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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0261.顔にたんこぶ?

「ただいま。うん? 三人で仲良く集まって何を見ているんだ?」


 僕達をまとめてガバーッと背後から抱き締めて尋ねて来る。


「魔力の流れだよ。そろそろ私が出来そうだから確認していたの」

「そうか。でも無理はするなよ。それで、問題は何処だ?」


 会議から戻って来たヒョウキ様が、地図に気付いて寄って来る。


「俺への駄目だしだったりする?」


「えっ、そんな事は思っていないよ。物凄く感謝しているからね。多分、私が流しても同じ感じだと思うよ」


 話していると、次々と人が帰って来て部屋が賑やかになっていく。


「ヒョウキ、駄目じゃない。こんなにも流れていない所があるよ。ほら、ここもまだらだし。ほら、ここも、ここも」


 流石、シン様は容赦なくいきますね。ビシバシ駄目だしだ。


「うわぁ、カハル、聞いたか? シンもカハルの優しさを見習え。カハルは自分がやっても同じ感じだし、感謝しているって言ってくれたんだぞ」


 カハルちゃんが頷いて見せると、シン様は「そっかー」と納得した顔をする。でも、カハルちゃんが見ていない隙にヒョウキ様を思いっきり睨んだ。


「うわっ、マジで鬼だ。カハル、気付け~、猫を被っているんだぞ~」


 ヒョウキ様の小さな声は、ダーク様と楽しそうに話しているカハルちゃんには届いていない。だが、まずい人にはきちんと届いている。


「誰が鬼だって? 毎度、毎度、僕を苛つかせるのが得意だよね、ヒョウキ?」


 シン様の怒りの攻撃が始まると、ヴァンちゃんが小さな声でぽそっと言う。


『裁きの雷!』


 それに合わせたようにビシャーンと雷が落ちる。


「うぉわっ!」

「ちっ、避けたか。だが、甘い!」


『――必殺! ハリセンの舞!』


 またもやヴァンちゃんの声に合わせたように、ハリセン二刀流のシン様の攻撃がズババーン‼ と顔面と後頭部へ炸裂した。うわぁ、顔面だ。容赦ないですね、シン様……。


「ぐほぉーーーっ!」


 ヒョウキ様が顔面を手で覆って叫んでいる。本当は後頭部も押さえたいんだろうなぁ。


「シンを敵に回すなとあれほど言ったのに。まったく手に負えんな……。――カハルは近寄るな。癒しの光の無駄遣いだ」


「で、でも、凄く痛そうだよ?」

「大袈裟なだけだ。ほら、カハル、さっきの続きを話そう」

「う、うん」


 何回も振り返って確認しているカハルちゃんの手をダーク様が引いて歩く。僕もついて行こうっと。


「はぁ、やれやれ。カハル、お父さんの膝においで」


 シン様がドサッとソファーに座り、ダーク様の横に座っているカハルちゃんを手招く。


「うん……。ねぇ、お父さん、ヒョウキをいじめすぎちゃ駄目だよ?」


「カハル、あれはね、躾なんだよ。こんなに根気よく付き合ってあげているのに、未だに改善されないんだから嫌になっちゃうよ。それに引き換え、うちの子達は何て良い子なんだろう!」


「結局、そこへ落ち着くんだな。ほら、セイも混ざって来ていいぞ」

「いや、遠慮する。頬擦りされても困惑しかない」


 セイさんは恥ずかしがり屋さんだもんねと納得してからヴァンちゃんを探す。――居た。ハリセンに問題が無いか確認し、次に痛みに呻いているヒョウキ様の顔の赤い線を見ている。


「顔にもたんこぶ出来る?」

「――えっ、どうだろうな? 出来るんじゃないか? 超痛いし」

「線上に出る?」

「いや、そんな長いたんこぶは要らない。つうか、そんな強力なハリセンは今すぐ処分してくれ」


 その言葉に瞬いてから、ヴァンちゃんがシュンとしてしまう。大きなハリセンを引き摺りながら、俯いてこちらに歩いて来る。


「ヴァンちゃん、シュンとしてどうしたの?」


 カハルちゃんが焦ったように頭を撫でる。


「ハリセン、処分……」

「え? 何で?」

「ヒョウキ様、これ嫌い」


「はっ。自分の事は棚に上げてヴァンちゃんの力作を処分しろだなんて、心が狭いよね」


「うぐっ」


 鼻で嗤ったシン様の更なる攻撃が入りました。そして、呆れ顔のミナモ様が書類をドサッと執務机に置く。


「そうですよ。怒りを買うような事ばかりしていると、その内にカハルさんにも見向きをされなくなりますよ。ウダウダしていないでお仕事をして下さいね」


「だーーーっ、やってられるか! どいつもこいつも鬼畜じゃねぇか! 俺はサンドバッグじゃないっつーの!」


 移動の魔法でエスケープしようとしたヒョウキ様に、シン様とダーク様が恐るべき速度で近付き足払いを掛ける。両足を綺麗に宙に浮かせたヒョウキ様の後頭部がゴンッと物凄い音で床にぶつかる。更に両腕をお二人に拘束されているが、既に意識は無いようだ。


「余計な手間を掛けさせないで欲しいよね」

「全くだ」


 僕とカハルちゃんとヴァンちゃんが、そろそろとヒョウキ様に近付く。


「息してる?」

「――うむ。してる」

「前と後ろにたんこぶが出来ちゃいますね」


 カハルちゃんがそろそろとヒョウキ様の肩に手を伸ばす。触れた途端にヒョウキ様がバネ仕掛けの玩具のように跳ね起き、カハルちゃんがビクッと身を竦ませる。


「――仕事。俺の大好きな仕事をしないと」


 素早く立ち上がり、執務机に座るとカリカリと文字を書き始める。


「――打ち所が悪かったか?」

「むしろ良かったんじゃない? 真面目に仕事してるよ」

「文章に問題も無いので、このままで行きましょう。やる気がある内に追加の書類を持ってこないと」


 心配する所か、変化を歓迎されている。僕達三人は戸惑って、頭が痛いのか無言で額を押さえているセイさんを見る。


「はぁ……。気にするなと言っても無駄か? シン達がやった事だから責任は取って貰おう。帰るぞ」


 深い溜息を吐いたセイさんが、「えっ、でも……」と言う僕達に疲れた目を向けてから首を横に振る。そして、癒しを求めるように僕達をギュッと一度抱き締めてから移動の魔法を使った。


シンは、「もう、可愛いなぁ」と思いながら、ヴァンちゃんの声に合わせてあげています。本気で怒っている訳じゃないので余裕があります。

自分の余計な一言がいけないんですが、度重なるお仕置きにヒョウキがついにキレました。短い反抗でしたね~(笑)。心配する所か、嬉々として書類を用意するミナモ。普段の行いって大事ですね……。


次話は、ヴァンちゃんの秘儀です。


お読み頂きありがとうございました。

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