表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
257/390

0256.モモ様と休憩

「――出来た。――ん? 皆、俺を見てる。んん?」

「クマちゃんの所に行きましょうね」

「はい。これ、クマちゃんにあげる」


 皆で覗くと、お店での注文の仕方が描かれている。


「良く出来ていますね。まず、お花を決めるのですね」


「ん。一本からでも売ってくれる。その後は花束の大きさを選ぶ。大中小とあって、見本が店頭に置いてある」


「成程。その後は、包装やリボンの色を指定する事も出来るのですね」

「そう。イメージを伝えて全部お任せも出来る」


 ヴァンちゃんがすっかり詳しくなっている。何も聞かなくても、よく観察しているから自然と頭に入ったのだろう。


「では、実際に見てみましょうかね。カハルさんはどうしますか?」


「私はヒョウキとお留守番してまーす。リリーちゃんと一緒にお昼を食べる約束なの」


「ふふ、メイド長とすっかり仲良しですね。では、お土産を買って来ますね」

「はーい。いってらっしゃーい」


 カハルちゃんが一緒で機嫌が良くなったヒョウキ様が、ニヤニヤしながら手を振っている。ヴァンちゃんが急いで戻って、新作の小さなハリセンをカハルちゃんの手に握らせる。


「危なくなったら叩く。遠慮しちゃいけない」

「うん。バッコーンするね」

「ん。ヒョウキ様、カハルちゃんに何かしたら噛み付く」

「俺のイメージ悪すぎだろ! もっと信用しろよ、なっ?」


「それは無理かと存じます。日頃のイメージが悪すぎます。ヴァンちゃん、この大きなハリセンは私が装備しておきます」


「リリーちゃん、お願いします」


 静々と部屋に来たメイド長さんが請け負ってくれた。これで安心して出掛けられる。「マジか⁉」と叫ぶヒョウキ様の声を聞きながら魔法道に向かった。



 目の前で人が派手に吹っ飛ぶ。上に高く吹き飛び、路地にベシャッと落ちるので誰の邪魔にもならない。普通なら大怪我を負っていそうなものだけど、傷一つ無いようだ


「ああ、またですか。まったく邪な人が多過ぎる……」


 兵士さんが慣れた様子で吹っ飛んだ人を馬車の荷台に乗せる。


「……あれは?」


「カハルちゃんが守りの魔法をかけてくれたんです。邪な思いを持った人とか悪い人を排除するんです」


「便利ですね。色々と使い道がありそうです」


 ミナモ様が真剣な顔で考え始めてしまった。その横で、また吹っ飛ぶ人。クマちゃん達は慣れてしまったのか、すぐに次の注文を聞いている。目線すら動かさない事から、どれだけ居たのだと呆れる。


「――あっ、ニコちゃん達でキュ。いらっしゃいなのキュ~」

「お疲れ様です。モモ様、こんにちは」

「ニコちゃん、ヴァンちゃん、よく来てくれたね。ゆっくり見て行ってね、私の為に」


 『私の為に』を強調された。笑顔を浮かべているけど、人間のお客さんばっかりだから、人嫌いなモモ様はモフモフに飢えているのだろう。


「モモしゃん、休憩して来ても良いキュよ。そして、ジュースを休憩終わりに買って来て欲しいのキュ。これでお願いしまキュ」


「うん、お言葉に甘えさせて貰うね。さぁ、行こうね。――ミナモ様は動かないけど、どうしたの?」


「はぁ、有効な活用方法を考えているみたいです」


 モモ様が肩を叩くと、驚いた顔で僕達を見る。よっぽど考え事に夢中だったんだな。


「すみません。どちらに行くのですか?」

「あちらにあるジュース屋さんです。この入れ物で売って貰う事も出来るのですよ」


 二リットルは入りそうな容器をモモ様が手に持っている。


「人数が多いとこちらの方が便利ですね」


 いくつも器を運ばずに済むとは有り難いと頷いていると、ヴァンちゃんが僕を見ている。


「どうしたの?」

「ニコなら確実に転んでバシャーになって、『うわーん(泣)』になるなと」


 自分でもそう思っていたので、すぐに反論の声が出ない。


「――か、可能性の話だよね? 僕はちゃんと運べる。運べる……」


 自分に言い聞かせる。よし、大丈夫に決まっている。


「ポジティブでいいと思いますよ。口にする言葉は、毎日の自分に影響を与えますからね」


「おぉ! という事は、おっちょこちょい大魔王から卒業出来ますね!」

「ええと、私もそうなるように祈っておきますね」

「はい! 僕はしっかり者~♪ しっ、かーっ!」


 言っている側から躓き、ヴァンちゃんに支えられる。


「……頑張れ」

「……はい」


 そのまま、ヴァンちゃんに手を引かれてトボトボと歩く。モモ様がクスクスと笑っているのは気付かないふりだ。


「いらっしゃいませ」

「こんにちは。朝と同じ物をお願い出来る?」

「はい。今日も凄いお客様ですね。うちのお店も、そのお蔭で大忙しですよ」


 クマちゃんのお店に来て、周辺のお店もついでに見て行ってくれるらしく、どのお店も慌ただしい雰囲気がある。


 僕達も別の店員さんにアイスティーを注文して受け取る。でも、ミナモ様が笑顔で僕の手からコップを抜き取る。そうですよね、さっきも躓きましたよね。はぁ……大人しく持って貰おう。あ、ヴァンちゃんも持って貰ってる。えへへ、仲間が出来た~。


リリーちゃんがハリセンを装備したら最強なので、心おきなくお出掛けです。

鼻息荒く店にやって来た、度を超えたモフモフ好きは必ず触ろうとするか、連れ帰りたいという思いが強いので、もれなく吹っ飛びます。モフモフ好きの愛が暴走しております(笑)。

ニコちゃんのしっかり者への道は長く険しい……。頑張れ。


次話は、裏のドタバタもお楽しみください。


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ