0025.ダダ漏れ
僕は辛抱たまらず話し掛ける。
「カハルちゃん、創造主様なんですね。凄いです! だから、あんなに強いんですね!」
興奮した仲間達も次々と質問したりし始める。
「カハルちゃんの守護龍様やお兄様は何処におられるのですか? お会いしたいです!」
「ダーク様と一番仲が良いのですか? 今世では他の王様にもう会ったのですか?」
「別の世界に本体が在るとお聞きしたのですが、どのような所ですか? 意識がこちらの世界にある時は、本体は眠っているのですか?」
「おい、お前達少し落ち着け。だが、さっき良い事を言った。俺はカハルと仲がいいぞ。いずれ妃にしてみせる」
「「おぉっ!」」
僕達はどよめくが、宰相様はそれどころじゃない。
「本気ですか⁉ 少し冷静になられて下さい。創造主様といえども幼子ですよ⁉ それに先程のお話では、ほとんど眠られているのですよね? 考え直して下さいっ」
「お前こそ落ち着け。大きくなった姿を見ただろ。俺を幼女趣味だと思っているのか? それに残念だが実現しそうにない。なんせ千年以上も誰も選ばなかった女だぞ? まぁ、気が変わったなら大歓迎するが」
流し目を送られてカハルちゃんの眉毛が下がる。
「ダーク、揶揄わないで……。えっと、質問に答えるね。兄のセイは事情があって今は会えないの。守護龍――フェイは呼んだら直ぐに来てくれるけど、呼ぶ?」
「えっ、いいんですか⁉ ご迷惑でなければお会いしたいです!」
「じゃあ、呼ぶね――フェイ」
「――主様、お呼びですか?」
瞬きの間に真朱の髪が印象的な男の人が眼前に居た。前髪はアシンメトリーで襟足だけ腰まで届きそうな程に長い。瞳も同じ色なのかと思ったら錫色だ。背は190センチ近くある。
「背が高くていいなぁ……肩に登りたいなぁ」
「――失礼します」
えっ? と思ったら、凛々しくて格好いい顔が僕の腰の横にある。もしかして、心の声が口から出ていた⁉ と思わずヴァンちゃんを見やる。
「うん。ダダ漏れ」
ポツリと発せられた言葉が僕の心を打ち抜く。うぅ、望みは叶ったけど素直に喜べない。冷や汗ダラダラな僕はガックリと項垂れる。
「肩車の方がよろしいですか? 高さが足りないようなら頭の上に乗って頂いても構いませんが――」
誤解を招いてしまった僕はブンブンと首を振る。
「違うんです、大満足なんですっ、でも――」
「でも?」
「――っ、心の声がダダ漏れだったんです! こんなつもりじゃなかったんです! 申し訳ありません……」
俯いて落ち込んでいると、そっと顔を覗き込まれる。
「謝る必要はありません。私はあなたの願いを叶える事が出来て非常に満足です。ですので、俯くのは止めて肩の上からの景色を楽しんで下さい。ね?」
や、優しいー、いい人だぁ。あっ、違った、いいドラゴンさんだ。お言葉に甘えて見渡してみる。他の皆が小さく見えるなぁと思っていると、恨めしそうな目にかち合う。
「僕がお会いしたいってお願いしたのに……ニコずるいよぉ」
「わーっ、ごめん! あ、あの、フェイ様、僕はもういいのであの子を肩に乗せてあげて下さい」
「様はいりません。あなたは肩に乗ったばかりでしょう? もう片方の肩は空いているのですから――そこの子、いらっしゃい」
手を差し出されて狼狽えている子が、小さく笑ったダーク様の手でフェイさんの肩にヒョイっと乗せられる。
「しっかり掴まれよ。フェイ、大人気だがどうする?」
可笑しそうな口調につられて下を見ると、仲間達が『乗りたい、乗りたい、乗りたい』と目をキラキラさせてフェイさんを見ている。
「これは困りましたね。ですが期待にお応えできる方法が一つあります。しかし、その前に――主様、如何致しましょう?」
「もうそろそろお昼だから、先にお話を終らせちゃおう。皆いいかな?」
残念そうにしつつも皆が頷く。でも、カハルちゃんの言葉にはまだ続きがあった。
「皆がね、フェイに会いたいって言ってくれたんだよ。嬉しいなぁ……。いい子達ばかりだから、後で全員乗せてあげてね」
「はい、かしこまりました」
笑顔で交わされる言葉に、僕達は歓声を上げる。やったー‼
ダークが爆弾発言ですね。本気にして貰えないとは不憫な……。
真朱は朱色に少しだけ黒を混ぜた様な色です。
フェイ、大人気で良かったね!
次話は、カハルが質問の続きを答えていきます。
今日も、外伝と本編の両方をUPしました。外伝はもう少しで終了の予定です。
お読み頂きありがとうございました。




