから嬉しい。ちゃんと幸せ」


「ヴァンちゃん……。もう、本当に良い子達だね」


 カハルちゃんが膝から下りて、僕達の背を優しく押してくれる。近寄ると、シン様が僕達二人をぎゅーっとしてくれた。


「すみません、俺が変な質問をしたばかりに……」

「気にしなくて大丈夫だよ。ヴァンちゃんの言葉を信じてあげて」

「はい、創造主様」


 抱擁を解かれた僕は、トウマの肩をバシバシ叩く。


「なに落ち込んでいるのさ。僕は今、時代の最先端の生き物なんだよ。僕が採用されちゃうかもしれないんだよ?」


「それは無いわぁ。こんな能天気な奴が溢れたら世界が終わるって」

「酷いよ、トウマ! 明るく素敵な人生が送れるに決まっているじゃない!」

「え~……。無いわぁ」


 おにょれ、トウマめ! と頬を引っ張り合っていると、ヴァンちゃんがやって来てバンザイのポーズをする。


「じゃあ、俺塗れの世界にようこそ?」


 ヴァンちゃん塗れ……。頬をパンパンにしたり、熱い物に挑んだり、天然を発揮したり、まったり沢庵とお茶を楽しんだり……。


「いや、ヴァンも無いわ。一斉にボケても突っ込む奴がいないとかカオスだろ。しかも、普段あんまり喋らないからシーンとしっぱなしで、口を開けば天然だろ。無い!」


「あっ、良い事を思い付いたよ! 僕とヴァンちゃんが半々ならいいんじゃない?」


「うん? それなら……。いや、駄目だ! 天然二倍じゃねぇか!」


 ちっ、良い案だと思ったのに。ヴァンちゃんとトウマの背中を指でツンツンしてやる。


「ちょ、やめろっ! 本気で怒られたいのか?」

「ふーんだ」

「べー」


 さっとカハルちゃんの背に隠れる。どうだ、手出し出来まい!


「くそっ、ずるいぞ! ミルンさんも何か言ってやって下さいよ」


「ふふふ、仲良く遊んでいるのを邪魔したりしませんよ。久々に会ったのですから、存分に楽しんで下さいね」


 トウマが「天然しか居ないのか⁉」と頭を抱えている。


「トウマ君、武器の調子はどう? 弾は足りてる?」

「え? あっ、はい」

「今日のお礼に珍しい弾を一つあげるね。どの魔法がいいか選んでね」

「え? はぁ」

「ミルンさん、余興をするので場所を開けて貰う事は出来ますか?」

「はい。では、井戸がある方に寄って貰いましょうかね」


 手分けして誘導していく。小さい子が飛び出さないように、大人ががっちりと抱き締めたら準備完了だ。


ニコちゃんだけの世界……。物凄くドタバタしてそうです。あっちで転び、こっちで転びしてそうです。

ヴァンちゃんだけだと、終始まったりしている気がします。

全部、トウマに却下されました。しょうがない、諦めてやるか(笑)。

カハルはトウマの反応にお構いなく、サクサク進めてますね。トウマが疑問符だらけです。


次話は、ど派手な余興です。


お読み頂きありがとうございました。

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