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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0249.クマの花屋、オープンです!

 日々が瞬く間に過ぎて行く。クマグマちゃん達の工場などは、テラケル族と大地の精霊さん達の活躍により順調に復旧されている。クマグマちゃん達はインフィオラータの準備やクマちゃんのお手伝いにと大忙しだ。すっかり落ち込んだ様子は無くなり、生き生きとしている。


 カハルちゃんは順調に成長して普通に喋れるようになり、最近はよちよちと歩いている。手を引いてあげるのが最近の楽しみだけど、人気があって中々順番が回って来ない。そうこうしている内にカハルちゃんが眠ってしまい、次が僕の番だったのにと膝から崩れ落ちる事が続いている。はぁ、悲しい……。


 そして、モモ様が足繁く家にやってくる。カハルちゃんの成長が楽しみで仕方ないらしい。日々、何かしらの発見があるらしく、記録用水晶をまた買い足したそうだ。シン様は諦め顔で、そんなモモ様を送り迎えしてあげている。何気に仲良しだよね、このお二人。


 クマちゃんはというと、お店にオーニングテントが新たに設置されたり、開店準備に追われている。


 この前はセイさんとヴァンちゃんと一緒に、開店祝いとして木枠に黒板を嵌め込んだ看板を作った。物凄く感激してくれて、「心の友でキュ~、一生離れてあげないのキュ~」と熱烈な頬ずりをされた。


 セイさんには「大好きキュ。恥ずかしいけど連呼しちゃうのキュ。大、大、大好きなのキュ~~~。キュハァ、恥ずかし過ぎキュ~。――じゃ、でキュ」と言うと、ピューッと地下のお花畑に逃げ込んでいった。これには皆のニヤニヤがしばらく止まらなかった。可愛いやつめ~、なのである。


 そんなこんなで、とうとう花屋さんの開店日である。緊張した面持ちのクマちゃんが朝からそわそわと部屋の中を歩いている。


「お客さん、来てくれるでキュかね?」

「絶対に来てくれますよ。チラシも皆で配りましたし。ね、ヴァンちゃん?」

「うむ。みんな楽しみに待っているから心配ない。俺もその内の一人」

「私も精一杯働きますから。頑張りましょうね、店長」


「ハッ、そうキュ、店長だったキュ。振り向かなかったら、ごめんなさいなのキュ。まだ、クマの事だってピンとこないのキュ」


「ははは、徐々に慣れて下されば大丈夫ですよ。そろそろ行きましょうか」

「モキュ」


 シン様に作って貰った、ひまわりのアップリケが付いた黄色のポシェットを身に付け、クマちゃんがヴァンちゃん達を見る。


「行ってきまキュ。頑張って来るのキュ」

「ファイト、クマちゃん。俺も後で行く」


 コクコクと頷いたクマちゃんをセイさんが抱っこする。今日は一日側で見守るらしい。お店の使いにくい部分などをその場で直してあげたりするそうだ。僕は押し花の商品の補充担当のクマグマちゃんと商品を手に持ち、ちょっとだけ様子を覗いて来る事になっている。


「くまちん、いってらっしゃい。後でお父さんと行くね」

「モキュ。みんな、行ってきまキュ」

「頑張っておいで」


 セイさんの移動の魔法で店に着くと、既に長蛇の列が出来ており、兵士さん達が集まって列の整理をしてくれている。


「キュ⁉ みんなお店に来てくれた人達キュ?」


 そこへ女将さんが僕達を見付けて慌てて寄って来る。


「あっ、クマちゃん、来たね。凄い人なんだよ。少し早めに開店出来ないかい? あたしも少し手伝うからさ」


「女将さん! やるしかないでキュよね。でも、釣銭がまだ来てないのキュ」

「すみません、通して下さい。すみません!」


 そこへがっしりとした体格の男性が人垣を掻き分けて、クマちゃんの所にやって来る。


「はぁ、はぁ、お待たせ致しました。釣銭を、はぁ、お持ち……致しました」

「あれ? 早いのキュ。クマが時間指定を間違えたでキュか?」


 薄っすらと汗をかいている。全力で走って来てくれたのか、息を整えながら説明してくれる。


「はぁ……すー、はー……。いえ、支配人がこの騒ぎを聞きつけて、早めにお届けするようにと。人目の無い場所に行きましょうか?」


「じゃあ、宿を使っておくれ」

「ビャッコちゃん、入れ物を持って来て欲しいキュ」

「畏まりました。すぐに参ります」


 先に宿へ入り、金額を確認する。


「確かに間違いないでキュ。ここにハンコを押せばいいでキュか?」

「はい、お願いします。明日も早めにお届けに上がりましょうか?」

「そうでキュね……。ビャッコちゃん、どう思うキュ?」


 入れ物を持って来てくれたビャッコちゃんに意見を求めている。これから一緒にお店を支えていくから、意見交換は大事なのだ。


「早めの方がよろしいかと思います。暫くはこの状態が続くのではないでしょうか」


「モキュ。申し訳ないでキュけど、早めでお願いできまキュか?」


「はい、畏まりました。今日ぐらいに参りますね。では、これで失礼致します。――ああ、そうだ。宿屋さんの釣銭は別の者が参りますので」


「ああ、ありがとうね。お疲れ様」


 会釈する男性にクマちゃんが声を掛ける。


「支配人さんに、ありがとうって伝えて欲しいでキュ。行員さんもありがとキュ」

「はい。では、また」


 くしゃっと目尻に皺を寄せて笑うと足早に帰って行く。他の店への釣銭配りが待っているのだろう。


「釣銭はよーしでキュ。後は商品を並べるのを手伝って貰えばいけまキュね」

「はい。リボンや包装の紙は私が準備します」

「ニコちゃん、女将さん、セイさん、お手伝いして貰ってもいいでキュか?」

「勿論さ。お花を並べればいいのかい?」

「モキュ。セイさんはビャッコちゃんを手伝って欲しいでキュ」


「ああ、任せろ」

「僕はクマグマちゃんと並べますね」

「お願いキュ。ファイトー!」

「オー!」

「グマー!」


 クマちゃんの掛け声に応えて持ち場に走る。急げ、急げ~!



「――みんな、準備はいいキュ? では、『クマの花屋』オープンでキュ! いらっしゃいませでキュ!」


「いらっしゃいませ! ようこそ、『クマの花屋』へ!」


 こうして、慌ただしいオープンの日を迎えた。忙しそうに、でもキラキラした笑顔のクマちゃんが花束をお客様に渡している。


 クマちゃんの夢が叶った瞬間を目の当たりにして、ここに居合わせる事が出来た事への深い感謝と感動を覚える。そして、僕も一つ決意をする。僕も自分の本当の願いの為に一歩前進しよう。恐れを超え、心から笑っていられる未来をこの手に掴んでやるのだ! さぁ、いざ行けっ、ニコ‼ 怯む事なく突き進めっ!


 眩しい太陽と爽やかな朝の空気の中、決意を胸に土の国の魔法道を目指して走り抜ける。今日も元気にバリバリお仕事するぞー!


花屋のオープンが叶いました。クマちゃん、おめでとう! 初日から凄い人なのでガンバレ~。

次話は、カハルが開店祝いを贈ります。


お読み頂きありがとうございました。第三章はここで終了となります。

皆様にお読み頂けるという事が力となり、ここまでお話を書く事が出来ました。皆様には感謝でいっぱいです。

この後は外伝集をしばらくUPし、本編へと戻る予定です。

まだまだ続く予定ですので、今後も『NICO&VAN』を、どうぞ宜しくお願い致します。

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