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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0262.ふーふーの達人

「みんな、お帰りキュ。――モキュ? 疲れた顔してるでキュね。何か問題でキュか?」


「あるにはあったが……。まぁ、なるようになるだろう」


「セイしゃんがそう言うなら大丈夫でキュね。シンしゃんは帰って来ないのキュ?」


「そろそろ来るのではないか?」


 癒しを求めるセイさんが、クマちゃんの頭を撫でたり肉球を触っている。僕とヴァンちゃんも、そっと自分の手を差し出すと、深い感謝の目を向けられた。好きなだけモフモフするんだよという気持ちを込めて頷いておく。


「――ただいま。あれ、クマちゃんが居る。早く終わったの?」

「違うのキュ。追加のお花を持ちに来たのキュ」


 その言葉に応えるように、地下からフェイさんが花を抱えて戻って来る。


「お待たせ致しました。皆様、お帰りなさいませ」

「うん。僕も何か手伝おうか?」

「大丈夫キュ。もうすぐ閉店にするつもりなのキュ」

「そう。じゃあ、おいしいご飯を作って待っているね」

「キュ。にゃんちん達、また後でなのキュ」


 ブンブンと手を振り合って別れる。そして、シン様をじっと見る僕達。


「そんな熱烈な視線を受けると照れちゃうな」

「お父さん、誤魔化しちゃ駄目なの。ヒョウキは大丈夫なの?」

「さぁ、どうだろう? 放置して帰って来たからねぇ」


 放置……。再びじっと見る僕達。


「冗談だよ。フォレストに見て貰ったけど、一時的な物だから大丈夫だろうって言っていたよ。今の内にいっぱい仕事をして貰ったらっていう提案に、ミナモが喜んでいたよ」


 お医者さんがそう言うならいいのかな? 確認しようとセイさんを見上げると肩を竦められた。信じるしかないという事か。


「さてと、ご飯の準備をしないと。皆はお風呂に入っておいで」



 ご飯になる頃には、クマちゃん達も戻って来た。今日も顔が疲れ切っているけど、初日よりはマシかな。


「はぁー、お腹空いたのキュ」

「そうですね。私も先程からお腹が鳴ってしょうがありません」


 ビャッコちゃんのキュ~キュルルルというお腹の音に、クマグマちゃん達が手を叩いて喜んでいる。中にクマちゃんが居て鳴いている様で面白いらしい。


「今日は天ぷらだよ。大根おろしと天つゆで食べてね」


 お皿にこんもりと盛られている天ぷらという食べ物は、少し黄色っぽく見える物に包まれ、食材の色が薄く透けて見えている。


「茸はアケビちゃんがくれた物だよ。後はお野菜と白身のお魚と海老だね」


 じゃあ、まずは海老からにしよう。赤いシッポがあるからすぐ分かる。


「いただきまーす。大根おろしを付けて、はむっ。――おお、サクサクだ!」

「サクサクだと⁉ は――」

「ヴァン、ストップ。冷ましてからな」


 セイさんがすかさず止めている。流石、頼れる我らが兄貴だ。そろりと口から天ぷらを離して、ヴァンちゃんが天つゆに浸す。


「ヴァンちゃん、大根おろしが冷たいから、載せると早く食べられるよ」


 僕のアドバイスに目をキラーンとさせたヴァンちゃんが、天つゆにドサッと入れている。


「あんまり浸すとサクサクじゃなくなっちゃうよ」


 揚げたてをセイさんのお皿の上に置いてあげながら、シン様が言葉を掛けると、ヴァンちゃんがギョッとして、大根おろしの山から天ぷらを取り出している。


「――もぐもぐ。……しんなり」


 既に遅かった様だ。カハルちゃんが、そっと自分が食べようとしていた天ぷらを差し出す。


「これ丁度良い温度になっているから食べていいよ。お塩だから、しんなりもしていないよ」


「カハルちゃん、良い子。気持ちだけ貰う。俺はふーふーの達人だから大丈夫」


 達人? と全員が首を傾げるが、ヴァンちゃんは次の天ぷら選びで忙しくて気付いていない。


「次は椎茸。ふっふっふっ――。きっと食べれる。はむっ。――おおっ、サクサク! 椎茸、ジューシー」


 出た! 高速ふーふー。今回は五回じゃないから冷めている気がするけど、やはり効果が薄そうに見える。カハルちゃんは反応に困ってヴァンちゃんを見つめたままだ。


「ん? カハルちゃん、どうした? 熱くて食べられないなら、俺にお任せ」


 また、高速ふーふーをするのかと思ったら、普通にふーふーとして自分の口元に近付けて温度を確認し、大根おろしと天つゆで食べさせてあげている。凄い慎重だ。何だ、さっきはたまたま急いでいただけか。


「次は俺が食べる番。トウモロコシにする」

「うん、甘くておいしいよね」


 カハルちゃんは先程の慎重さに安心したのか、にこにこと答えている。


「――よいしょっと。ふふふふふふ、いざっ」

「――⁉ 待て! 何だ今のは」


 セイさんは驚きで反応が遅れたようだが、きっちり火傷を阻止だ。


「ん? トウモロコシ」

「いや、具材ではなくて冷まし方だ」

「秘儀、超高速ふーふー」


 セイさんがパチパチと瞬きをしている。まさか、そんな返しが来るとは思っていなかったのだろう。会話の続きはシン様が引き取るようだ。


「じゃあ、さっきのは『秘儀、高速ふーふー』なの?」

「そう。食べてもいい?」

「どうぞ」


 『どうぞ』の後には、自然と冷めただろうしという言葉が続きそうだ。


ヴァンちゃんはサクサクしたものが好きです。

「ふーふー」と冷ましているのではなく、「ふ」と言っているだけのような気が……。早く食べたくて仕方がない食いしん坊なヴァンちゃんです。

セイはヴァンちゃんに翻弄されっぱなしです。兄貴、負けるな~。


次話は、共通点が欲しいニコちゃんです。


お読み頂きありがとうございました。

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