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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0270.チーズせんべい

「なーんかさぁ、カハル、落ち込んでねぇ?」

「そうかな? そんな事ないと思うけど」

「うんにゃ、落ち込んでる。カハルは何でも胸に溜め込むだろ。ほら、さっさと俺に吐いちまえ」


 カハルちゃんがチラッと戸口に目をやり、困った顔で口を開く。


「ホノオが帰って来ると困るもん」

「ホノオ様ですか? では、他の方に引き止めておいて貰いましょう。――シン様、今はどちらに?」


 ミナモ様が通信の鏡で話し始め、笑顔でこちらを向いてくれる。


「カハルさん、お願いしましたから大丈夫ですよ。ホノオ様には火の国のお城へ直接帰って頂く事になりました。その他の方達はすぐに戻って来ますよ」


「はい、ありがとうございます」


 カハルちゃんがホッとした所で、ヴァンちゃんが何かを手に部屋に走り込んでくる。


「ただいま戻りました。――カハルちゃん、お土産」

「えっ、あ、ありがとう。これ、なーに?」


 まっしぐらにカハルちゃんへ向かい渡したのは、何だか香ばしい匂いがする茶色っぽい物だった。


「チーズせんべい」

「チーズなの? ヴァンちゃん、どこに行って来たの?」

「緑の国。メイドさんがおやつを分けてくれた。一緒に食べる」


 緑の国は酪農が盛んな国だったよね。おやつがチーズとは、あの国らしい。ヴァンちゃんが割って差し出してくれたのを仲良く食べる。


「パリパリしてるね」

「はい。トローンとしてないチーズもおいしいですね」

「美味」

「俺にもくれ」


 直径二十センチくらいあるので、まだ大分余っている。チラッとヒョウキ様を見たヴァンちゃんが、ちびっと割って渡している。えっ、それだけ? コインぐらいの大きさしかない。


「ヴァン、もうちょっとくれない?」

「駄目。百一人の熊さんとビャッコちゃんにあげる」


 確かにそう考えるとあの量に納得だ。


「そっか、それなら無理だな。これ、ありがたく貰うな」


 あっさり引いた。こういう時は駄々を捏ねないのだなと妙な感心をしてしまう。


「ただいま。ん? 皆で何を食べてるの?」

「チーズ」


 ヴァンちゃんが見せると、シン様が納得した様に頷く。


「それなら家でも簡単に作れるよ。気に入ったなら作ってあげようか?」

「是非。ヒョウキ様、もっとあげる」

「ん? いいのか? あんがとな」


 申し訳なく思っていたヴァンちゃんが、大きな欠片を渡している。


「ミナモ様も食べますか?」

「では、少しだけ。――うん、美味しいですね。懐かしいです」

「懐かしいですか? 何度も食べた事があるんですか?」

「はい。魔国で宰相をする前は、緑の国で宰相をしていましたから」


「えーーーっ⁉ ずっと、このお城じゃないんですか? だって、ヒョウキ様と息がぴったりですよ」


「それは嬉しいような嬉しくないような、複雑な気持ちになりますね」

「そこは、『ミナモ、超嬉しい!』って言わないと駄目だろ。なぁ、ヴァン」


 ヴァンちゃんは無心でチーズを齧っていて聞いていない。何かの形を作っているようだ。


「えっ、無視なの? ヴァン、俺の事が嫌いなのか? そうなのか⁉」


 肩に手を掛けようとしているのを慌てて止める。


「ヒョウキ様、駄目です。無視じゃありません」

「えっ、無視じゃないの?」

「はい。ヴァンちゃんは集中していると周りの音が耳に入らないんです。今も何かの形を作っているので見守ってあげて下さい」


 皆が何かの形? とヴァンちゃんの周りを囲み、「船じゃない?」、「帽子じゃないか?」、などと予想しながら結果を待つ。


「お前達、ヴァンを囲んで何をしているんだ?」


 訝し気な声を出すダーク様にミナモ様が振り向く。


「ダーク様、お帰りなさいませ。ヴァンちゃんが作品制作中なのですよ」

「作品? 何かを食べているみたいだが……」


 ダーク様も近寄ってしげしげと見ている。


「――出来た。うぉっ、囲まれている」


 満足気に顔を上げたヴァンちゃんが驚く様子が面白い。ダーク様が早速確認だ。


「ヴァン、これは何だ?」

「チーズ」

「チーズか。それで、何をしていたんだ?」

「アヒルちゃん作った」


 チーズが少なくて穴が開いている部分が、アヒルちゃんの目になっているようだ。カハルちゃんに自慢している姿に皆がほっこりしている。


「ヴァンちゃん、器用だね。そのアヒルちゃんはどうするの?」

「こうする。――もぐもぐもぐ」

「あっ!」


 何の躊躇いもなく嘴部分から食べる姿に、カハルちゃんが小さく叫んでいる。


「あっさり食べたな」

「そうですね。潔いです」


 やっぱり、息ピッタリだ。ミナモ様のさっきの言葉は照れ隠しだったのかもしれない。


「そうだ、ヴァンに夢中ですっかり忘れてた。カハル、話を聞かせてくれるんだろう?」


「……うん。お父さん、セイは?」


「セイにも聞いて欲しい話なの? クマグマちゃんを迎えに行っているから連れて来るね」


 すぐさま移動の魔法で消え、セイさんを連れて帰って来る。


「お待たせ、カハル」


 頷いたカハルちゃんを抱っこして、シン様が会議室へ向かう。


ミナモの過去にニコちゃんがびっくりです。「ミナモ、超嬉しい」ではなく、「失敗したかな?」と思ってたり? そうじゃないといいですね~。

凄い集中力で作ったアヒルちゃんですが、あっさり食べます。ヴァンちゃんは嘴からいっていますが、動物型の食べ物はどこから食べるべきか作者はいつも悩みます。ひ○こはおしりから? いやいや、顔が残るじゃんとかいう具合に(笑)。結局、全部食べちゃうので意味ないのでしょうけどね~。ついつい。


次話は、火の国のトップについて相談です。


お読み頂きありがとうございました。

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