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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0285.カハルちゃんのファン

 村の広場では敷物が敷かれて、折りたたみ式の机が並べられている。先に何品か料理が並んでおり、その中にはシン様がお土産に持って来てくれたメロンもある。そこへ小さな子達が群がり、おばちゃんに追い払われている。それでも懲りずにつまみ食いしようとするとは怖い物知らずだ。そろそろ本気の雷が落ちそうなので、カハルちゃんを離れた所に誘導する。


「シン様達は、こちらのお席へどうぞ。飲み物は何にされますかな?」


 村長がドタバタを自分の体で遮りつつ席を勧める。


「うーん、どうしようかな。その白いのは何かな?」

「ヨーグルトドリンクです。こちらはブドウで、これはリンゴですな」

「じゃあ、ヨーグルトを貰えるかな。カハルはどうする?」

「ブドウがいいな」


 僕とヴァンちゃんが注いで渡していると、村の入口の方で「お帰り」という声が幾つも聞こえる。


「あ、トウマだ! 僕、連れて来ますね」


 走って行くとトウマがすぐに気付いてくれる。


「ニコ、帰って来ていたのか。ヴァンは?」

「あっちに居るよ。トウマ、来て来て」

「そんなに引っ張るな。ミルンさんに報告したら、すぐ行くよ」

「絶対だよ」


 念押しをして戻って来ると、訓練場に通っている年齢の子達が、カハルちゃん達を囲んでいる。あ~、僕の席が無いよ~。


「ニコちゃん、僕の膝においで」


 シン様、優しい! お言葉に甘えて座っていると、周りの皆が驚いた顔で僕を見ている。ん? どうしたのかな?


「村長、主様の膝に座るだなんていいんですか?」

「構わんよ。きちんと信頼関係があるから出来る事だ」


 訓練場に通っている子達には衝撃的だったらしい。昔から付き合いがある依頼主の人は、僕達が嫌じゃないか確認してくれてから、膝に座りなとか肩車してやるとか言ってくれる。


「ヴァンちゃんもお膝に座るの?」

「うむ。どの主様もそうだとは限らない。シン様はフレンドリー」


 シン様は面倒見がいいんだよね。僕達を自分の子供の様に思ってくれている気がする。


「お前達はお前達で主様との関係を模索していきなさい。形は一つではないのだからね。ただ、敬う心は忘れないで欲しいと儂は思っているよ」


 真剣な顔で頷いた子達が、先生にも話を聞きたくなったのか離れて行く。


「ニコちゃんは何を飲むの?」

「リンゴにします」


 喉が渇いていたので、シン様が注いでくれたジュースを一気飲みする。


「ぷっはぁ~」

「良い飲みっぷりだな。ほら、もう一杯飲め」

「先生! お久し振りです」


「元気そうだな。シン様、カハル様、この子達がお世話になっております。私はここで教師をしているナナミと申します」


「よろしくね。君がドラゴンの置物を作った人?」


「ドラゴン? ああ、課題達成の置物ですね。あれは、あそこで子供たちにもみくちゃにされている教師が作ったものですよ」


 あ~、イツキ先生……。相変わらず大人気だ。あれでも笑っていられるなんて、この村で一番メンタルが強い気がする。


「頭に登っているよ。首がグキッといきそう……」

「カハル様、大丈夫ですよ。いつもの事ですからね」


 ナナミ先生はチラッと見ただけで放置だ。昔からクールで恰好いいんだよね。


「――お待たせ。あ、先生も居たんですね」

「トウマ、お帰り。飲み物はどれにする?」

「ええと、ブドウで」


 恐縮しながら注いで貰って、ゴクゴクと飲んでいる。僕と同じで喉が渇いていたらしい。


「――っはぁ、うまっ」

「お前も良い飲みっぷりだな。ほら、もっと飲め」

「ありがとうございます。先生は何を飲んでいるんですか? 酒ですか?」


「俺は水だ。今日は甘い飲み物ばかりだからな」

「俺がお茶でも貰って来ましょうか?」

「気にするな。これから珍しい料理をたらふく食べるつもりだからな。水分で腹がいっぱいになると困る」


 近くを子供たちが賑やかに通り過ぎて行く。あっ、手に持っているのは、じゃがいもフライの串だ! 僕も貰いに行こう。


「ナナミ先生、後でこっちにも来て下さいね~」

「ああ、すぐ行く。今日はお前達の元気な顔が見られて良かった。シン様、カハル様、ゆっくりしていって下さい。失礼します」


 礼をして去って行く先生を見送り、カハルちゃんの手を引く。


「カハルちゃん、じゃがいもフライを貰いに行きましょう」

「うん。集会所で揚げているのかな?」

「俺、持って来ますよ。座っていて下さい」


 トウマが変だ。普段は「お前、行って来いよ」って言う癖に。


「トウマ、変な物食べたの? いつもの俺様トウマじゃないよ?」

「おまっ、変な事言うな! お客様に行かせる訳にはいかないだろ」


「えー、いつもは『はぁ、客だ? 勝手に自分で持って来いよ、けっ』っていう感じだよ」


「お前、俺をどんな目で見てんだよ! 訂正しろ!」


 頬をビローンと伸ばされる。ふっふっふ、これぐらい余裕! まだまだ伸びますよ!


「トウマはカハルちゃんに良い所を見せたい。カハルちゃんのファン」

「お前まで何口走ってんだよ! こら、待てーーーっ!」


 ヴァンちゃんがさっさと逃げている。子供たちの集団に巻き込まれてトウマが動けない内に、追いかけっこに目をパチパチさせているカハルちゃんの元にギューンと戻って来る。


「あれは照れ隠し。好きでしょうがない」

「それ以上喋るなーーーっ!」


 目を吊り上げたトウマが飛び蹴りをしてくるのをさっと避けて、ヴァンちゃんは余裕で走り去る。トウマが粘って追っていたけど、疲れて諦めの境地に達したのか、じゃがいもフライを手に戻って来る。


「すみません、お待たせしました」

「いいよ、面白かったし」


 クールに見せたいトウマは、シン様の言葉にダメージを受けている。武器を作って貰ってから、カハルちゃんの事が大好きだよね。いつも焦って否定しているけど、恥ずかしがらなくてもいいのに。


ニコちゃんの頬はよく伸びます。普段から頬をパンパンにして食べているので、鍛えられているんですかね?

トウマとニコ&ヴァンちゃんは仲良しですね~。ヴァンちゃんがボロボロ暴露するので、恥ずかしさが限界を超えたトウマです。いつもは俺様でクールなんですけどね~。


次話は、おいしい料理を堪能します。


お読み頂きありがとうございました。

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