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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第四章 ペルソナ
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0251.しめサバ

「しめサバ、おいしいのキュー」


 しめサバ? どんな具だろう?


「クマちゃん、しめサバってどれですか?」

「これキュよ。お薦めなのキュー」


 しめサバ……。首をキュッと絞められたような響きだ。でも、お魚さんの首ってどこだろう? エラの下辺りかな?


「ヴァンちゃん、お魚さんの首ってどこだと思う?」

「首ある?」


 ヴァンちゃんと一緒に天井を見上げながら、お魚さんを思い描く。


「エラの下辺り?」

「多分そうだよねぇ。そこをキュッと絞められちゃったんだよ」

「おぉ、辛い」

「ええと、訂正してもいいかな?」


 シン様が困ったような顔をしている。首の位置が違ったのかな?


「首は絞めるんじゃなくて折るんだよ」

「えっ、もっと残酷⁉」

「おぅ、サバさん……。大事に食べる。許しておくれ」


 おいしいと嬉しそうに頬張っていたクマちゃんの顔も引き攣っている。


「ええと、血抜きをすると美味しく食べられるからだよ。それと、首を絞めるではなくて、お酢で身を締めるだからね」


 シン様以外の皆が一斉にしめサバに手を合わせる。うぅ、大事に食べますからね。


「僕が悪者になったような気がするのは何でだろう……」


 シン様が何かぼやいているがよく聞こえない。そんなサバさんを頑張って調理してくれたシン様にも手を合わせておこう。ありがたや、シン様。


「あれ? 僕も拝まれた……。被害妄想だったのかな? あ~、良かった。次はどれにしようかな?」


 シン様はイカか。僕はしめサバを大事に頂こう。


「うん、酢が効いていますね。他のお魚さんよりも身がキュッとしてます」

「でしょう。カハルもしめサバ好きだったよね。僕が作ってあげる」

「うん。大葉も入れて下さーい」

「任せて。――はい、どうぞ」

「ありがとう、お父さん」


 頬張っている姿が可愛い。カハルちゃんの小動物っぽい感じが、食べている時は特に増すよね。両手で食べ物を持って、一生懸命食べる姿はいつまで見ていても飽きない。


「ふぅお~。糸まみれに~」


 ヴァンちゃんの声に振り向くと、口の周りの毛にキラキラした糸のような物が見える。


「何を食べたの?」

「納豆。収集がつかなくなってきた。あーれー」


 「あーれー」にあまり感情がこもっていないので大変そうに聞こえない。でも、口周りの糸を何とかしようとして触った手も糸だらけになっている。


「あー、ヴァンちゃんが大変な事になってる。セイ、一旦洗ってあげて」


「ああ。ニコ――は大丈夫そうだな。ヴァンは食べ終わったら、俺の所に来てくれ」


「ラジャ。――もぐもぐもぐ」


 僕とヴァンちゃんはセットで考えられているようだ。たまには違う行動もしているのです。はむっ、イクラ美味しい!


「――ほら、いいぞ。食べて来い」

「ありがとうございます。――ふっふっふ。最後はトロと沢庵のトロタクを堪能せねば」


 マグロがミンチになったものと沢庵を細かく刻んだものを、クルンと巻いて五つほど作り溜めている。


「いざ。はむっ。――うまい、最高傑作。もぐもぐ。はむっ」


 五つあったトロタクを止まる事なく食べ続けている。その姿を既にお腹がいっぱいになったクマちゃんが、口をポカーンと開けて見ている。


「――ごっくし。美味であった。御馳走様です」

「モキャー……」


 呆れているのか感嘆しているのか分からない声を、クマちゃんが漏らしている。僕もついつい食べる手を止めて見入ってしまった。


「ん? ニコ、どうした?」

「う、ううん。なんでもないよ。いい食べっぷりだったね」

「うむ、大満足。ニコにも作る?」

「ううん。僕は納豆でフィニッシュするって決めてあるんだ~」

「それがいい。糸まみれは大変」


 結局、僕もヴァンちゃんと同じ道を辿る事となった。納豆の糸は手強いですね……。


「さてと、今日の様子を教えてくれるかな?」

「そうだったでキュ。記録用水晶を一日中つけておいたのキュ。見て欲しいキュ」


 大人数で見る為に、白い壁へ映像を映す。お茶を飲みながら鑑賞会だ。


「うわぁ、開店前にこんなに人が並んでいたの? 忙しそうにしていたから、僕とカハルはクマちゃんに手を振るだけで帰って来ちゃったけど、その時よりも多いね」


「そうなのキュ。開店時間を早める事になったのキュ。銀行の人が気遣ってくれて、釣銭を早めに持って来てくれたのは、とっても助かったのキュ」


「そっか。人手が足りないんじゃない?」


「正直、きついなぁと思っていたんでキュけど、様子を見に来てくれたモモしゃんが、部下の人も巻き込んでお手伝いしてくれたのキュ」


 クマちゃんがそこまで早送りする。


「薔薇がいいの? 君にぴったりなお花だね。小さい花束だっけ?」

「あっ、いえ、一番大きいのでお願いします!」

「一番大きいのにしてくれるの? ありがとう、綺麗なお嬢さん。すぐに用意するから待っていてね」


 モモ様が部下であろう人にお花を包ませて、次のお客さんの注文を聞いている。その近くからは、女性達の興奮した声が聞こえている。


「きゃーーーっ、カッコイイ!」

「あ~、もう、素敵過ぎるわ。これから毎日、この方達が見られるなんて……。きゃーっ! どうしましょう!」


 シン様が半眼になっている。この後、モモ様は怒られるのだろうか?


初めて食べるニコちゃん達は「絞め」と「締め」を勘違いです。シンだけおいてけぼりな感じですが、ニコちゃんが感謝してくれたので落ち込まずに済みました。

ヴァンちゃんが満喫してますね。糸と格闘したりトロタクをひたすら食べたり。見てるだけでお腹いっぱいなクマちゃんです。


次話は、クマちゃんの移動手段についてです。


お読み頂きありがとうございました。

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