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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0278.蔦リレー

「ごめんね。それで寝不足なの?」

「ふわぁ~、三度も同じ夢で、ふわぁ~……ふにゅ……」


 まさか連続で見るとは思わなかった。カッと目を見開いてもすぐに瞼が落ちてくる。


「ニコちゃんは残る? 無理しなくても大丈夫だよ」

「いえ、行きます。聖域なんてそうそう行ける所じゃないですから」

「じゃあ、僕が抱っこしていくね。ヴァンちゃんも抱っこしようか?」

「俺は平気。カハルちゃんと手を繋ぐ」

「うん。じゃあ、行こうか」


 白銀の森にはフォレスト様が一緒に付いて来てくれる事になった。迷いの森は、入ると必ず道に迷って入口に戻って来てしまう事で有名だ。未だに誰一人として奥に行けないらしい。


「さぁ、迷いの森に入るよ。この森は聖域を守る為に、惑わす魔法が掛けられているからね。僕達からはぐれないようにしてね」


 ぎゅーっと抱き付くと、しっかりと腰に手を回してくれる。


「それなりに距離があるから楽しようか」


 疑問符を浮かべていると、木の枝や蔦がこちらに向かって勢いよく伸びてくる。


「うわっ、魔物ですか⁉」

「ううん、木に協力して貰っているんだよ。そのままじっとしていてね」


 幾本もの枝や蔦が体に巻き付いて、リレーのバトンのように僕達を次の枝に渡してくれる。最初は怖かったけれど、痛みもなく長い距離をすぐに移動できて、とても便利だ。


 景色を見る余裕も出てきた頃に、ヴァンちゃんがカハルちゃんと話している姿が先に見える。僕と同じで余裕が出たんだなと思ったが、ヴァンちゃんは更にその上をいく。


 カハルちゃんが「ゴー!」と声を掛けると、蔦に投げられたヴァンちゃんがムササビさんのように四肢を広げて空中を飛ぶ。すると、新たな蔦が伸びて四肢に巻き付き、勢いを付けて遠くにポーンと飛ばしてしまった。


「わーっ⁉ ヴァンちゃ~~~ん!」


 手を伸ばしても届くはずも無い。ヴァンちゃんがひゅーんと地面に落ちていくのを見ていられず、思わず目をギュッと閉じると、「ひゃっほーい」と抑揚のない声が聞こえて来て脱力する。あれは凄く楽しんでいる声だ……。


 目を開けると、空中で先程と同じように蔦が巻き付き、ポーンと飛ばされている。自分でも空中で更に前方へ回転などをして楽しんでいるあたりが、ヴァンちゃんらしい。大物め……。


「ニコちゃんもやる?」


「フォレスト様、あんな怖い事したくありませんよ。必ずキャッチしてくれると分かっていても僕には無理です」


「そっかぁ。あっ、白銀の森が見えて来たよ」


 オパールのように様々な色が煌めく半円形の結界が見えて来た。透けていないので見えないが、あの中に森があるらしい。


 三メートル位の高さから解放されたヴァンちゃんが、クルンと二回転してから綺麗に着地し両腕を上げる。


「十点満点!」

「おお、やった。カハルちゃん、楽しかった」

「えへへ、良かったねぇ」


 空中移動を満喫したヴァンちゃんが、カハルちゃんに撫でられて更に幸せそうだ。


「ニコちゃん、気持ち悪くなっていない? 大丈夫?」

「はい、大丈夫です。眠気もすっかり飛んでしまいました」

「そう。じゃあ、今から魔物と戦うから気を引き締めていこうね」


 フォレスト様に力強く頷いて結界の前に立つ。どうやって入るんだろう?


「ニコちゃんとヴァンちゃんは私と手を繋いでくれるかな」


 繋ぎ終えると、そのまま結界に向かって歩き出す。わっ、もう十歩もない。中が見えないし、ゆらゆらとした光も大丈夫なのか分からなくて、怖さから足が竦む。そんな僕の手をカハルちゃんが強く握ってくれる。


「怖くないよ。ちゃんと息もできるし痛くないよ。凄く綺麗な所だよ」


 ごくりと唾を飲み込んで頷き、一歩一歩と慎重に足を進めて行く。直前で目を瞑り進むと、ぐんにゃりとした膜のような物を通り抜けた感触がした。


「着いたよ。ここが白銀の森だよ」


 そーっと目を開けると、視線が奥にある巨大で光り輝く白銀の木に惹き付けられる。葉も全てが白銀で、大きさは四十メートル位あるのではないだろうか?


 その木は最高の腕を持つ彫刻家が何代にもわたり、聖なる光を彫り込んで作った芸術品のようだ。側に行くのを躊躇うような神々しさに足が止まってしまう。


「これが、聖域なんですね……。あまりにも清浄で、息一つ吸うのも申し訳ないような気持ちになります」


「まだまだこんなものじゃないよ、ニコちゃん。見て、巨木からあんなに葉が散っている」


 ひらひらと沢山の葉が舞う。まるで現実感がなく、夢幻の中に居るようだ。でも、カハルちゃんの声に含まれる悲しさが僕を引き戻す。


「行こう。早く手当してあげないと。魔物は巨木の前の泉に封印されているよ」


 フォレスト様に抱っこして貰い、視界の下半分を遮っていた茂みを抜けると、沢山の目が僕達を貫く。


「白銀の狼……」


 ヴァンちゃんが呟くと、一際大きな狼さんがこちらに歩いて来る。そして、カハルちゃんの前でピタリと止まり、伏せの姿勢になる。


「こんにちは、ユキシロ」

『創造主様、ようこそおいで下さいました。精霊王、お久し振りでございます』


 頭の中に響いて来た声にびっくりしてしまう。狼さんの声なの?


『そなた達は白族の子か。ここへ獣族が来るのは初めての事。歓迎する』

「は、初めまして。ニコと申します」

「ヴァンです」


 優しい目で頷いてくれたユキシロさんの後を付いて行く。中央は広く開けており、巨木の前にはカハルちゃんが言っていたように泉がある。


 他の木も全て白銀で、結界の円に沿うように立っている。苔むした大地に倒れている木も苔が覆い尽くしている事から、気が遠くなる程の長い年月を感じた。


出来れば、良い夢を三度見たいものですね。

ヴァンちゃんは度胸がありますね。ニコちゃんは、あまり冒険しません。

新たなモフモフ、白銀の狼、ユキシロの登場です。この子は四足歩行です。


次話は、聖域を回復させます。


お読み頂きありがとうございました。

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