0027.じゃんけん大会
「えーと、本体がある場所は日本という海に囲まれた島国なんだよ。魔法は使えないんだけど、代わりになる物がいっぱいあるよ。あ、獣族もいないんだよ。それで、主食はお米で、味噌とか醤油とか独特の調味料があるよ。長くなっちゃうから、細かいことはまた個々で質問してね。……んーと、最後の質問の、意識がこちらの世界にある時に、本体は眠っているのかについては、起きているが答えだよ。でも、何かしながらだと、こっちに意識を向けるのが凄く難しいから、仮の体はほとんど寝てるかな」
なるほどと頷いていると、ちょうど食事が運ばれて来た。わーい、ご飯!
喜び勇んでカハルちゃんの所に行こうとする僕の両腕が、仲間達にがっしりと拘束される。
「ニコ、ちょーっと向こうでお話しようか?」
「どうしたの? ご飯だよ?」
「大丈夫、大丈夫、すぐ終わるから」
そう言われて、ズルズルと引き摺られて行く。笑顔なのに目が笑っていなくてかなり怖い。何かやっちゃったかな……。
「はい、じゃあ、サクサク行こう。ニコは分かってないと思うから説明するぞ。皆、カハルちゃんの側に座りたいし、抜け駆け禁止。導き出される答えは一つ!」
「すいませんでした!」
僕は深々と頭を下げる。さっき、思わずカハルちゃんの隣を約束してしまった……。
「よしっ! 許そう!」
「えっ? いいの?」
皆が頷き、ヴァンちゃんが口を開く。
「気持ちは分かるし、わざとでもないから謝罪だけ貰えればいい。それに、約束は破っちゃいけない。カハルちゃんも嬉しそうだった」
また、皆が頷く。
「という事で、もう一つ空いている席を賭け、じゃんけん大会を此処に開催する!」
「せーの、じゃんけん、ぽん!」
「ぽん、――ぽんっ、――ぽん!」
「――壮絶な戦いの火蓋が此処に切られた。結末は如何に⁉ という感じか?」
ギョッとして見上げると、寝ているカハルちゃんを抱っこしながら、ダーク様が面白そうに見ている。
ばれた! と僕がワタワタするのをお構いなしに熱い戦いは続く。そして、勝敗は決した。
「ぽん!」
「勝者、ヴァン!」
「いよっし!」
珍しくヴァンちゃんがテンション高くガッツポーズをしている。
「さてと、席も決まった事だし、食べるぞ」
皆、初めてダーク様が見ている事に気付いたらしく、「うわー⁉」と叫んだり、固まったりと反応は様々だ。
ニヤニヤしながらその反応を楽しんだダーク様は、カハルちゃんを抱っこして、さっさと席に向かう。僕達はその後を「何で気付かなかったんだよ」とか「そっちこそ」と言い合いながら、小さくなって付いて行った。
ヴァンちゃんは勝負運がありますね~。
ダークは楽しい事を逃しません。気配をきっちり消して近付きます。
次話は、ニコちゃんが食事を楽しみます。
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