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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0283.精霊さんは見ていた!

「ここに入ると疲れがよく取れる。ハードな依頼の時とかに便利」

「うん、分かるよ。この温泉は魔力が豊富に入っているもんね」

「え? そうなんですか?」

「うん。この辺りは魔力が強いから精霊達が多いよ。ほら、いっぱい入っているでしょう」


 衝撃発言だ。精霊さん⁉ 初耳ですよ!


「どこですか⁉ 僕達、いつも精霊さんと入っていたんですか⁉」

「あれ、知らなかったの? 手を貸して」


 カハルちゃんに手を繋いで貰うと、――見えた! 十人は居るだろうか? 御影石で出来た浴槽の縁に座って、足でパチャパチャとお湯を蹴っている。


「足湯?」

「そうかもしれないね。話し掛けてみる?」


 カハルちゃんに頷き掛けて、頭に浮かんで来た記憶にハッとする。駄目だ、聞かせたくない事を言われそうだ。潜りっこ対決をしていて、ザバーと出て来た姿にじっさま達が驚いて腰が抜けたとか、お湯が出て来る部分の真下に居て、頭でお湯をジョバババと受けてみたとか……。


 そんな僕にお構いなく、ヴァンちゃんがサクッと声を掛ける。


「こんにちは」

「あら、見えるの? 今まで見えていなかったわよね? あ、創造主様!」


 慌てて精霊さん達が整列して頭を下げる。


「そんなに畏まらないで。ゆっくり入ってね」

「は、はい」

「精霊さん、いつから入りに来てますか?」

「ずっと昔からよ。あなたの事も知っているわよ、ヴァンちゃん。そちらの子はニコちゃんよね」


 ああ~、やっぱり僕の事を知っている。まずい事を言われる前に、ここから離れなければ。毛も湿って来ちゃったしね。……言い訳なのは分かっています。ええ、分かっていますとも(涙)。


「カ、カハルちゃん、もう行きませんか? ずっと開けておくと湯気がですね……」


「あ、そっか。みんな、邪魔してごめんね。じゃあね」


 カハルちゃん、素直で良い子! だが、扉を閉じる寸前に精霊さん達が僕を見てニヤリと笑う。ひいーーーっ! あれは全てを知っている顔だ! どうしよう、今後お風呂に入れなくなりそうです……。


 もんもんとしながら歩いていると、カハルちゃんが顔を覗き込んで来る。


「毛が湿って気持ち悪いの?」

「へ? 大丈夫ですよ。気になる事がありまして……」

「俺が当てる。風呂での恥ずかしい話をばらされたくない。正解」


 僕が頷く間もなく、ヴァンちゃんが断定した。


「確かに間違ってはいないけどさぁ。ヴァンちゃんだって恥ずかしいでしょ?」

「若気の至り。開き直りが大事」

「いやいや、ヴァンちゃん、まだ十六歳だからね⁉」

「ふふっ、無理に聞いたりしないよ。隠したい事もあるよね」


 何て良い子! 今日、何回思った事か。ああ、もうっ、スリスリしておこう。


「ニコちゃん、くすぐったいよ。あははは」


 明るい笑い声に救われて、足取りが軽くなる。


「あと見所は、あちらにある訓練場ですかね」

「訓練場があるんだ。大きい建物だね」


「はい。引退した人達が先生役をしてくれているんですよ。マナーや戦闘など多岐に渡るので、色々な設備が整っていますよ」


「学校みたいな感じだね」


「はい、そんな感じです。僕達は依頼を受ける事で生計を立てているので、大事な場所ですね。行きますか?」


「えーとね、先にニコちゃん達のお家が見たいな。駄目かな?」

「駄目ではないですけど、特に変わった物はありませんよ?」


 それでもいいと言うので、僕達が部屋を貰っている村長の家に向かう。フワリさん居るかな?


「フワリさん、ただいまー」


 声を掛けると部屋の中で音がした。どうやら居るようだ。


「――二人共、お帰りなさい。あら、まぁ、可愛い女の子が一緒なのね」

「こんにちは、カハルです」

「こんにちは。さぁ、入って」


 温かく迎えてくれたフワリさんは、お茶を淹れて来ると台所に向かって行く。


「村長の奥さんなんですよ。とても優しい人なんです」

「そうなんだぁ。全部が木で出来ていて温かみのある家だね。ここで育ったんだぁ……」


 僕達には見慣れた家も、カハルちゃんには新鮮に映るようだ。改めて僕も見回してみる。白いレースのカーテンに花瓶に生けられた野の花、ソファーにはパッチワークのカバーが掛かったクッション。村長たちの雰囲気そのままの優しくて落ち着く内装だ。


「お待たせしました。カハルちゃんはクッキー好きかしら?」

「はい、好きです。美味しそう」


「良かった。私が作ったクッキーなのよ。お口に合うといいんだけど。はい、どうぞ」


「ありがとうございます。――おいしい! 私、クルミが好きなんです」

「あら、良かったわ。どんどん食べてね」


 僕も久し振りの手作りクッキーを食べる。うん、フワリさんのいつもの味だ。談笑しながらお茶を飲み終え、居間を出て右の廊下へ進み、部屋の前に来る。


「俺、右の角部屋」

「じゃあ、ヴァンちゃんのお部屋から訪問しちゃおうかな」


 ウキウキと足取り軽く部屋に入るカハルちゃんに僕も続く。


「物が少ないね」

「うむ。カハルちゃんのお家へ服とか必要な物を持って行っている」


 僕もヴァンちゃんも必要最低限の物しか持っていないから、余計に殺風景だと感じるのだろう。


ニコちゃんは見えないままの方が良かったですね(笑)。

小さい頃にお風呂ではしゃぐ姿が全て見られていました。

ヴァンちゃんも同じような事をしていますが、過ぎた事をあまり気にしません。あっさりしてます。


次話は、ニコ&ヴァンちゃんの部屋を案内します。


お読み頂きありがとうございました。

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