表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
256/390

0255.深呼吸

「ニコ、歯を剥き出して威嚇してみろ」

「はい、いいですけど? ガウー」

「迫力が足りないな。唇が歯にくっついたようにしか見えん」

「ぶふっ」


 シン様が噴き出し、セイさんの口元がピクピクとしている。


「ダーク様、酷いですよ! 笑いものになってしまったじゃないですか! カハルちゃんは怖かったですよね? ねー?」


「えーと……。ニコちゃんらしさが出ていて、いいんじゃないかな」


 今の間は何だろう。じっと目を見ると、気まずそうに逸らされる。へへへ……。どうせ、唇が歯にくっついた人ですよ……。


「ヴァンもやってくれるか?」

「ん。ガルルルゥ、ガウッ!」

「おぉ、強そうに見えるな」

「やった。でも、ニコも獣化すれば迫力ある」

「えっ、本当⁉ ヴァンちゃ~ん!」


 やはり、ヴァンちゃんは僕の味方だ。よしよしと背中を撫でられる。


「ふーん? 迫力ねぇ」


 ダーク様が僕の頬をみょーんと伸ばす。


「ふぁふぃするんでふか! (何するんですか!)」

「ん? 確認をな。どう見ても間の抜けた顔にしか見えんな」

「ふぁなふぃへふふぁふぁい! (離して下さい!)」


 ダーク様がチラッとクマちゃんを見る。あっ、大きい声出しちゃった!


「……キュミ~」


 良かった、眠ったままだ。安堵していたらダーク様の手があっさりと外される。


「安眠妨害はしたくないからな。さてと、帰るか。よく寝ろよ」

「泊まっていかれないのですか?」


「お前は人が良すぎないか? まぁ、ニコらしいが。明日は早く起きてやる事があってな。また誘ってくれ」


「はーい。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 僕とヴァンちゃんとカハルちゃんの頭を順繰りに撫でて帰って行った。カハルちゃんは眠くなってしまったのか、小さなドラゴン姿になったフェイさんを枕元に置いて、お布団に潜り込んでいる。


「ドラゴンの添い寝。俺も混ざる」

「あっ、僕も!」


 珍しい体験に感謝して眠りに就いた。その夜、僕の背中にドラゴンの羽根が生えて、大空を自由に飛び回る夢を見る事が出来た。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「あっ、これも持って行くのキュ」

「このお花はどうしますか?」

「それは足りなくなった時に持って行くのキュ」


 クマちゃんとビャッコちゃんが慌ただしく準備している。僕も起きようっと。


「ふあぁ~。ん~」

「ニコちゃん、うるさくして、ごめんキュ」

「大丈夫ですよ。起きようと思っていた所なので」

「そう言って貰えると有り難いのキュ。あっ、クマグマちゃん、それじゃないキュ。それは作りかけが入った箱でキュよ」


 手伝ってあげたいけど、今日は卵を貰って来る当番だった。僕も急がなきゃ。


「――ご馳走様でキュ」


 クマちゃんは気が急いているのか、食べる速度がいつもより速い。


「卵かけご飯でサラサラ入っちゃうけど、よく噛んでね。それと、深呼吸して。はい、すー、はー」


「キュー、ミー。キュー、ミー。キュミー……」

「どう? 少しは落ち着いた?」


「モキュ。頭の中のわーっていうのが少し落ち着いたのキュ。ああしなきゃ、こうしなきゃが頭を占めていて、楽しむのを忘れていたのキュ」


「そうだよ。あまり気負い過ぎたら持たないよ。これから、ずっと続けていく事なんだからね。お客さんの為にっていう気持ちも大事だけど、クマちゃんが体を壊したらお店が開けなくなっちゃうんだからね。ビャッコちゃんも体に力が入っているから、深呼吸して」


「――ああ、本当ですね。すー、はー、すー、はー。――うん、お店に居る時もやってみます。混乱した頭で無駄な力が入っていたら、良い動きが出来る筈がありませんね」


 心配そうに見ていたカハルちゃんの顔が漸く緩む。ビャッコちゃん達自身が、自分の状況に気付いたから安心したのだろう。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 お昼休みにミナモ様とヴァンちゃんと一緒に、クマちゃんのお店に行ってみようという話になった。


「はい、はい! だったら俺も行きたい」

「却下に決まっています。昨日、こっそり覗きに行ったので十分でしょう? さぼった分のお仕事をしっかりこなして下さいね」


 ヒョウキ様が言葉に詰まっている。ダーク様の予想通り、厳しくお説教されたようだ。


「ちぇっ。お小言ミナモ」

「――何か言いましたか?」


 寒いっ。心が凍えそうになってカハルちゃんに抱き付く。


「ミナモさん、凄く怒っているね」

「氷点下ですよ。僕は絶対に怒らせないようにします!」


 小声でこしょこしょ話していると、言葉でヒョウキ様をボコボコにしたミナモ様が良い笑顔で振り返る。


「さぁ、行きましょうか。ヴァンちゃん、行きますよ?」


 ヴァンちゃんはお絵描きに夢中で何も気付いていない。ミナモ様は気付くまで待つ事にしたのか、目の前の椅子へ静かに座る。


ダークに幾らいじられようと慕うニコちゃん。帰ると言われると引き止めたくなります。

いじめられて嬉しいとは思わないですよ。危ない趣味はありません(笑)。ダーク様は素直じゃなくて。スキンシップが好きだなと思ってます。

クマちゃん、そわそわです。気ばかり焦っていると、思ったように体が動かず余計に焦るの悪循環です。

脳は一つの事しか考えられないように出来ているらしいので、それを利用するといいらしいです。ジャンプしたり、猛然と計算したりとか、頭を占めている事と全然違う事をしてみる感じですかね。


次話は、お疲れなモモとジュースを買いに行きます。


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ