0026.ご飯何かな?
僕達はまた円座になり話を再開する。
「えっと、次の質問は今世で他の王様に会ったかだけど――」
「カハル、俺と一番仲がいいという発言が抜けているが?」
「えっ⁉」
カハルちゃんが困っている。あぁ、また眉毛が下がってきちゃった……。
「ダーク様、話を蒸し返すのはお止め下さい。前に進みません」
「はいはい、宰相殿。カハルは恥ずかしがり屋だからな。後で二人きりで問い詰めよう」
しれっと言うダーク様を見た後、カハルちゃんと宰相様が顔を見合わす。『お互い、苦労しますね』という感じで。
カハルちゃんは諦めたように頭を一つ振ると話を続ける。
「魔国と火の国の王様には会ったよ。あっ、それと精霊王と呼ばれているフォレストにも。それ以外の国の王様は前世と関係してないから会ってないよ」
「精霊王の事をもう少し教えて下さい」
質問した子に一つ頷くと続ける。
「魔国の城の横にある森の中に泉があるのを知っている?」
数人が頷く中、泉なんてあったけ? と僕は隣の子と顔を見合わせる。
「何人かは知っているみたいだね。泉で祈ると精霊が出現して病気が治るって噂になっている所だよ。その下に精霊王であるフォレストのお家があるんだ。フォレストは全ての精霊と森や聖域を統括しているんだけど、更に医師としても活躍しているよ」
ほーお、と僕達が頷いていると、ダーク様が話を引き継ぐ。
「伝染病や大規模な事故・災害で多数の患者が発生した場合、魔国に依頼され真っ先にフォレストが動く。他にも病に備えて各国に幾つ薬を作るようにと魔国を通じて指示を出したりする」
「それぞれの国で対処している訳じゃないのですね」
「そうだ、ニコ。魔国が全ての国・情報を統括しているからな。それに国ごとに任せていると、対処が遅れて被害が拡大する恐れがある」
魔国の王様って凄いなと思って、ふと気づく。
ヒョウキ様はさっき聞いた話だと、図々しくてふざけていてと散々な言われ様だった。そんな人が魔国の王様で大丈夫なのかな? と不敬な事を考えていたらダーク様と目が合う。
「『国に拘るよりも民が安心して暮らせるのが一番だ』、『王や貴族なんて役割の一つで、人に上も下もない』と言う奴だ。人としては困った奴だが、王としては並ぶ者がいないから安心しろ」
内心がばれている! うぅ、宰相様の視線が痛いよぉ(泣)。
そんな僕に助け舟が来た。
「失礼致します。ダーク様、ご昼食のご用意が出来ました」
「あぁ、ありがとう。この部屋に他の者の分と一緒に持って来てくれるか」
「はい、かしこまりました。そちらの女の子は白族の方達と同じメニューで宜しいですか?」
「それで構わない。すまんが、客人が一人増えたから追加で頼む」
「かしこまりました。すぐにお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、そうしてくれ」
「はい。机などを運び込みますので少々お待ち頂けますか?」
その言葉にカハルちゃんが反応する。
「はい、どうぞ」
カハルちゃんの手が示す方を見ると、机と椅子が出現していた。魔法なのかな?
メイド長さんが目を瞠っている。その気持ち良く分かります。
「メイド長、クッションだけ用意して貰えるか?」
「は、はい、畏まりました。只今お持ち致します。失礼致します」
ダーク様の声に我に返ったメイド長さんが部屋を後にする。
ご飯何かな? お腹ペコペコだから、お替りあるといいなぁ。楽しみ~。
「ニコ、よだれを垂らすなよ」
「えっ⁉」
慌てて口の周りを触るけど、濡れていない。良かった……。
「ダーク様、酷いです。垂れていません」
「くくくっ、すまん。顔にでかでかと、ご飯が楽しみだと書いてあったから、つい、な」
「ふふっ、ニコちゃんは正直者だから。ご飯楽しみだね」
「はいっ。あっ、カハルちゃんのお隣に座ってもいいですか?」
「うんっ、お願いします。じゃあ、その前に残っている質問に答えるね」
その時、僕は舞い上がっていて気付いていなかった。仲間達がジト目で見ている事に――。
宰相様とカハルの心が通じ合った模様です。
ニコちゃんは正直者なので、親しい人達が相手だとダダ漏れです。
次話は、ニコちゃんが仲間に捕まり、壮絶な戦いの火蓋が! 的な話です。
お読み頂きありがとうございました。




