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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0281.白族の村

「皆様、お帰りなさいませ。お食事をお持ちしてもよろしいでしょうか?」

「よろしく~。ヴァン、何を持っているんだ?」

「ん? 猫。廊下で蹲っていた」


 前足の下に腕を入れて運んでいるので、だらーんとした体としっぽが非常に可愛い。


「そんな茶トラの猫いたっけ?」

「私も初めて見ますね。誰の猫でしょうか?」


 ミナモ様が首輪を確認しているが、特に情報は書かれていないようだ。


「失礼。ここに猫が迷い込んで――、居た!」


 ロウ将軍が大股で猫さんに近付いて行く。


「お前の猫か? 動物は飼わないって言ってなかったっけ?」

「闇の国の将軍から預かっているのですよ」

「……ああ、道理で見た事がある気がしたんだ」


 ダーク様が納得して頷いている。ロウ将軍が猫を受け取ろうとするが、猫さんはヴァンちゃんが気に入ったのか、服に爪を立てて離れようとしない。


「困ったな。どうすれば離れるのだ?」

「ご飯?」

「その手があったか! 急いでミルクを用意しよう。一緒に私の部屋に来てくれるか?」


 また、だらーんと猫さんをぶら下げてヴァンちゃんが歩いて行く。あの恰好がお互いに好きらしい。あー、メイドさんが凄く喜んでいる。どんどん人が集まって来て撮影大会になってしまった。


「ほら、あなた達、食堂に行きなさい。休憩時間が終わってしまいますよ」


 料理を運んできてくれたメイド長さんに注意されると、時計を見て目を剥き走って行く。頑張れ~。


「お待たせ致しました。どうぞ、お席へ」



 ご飯を食べ終える頃に、シン様が荷物を抱えて戻って来た。合流して僕達の村へ行く予定だったけど、思ったよりも海の社での戦いが長引いてしまったので、今から向かうのだ。


「お待たせ。行こうか」

「はい。荷物を持ちますよ」

「じゃあ、メロンの箱を持ってくれる?」


 箱を受け取ると甘い匂いで顔が緩む。んふふふ♪ これは匂いが素晴らしいから、絶対に美味しいやつだよ。村の皆が喜んで食べる姿が目に浮かぶ。


 ヴァンちゃんは梨の袋を持ち、カハルちゃんは僕とヴァンちゃんの腕に腕を絡める。


「お父さん、いいよー」

「よし、行こう。ヒョウキ、大人しくしていたら干し芋を持って来てあげるよ」


 俺も行きたいと言おうとしていたのか、気まずそうな顔になっている。


「――ヒョウキ様?」

「は、ははは……。大人しくしてます……」


 ミナモ様がいつものように溜息を吐いた後にこちらを向き、にこやかに手を振ってくれる。お疲れのミナモ様には絶対に持って来てあげようと心に誓う。カハルちゃんに呆れた目で見られたヒョウキ様が、情けない顔になって机に突っ伏すのを見ながら村に飛んだ。



「ミルンさん、こんにちはー」


 おっと、通信中だった。お口チャックをして待っていると、すぐに来てくれた。ヴァンちゃんが「ジー」と言いながらお口チャックを開けてくれる。


「ふふふ、相変わらず仲が良いですね。ニコ、ヴァン、お帰りなさい。シン様、カハル様、ようこそ白族の村へ。ゆっくりなさって下さいね」


「うん、お邪魔するね。これ、お土産だから皆で食べてね。醤油と味噌の使い方は後で説明するね」


「それはどのような物でしょうか?」

「調味料だよ。冷蔵庫に入れておいてね」

「はい。ここには冷蔵庫が無いので、集会所に行って来ます」

「運ぶのを手伝うよ。――ええと、見張り台の方に行けばいいのかな?」

「はい。見張り台の隣の建物です」


 カハルちゃんが興味津々でキョロキョロしている。転ばないように手を繋いでおこう。


「二人共、お帰りー」


 井戸の側に居たおばちゃん達が声を掛けてくれる。


「ただいま戻りましたー」

「おばちゃん、ただいま」


 僕達の声を聞き付けた村の皆が集まって来る。


「荷物を持つの手伝おうか?」

「ありがと。じゃあ、これお願いしてもいい?」

「うん、任せて。うわぁ、いい匂い!」


 果物に喜ぶ声で更に人が集まって来る。カハルちゃんが感激した様子で集まる皆を見ているが、それは村の皆も一緒だ。


「わぁ、人間の女の子だぁ。お肌ツルツルだね」

「ね。黒い髪の毛きれいだね」


 小さい子達は人間の女の子を見るのは初めてなので、好奇心が溢れ出している。


「――わっ!」


 カハルちゃんの小さな叫びを聞いて振り向く。


「あっ、髪の毛を引っ張っちゃ駄目だよ。痛いって泣いちゃうよ」

「ごめんなさい……。女の子、大丈夫?」

「びっくりしただけだから大丈夫だよ。私の名前はカハルだよ」


 名前が皆の間をさざ波のように伝わって行く。珍しい名前なので小さい子達は何度も呟いて練習している。


「カハルちゃん」

「うん。なーに?」

「えへへ、呼んでみただけ~」


 カハルちゃんがへにゃりと笑う。あ~、可愛い! と顔に書いてある。ちょっとジェラシーを感じてしまうが、僕はお兄さんなので我慢する。お家へ帰ったら、思う存分撫でて呼んじゃうもんね!


ロウ将軍と闇の国の将軍は友達なので、時々、猫さんを預かったりしています。

白族の村では、カハルの方が珍しい生き物ですね。

小さい子達は、毛皮がないのに頭だけ毛がいっぱいあって、不思議だなぁと思っています。


次話は、村を案内します。


お読み頂きありがとうございました。

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