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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0258.キャベツが顔に生えました

「パンが焼けましたよ。あら、どこに行かれたのかしら?」

「すみません、私に頂けますか? 彼は忙しくなったので戻りました」


「あら、凄い人! 少しは落ち着いたかと思ったのに。パンは以上でよろしいですか?」


「ニコちゃんとヴァンちゃんは、いいですか?」

「あっ、クリームパンをお願いします」

「俺はもうトレイに載ってる」

「すみません、以上でお願いします」

「はーい」


 お金を払おうとすると止められてしまった。


「カハルさんのお土産に使って下さいね」

「いいんですか? えっと、では、お言葉に甘えます」

「ミナモ様、ありがとうございます」


 お金を払ったミナモ様の足元を、パンを持って付いて行く。


「おう、らっしゃい。コロッケパンでいいのかい?」

「他もあるんですか?」

「メンチカツがあるぜ。どうする?」

「じゃあ、僕はメンチカツにします。ヴァンちゃんは?」


「俺はコロッケがいい」

「あいよ。兄さんはどうする?」

「私もコロッケでお願いします」

「おう。ちょっと待っててくれな。すぐ用意するからよ」


 待っている間にクマちゃんのお店を見ていると、クマグマちゃん達がひょっこりと現れて、押し花の商品を補充している。そこへ女の人がそーっと手を伸ばす。「こらーっ!」と叫ぶ前に女の人が吹っ飛んだ。


 そこへゴンさんがパンを持って来てくれる。


「はい、お待たせ。よく吹っ飛ぶよな。最初はあんまり派手に吹っ飛ぶから仰天しちまったんだが、怪我もしてないだろ。しかも、人数も多いから慣れちまってよ。おー、また飛んだ」


 兵士さんが、もう勘弁してくれという顔で回収している。そんなに人数が多いなら、うんざりもするよね。


「ああ、そうだ。そこの竹で作った椅子に座って食べていいぞ。従業員の休憩用の椅子なんだってよ。セイさんが作ってたんだが、器用だよな」


 青竹で作られている椅子に有り難く座り、念入りにふーふーと冷ましてパンに齧り付く。


「んーっ、おいしい!」


 ザクッ、肉汁ジュワーですよ! ソースとキャベツと揚げ物、最高の組み合わせだよね。


 ヴァンちゃんは食べる前に、お花の注文方法を描いた紙を渡してクマちゃんに感激されている。早速、目立つ位置にビャッコちゃんが貼ると、満足そうな顔でこちらに戻って来る。待っているお客さんが次々に見始めたので、注文時の時間短縮になるだろう。


「いただきます。は――」

「ヴァンちゃん、ストップ! ふーふーした?」


 よし、止めるの成功! これで火傷を防げる。


「二回した」

「少なっ! ちゃんとしないと食べさせませんよ!」

「はい、ニコ母さん。俺、ちゃんとするから、お預けはご勘弁」

「よろしい。でも、お母さんじゃありません。せめてお父さんと、って聞いてない⁉」


 ヴァンちゃんは「ふーふー」ではなく、「ふっふっふ」と高速で息を吹き掛けている。あれ、効果あるのかな?


「もういい筈。五回した」

「いやいや、どう考えても冷めてないでしょ、もうっ!」

「ぶはっ、はははは!」


 暗殺者ナンバーワンさんが爆笑している。笑い上戸だったのかな?


「モモ様、あの子達、最高ですね! はははっ!」


「はいはい、分かったから手を動かしてね。ニコちゃん達は気にせずゆっくり食べてね」


「はぁ」


 ヴァンちゃんが暗殺者ナンバーワンさんをガン見しながら食べ始める。


「こ、こっち見てますよ。――ああ、段々ソース塗れに。キャベツが一本、顔に生えてますよ! あはははっ」


「――お仕置きされたいの?」

「――いえ、遠慮します。お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」


 モモ様の冷たい声で瞬時に笑いを収めた暗殺者ナンバ――、うーん、長いからワンさんでいいや。ワンさんがキビキビと働き出す。さすが、頭領。貫禄が違いますね~。


 ミナモ様は笑いながら、ヴァンちゃんの口の周りの毛に刺さっているキャベツを抜いている。


「はい、どうぞ」

「――はむっ。もぐもぐ……ごっくし。ありがとうございます」

「どういたしまして」


 それを見ていた行列のお姉さんたちが黄色い声を上げる。


「ああ、私も食べさせたいわ~」

「私も! 見て、あんなにほっぺたをパンパンにして。家に連れ帰りたい……」


 あれくらいの発言なら吹き飛ばされないようだ。本気でやろうとは思っていないからだろうか?


「キュ~、釣銭が足りなくなっちゃうのキュ。フェイさん、一緒に銀行へ行って欲しいキュ」


「はい、参りましょう」


 路地に駆け込み見えなくなったフェイさんが、小さなドラゴンの姿でクマちゃんを乗せ、凄いスピードで青い空を飛んで行く。赤い球体が体の周りを囲んでいるから、結界を張っているのかもしれない。あれなら振り落とされる心配も要らないだろう。


モフモフの毛に刺さった千切りキャベツ。間近で見たい……。

モモがお仕置きすると言ったら必ずします。ワンさん、心に傷を負いたくないので逆らいません。

でも、横目でチラチラとばれないようにヴァンちゃんを見ています。

お姉さんたちは本気で連れ帰ろうと思っていないので吹き飛ばされません。


次話は、色々な誤解です。


お読み頂きありがとうございました。

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