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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0266.おんぶの順番

「『世界』に魔力を貰って遺跡に供給すればいんじゃないですか?」


「えーと、それなんだけど……。私を早く成長させる為に、『もうリセットは必要ないだろう? さっさと供給しろ』ってお父さんにせっつかれて、泣く泣く自分が使う分まで供給したって『世界』にぼやかれちゃって。流石にこれ以上は可哀想と言うか……」


 シン様……。そりゃ短期間でカハルちゃんが大きくなった訳だよ。


「それなら、回復した『世界』からたんまり貰えばいいんじゃん。なぁ、カハル♪」


 スパーンとミナモ様が小さなハリセンですかさず叩く。


「ヒョウキ様、セクハラです。カハルさんに抱き付こうとしないで下さい」

「いってー。いいじゃんか、俺の癒しなんだよ」


 頭を擦りながらブーブー言っている。すっかり、元のヒョウキ様に戻っているようだ。心配して損した気がする。


「ヒョウキ様が良くてもカハルさんは良くないのです。ヴァンちゃん達、お待たせしてすみません。これが今日の書類です」


「はーい。カハルちゃんはヒョウキ様に魔力供給して貰う必要が無くなったんですよね? 今日はどうされますか?」


「えっ、もちろん、俺とお留守番だろ」


 ヒョウキ様には聞いてないですという言葉を飲み込み、頭を寄せ合って相談だ。


「私は今日、会議が幾つもあるのです。ヒョウキ様に目を光らせていられる時間が少ししかありません」


「そうなんですか……。うーん、ここに居て貰うのは心配ですね」


「はい。――ああ、でしたら、こうしませんか? お二人が交替でカハルさんをおんぶしながらお仕事をするというのは」


「おお、素晴らしい。俺達、みんなが幸せになれる方法」

「えっ、俺が幸せじゃない――」


 ん? 何か声が聞こえたような。まっ、いいか!


「いいですね! カハルちゃんはどうですか?」

「私が居たらお仕事の邪魔にならない?」

「邪魔どころかやる気がメラメラですよ! ねっ、ヴァンちゃん」

「うむ。居てくれた方が捗る」


 カハルちゃんは戸惑いながらも頷いてくれた。やる気が漲った僕達は準備をさっさと済ませて、じゃんけんをする。


「勝った方が昼まで。では、いざ。じゃーんけーん」

「「ぽんっ」」


 一発で勝負がついた。ヴァンちゃんがピースの手を高く掲げる。くっ、何故、パーにしてしまったんだ! ――いや、よく考えたら午後にはおんぶ出来るんだった。なーんだ、悔しがる必要無かったよ。


「なぁ、いつまで俺を無視なの?」

「ん? 行って来ます?」

「えっ、ヴァン、そういう意味じゃ――」

「カハルちゃん、ゴー」

「ゴー!」


 カハルちゃんがヴァンちゃんに合わせて拳を天に突き上げると、ニンマリと笑いながらバビューンと駆けて行く。あー、嬉しそうにしちゃって、微笑ましいですな。何だかヒョウキ様の元気が無いので、手に飴を押し込んで僕も後を追う。さぁ、今日も張りきっちゃうぞー!


「ヒョウキ様、お仕事しましょうね」

「――はい……」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 やってきました、午後! 今度は僕がおんぶする番だ。わーい、わーい! おんぶ紐をきちんと確認してから魔法道までダッシュする。


「あれ、今度はニコちゃんがおんぶするの?」

「はい。もう待ちに待った午後! ですよ」


「ははは、ヴァンちゃんも今日はテンションが珍しく高かったよ。ニコちゃん、転ばないように気を付けるんだよ」


「はい。今日は一人じゃないので、気を引き締めて行きます!」


「いや、一人の時も気を付けようよ。この前もよそ見して歩いて、そこの柱にぶつかっていたし」


「あーっ、しーっ、しーっですよ!」

「――ニコちゃん?」

「は、はひーっ。本当の本当に気を付けます!」


 びしっと直立不動で答えた僕の背後から強い視線を感じる。わ~ん、カハルちゃんが怒ってるよ~。


「自分を大事にしないと駄目なのよ。私もしょっちゅう同じ事を言われるけど……。って今は私の事じゃなくて、ええと、そう、ニコちゃんが痛いと私も心が痛むの。一緒に気を付けようね」


 カハルちゃんが途中で自分の行いも反省しつつ諭してくれる。なんだか親近感が湧きますのぉ。ニヤニヤしないようにしつつ、分かりましたと頷いた。



「部長さん、こんにちはー」

「ニコちゃん、いらっしゃい。あら、その子は?」

「カハルちゃんですか? 一緒に配達なんです~。はぁ、幸せ……」


 頬に手を当ててうっとりしていると、周りの人達に笑われてしまった。だって、幸せなんですよ!


「ふふふ、良かったわね~。私にも抱っこさせて」

「いいですよ。ん? カハルちゃん、どうしました?」


 僕の首にしっかりと腕を回してビタッとくっついてくる。これは、もしや……。


「あー、すみません。人見知りが出てしまいまして」

「そ、そんな……。カハルちゃん、お姉さんは怖くないのよ、ね?」

「ぶふっ、お姉さんって。この子からしたら、部長はお母さんでしょう」


「あら、良い響きじゃない。でも、笑った事については、後できっちりお話しましょうね?」


「え、いやだな~、冗談じゃないですか。いつも通りの俺と部長の楽しい会話ですよ」


 部長さんが首を絞めてガクガクと揺さ振っている。部下の人は良い笑顔で揺れているから苦しくはないのだろう。


ヒョウキは丈夫ですね。あっさり回復しています。余計な行動がなければカハルと楽しく過ごせたかもしれないのに、残念な王様です。

カハルも無茶ばかりしていて、あまり人の事は言えないので、途中から反省モードになってしまいました。

ニコちゃんは何とか笑いを抑えているつもりですが、ニコニコです。おんぶのお蔭でばれずに済みました。


次話は、カハルが人見知りです。


お読み頂きありがとうございました。



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