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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0267.カハルちゃん、人見知り中です

「おっ、ニコがいるじゃねぇか。ほれ、クッキーやるわ」

「あっ、おじちゃ、じゃなくて王――」

「おっと、でかい声は禁止な」


 口を押さえられてしまった。でも、今のは僕が悪いので、もう大丈夫ですと目で訴える。


「じゃあ、離すからな。――それで、いつバレたんだ?」

「この前、ダーク様に教わりました」

「あ~あ、残念だ。ヴァンにもバレたか?」

「はい、そうです」


 ぼりぼりと頭を掻いたおじちゃんが、僕をじっと見る。


「なぁ、前と同じ態度で頼むよ。俺は堅苦しいの嫌いなんだわ」

「はぁ、おじちゃんがそれでいいなら、そうします」

「おう、ありがとな。で、この子は?」

「僕がいまお仕えしているんです。可愛いでしょ~」


 カハルちゃんはじーっとおじちゃんを見ているけど、部長さんの時のように抱き付いては来ない。


「プニプニのほっぺだな。お嬢ちゃんもクッキー食べるか?」


 コクッと頷いたカハルちゃんに、ニカッと笑い掛けてクッキーを渡してくれる。


「おじちゃん、ありがとうございます」

「おー、声も可愛いなぁ。よしよし、いっぱい食べて大きくなれよ」


 頭を撫でられてカハルちゃんが思わず笑っている。


「きゃーっ、もう、可愛い笑顔ね! カハルちゃん、私にも撫で――」


 さっとカハルちゃんが僕の背に隠れる。


「――うっ、ダメージが……。帰ってもいいですか?」

「駄目に決まってんだろ。民の為に頑張って働け。こういうのは徐々に慣れて貰うしかねぇんだよ。なぁ?」


 そろそろと顔を上げたカハルちゃんが、おじちゃんに頷く。僕は嘆いている部長さんの手に書類を持たせてから部署内を回っていく。カハルちゃんは、ずっと僕にひっついて離れないけど、何回か来れば慣れてくるかな?


「部長さん、サインを下さい」

「はーい。――どうぞ。あっ、それとこれを持って行ってくれるかしら」

「了解です。――ん? カハルちゃん、どうしましたか? ふんふん、名前ですか? ダイアナさんですよ」


 部長さんが自分の名前を聞いて不思議そうな顔をしている。カハルちゃんがモジモジしながら顔を上げる。


「……ダイアナちゃん、バイバイ」

「ダイ、アナ、ちゃん……。――ふぶっ!」


 あっ、これは鼻血のパターンだ。カハルちゃんが俯いてしまった部長さんを戸惑って見つめる。


「私、何か失敗しちゃった?」

「お嬢ちゃんの所為じゃねぇよ。おら、しっかりしろ。悲しませているぞ」

「ふぇっ、違うのよ! 嬉し過ぎふぇね、うーっ、トイレ行って来まふ!」

「……おトイレを我慢していた所為?」


 部長さんが嫌われないように誤魔化しておこう。その内、すぐバレるけど。


「きっと、そうですよ。今度またお話しましょうね」

「うん。おじちゃん、バイバイ」

「ああ、また来てくれよ。楽しみに待っているからな」

「はい」


 おじちゃんには苦手意識があまり無いらしい。保護者っぽい雰囲気が出ているからだろうか?


「次に行きましょうね」

「うんっ」


 元気よく頷いたカハルちゃんを連れての書類配達は楽しくて仕方がない。途中でカハルちゃんは寝てしまっても、ウキウキが止まらない。


「えへへへ~」


 笑いながら廊下を歩いているので、皆に二度見されたりするけど気にならない。「どうです? うちのカハルちゃん、可愛いでしょ~」と自慢して回りたくなる。でも、どこにでも嫌な人は居る。


「おい、ここはお子ちゃまや動物が来る所じゃねぇんだよ。さっさと出ていけ!」


 お貴族様の馬鹿にしきった目と暴言に対して、心の中ではブーブーと抗議しつつ書類と腕章を見せる。


「書類配達中です。御心配なようでしたら、魔国宰相のミナモ様にお問い合わせ下さい。では、失礼致します」


「おいっ、待てよ! 生意気な口をきいて――」

「呆れた。こんな奴が城内に居たのですか。さっさと放り出して下さい」

「はっ」

「ニコちゃん、ご迷惑をお掛けしました。すみません」


 兵士さんが男を運んで行き、火の国の宰相様が深々と頭を下げてくれる。


「あ、あの、頭を上げて下さい。確かにちょっと腹は立ちましたけど、ああいう人はどこにでも居ますから」


「どこにでも、ですか? 他でも不快な目に遭っているのですか?」


「獣族を馬鹿にする人は居ますよ。でも、僕は自分の種族を誇りに思っているので聞き流せます。ただ、カハルちゃんを馬鹿にされると我慢がきかないかもしれません」


「私だったら、どちらも許せませんよ。性根を叩き直してやります」


 結構、過激な人だった。貴族です! っていう澄ました顔をしているから、もっと冷たくて関心の薄い人だと思っていた。


「何の騒ぎだね?」

「カエン様! お騒がせ致しまして申し訳ありません」


 執務室の近くだったので聞こえてしまったらしい。宰相様が謝るのに合わせて、僕も慌てて頭を下げる。


「いやいや、私が気になっただけだよ。君は書類配達をしている子だね。ホノオが可愛いと興奮しながら教えてくれたよ。お名前を教えてくれるかな?」


「ご挨拶が遅くなり失礼致しました。白族のニコと申します」

「ニコちゃんか。お嬢ちゃんは――ぐっ!」

「カエン様⁉ 誰か医者を呼べ!」


 胸を押さえて苦し気に呼吸をしている王様を見て、兵士さんが血相を変えて駆けて行く。


カハルは体に精神が引っ張られて幼い行動をとる事があります。部長さんに対しては、人見知りではなく照れているだけです。本当はお話したいなぁと思っているので、最後に勇気を出してバイバイしてみました。

ニコちゃん、浮かれていますね。終始、笑顔です。


次話は、王様の症状についてです。


お読み頂きありがとうございました。



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