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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0246.アジフライ

 最後に宿屋の女将さんの所に向かう。


「女将さん、こんにちはでキュ~」

「あら、クマちゃん、よく来たね。あら、ビャッコちゃんも!」

「お邪魔します」

「皆、お昼は食べたのかい? 良かったら食べていっておくれ」

「ああ、頼む。今日のメニューでいいか?」

「はい!」


 全員それでいいらしい。あ~、色んな匂いが食欲を刺激する。隣の人のお肉おいしそう……じゅるり。あ、目が合っちゃった。てへへ(汗)と笑って誤魔化す。


「何だか昼時にここに座るのは変な気分ですね」

「店員さんでしたもんね。開店したら、ここで毎日ご飯ですかね?」

「確か、賄いを頂けると伺いました」


「モキュ。昼食代はクマが持つでキュから、ビャッコちゃんの好きな物を食べて貰っていいでキュよ。パン屋さんで買ってきてもいいでキュし、お肉屋さんでも市場でもいいのキュ」


 話していたら、きつね色に揚がったアジフライが目の前に置かれる。


「はい、お待たせ! 熱々だから気を付けるんだよ」


 山盛りキャベツとフライにソースをたら~っと掛ける。


「いただきます!」


 フォークで刺すとザクッと良い音がする。あ~、堪りませんね、この音!


「はぐっ。――はふっ、はふ、はふぁ~」

「ほら、水」


 お水で衣がふにゃんとなるのは悲しいので、セイさんにコクコクと頷いてみせて咀嚼していく。外はザックザックで中はふんわりなお魚。ソースが合うなぁ~。でも、醤油でもおいしいかもしれない。お魚と醤油って合うもんね。水をゴクゴクと飲んで、クルミパンをガブリ。うん、カリカリで香ばしい。


「クマ、食べられたか?」

「まだでキュ~」


 セイさんが冷まして食べさせている。クマちゃんのふーふーでは中々冷めなかったようだ。


「おいふぃでキュ~。お魚、最高キュ~」


 魚好きのクマちゃんも大満足のようだ。一方、ビャッコちゃんは熱さをものともせずに食べている。


「猫舌じゃないんですか?」

「はい。私は熱い物も平気ですよ」

「凄いです! きっとヴァンちゃんが羨ましがりますよ」


「ああ、この前も熱々の料理に挑んでいましたよね。負けてしまいましたが……」


「そうなんです。毎回挑むのでベロを火傷して、よく味が分からない時があると言っていました」


「いや、それは駄目だろう。今度から止めるか……」


 セイさんが痛そうな顔で言っている。本当に優しくて面倒見が良い。カハルちゃんが自慢に思うのもよく分かる。


「はい、海老も食べな」

「ありがとうございます!」


 女将さんが海老をサービスしてくれた。早速食べようとすると、お隣のテーブルのおじさんが頬を膨らませる。


「女将、俺にもくれよ~」

「なに、頬を膨らませているんだい。あんたがやっても可愛くないんだよ」


 お仲間さんが噴き出している。


「確かに可愛くねぇよな。お前はおとなしくキャベツ食っとけ。俺のミニトマトもやるから」


「お前がトマト嫌いなだけじゃねぇか!」

「全くうるさいねぇ。グダグダ言うと放り出すよ!」


 ここでは女将さんが最強らしい。全員、息子の様な扱いだ。


 残念そうにしているおじさんをチラッとみてから、エビフライを半分にカットする。


「おじさん、半分ですけど、どうぞ」


「なっ⁉ なんて良い子なんだ! 俺は感動したぜ! おっちゃんの事は気にせず全部食べな」


「いいんですか? 海老好きなんですよね?」

「いいんだよ~。俺はもう胸がいっぱいで食えないからな」


 う~ん、じゃあ、食べちゃおう。はむっ。んふふふ、プリプリだ~♪


「あー、可愛いなぁ」

「デレデレするんじゃないよ。そんな顔していると捕まるよ!」


 お客さん達が爆笑している。お酒を飲んでいないのにテンションが高いなぁ。もぐもぐもぐ……。


 その後も笑い声が絶えることの無い、楽しい昼食となった。


「お待たせしたね。今日はどんな用で来たんだい?」

「開店日が決まったのキュ。このチラシを貼って欲しいのキュ」


「あら、そうなのかい。――十五日だね。この日はケーキを用意してあげるからね。お祝いしないと」


「やったキュー!」

「お昼もうちで食べるかい?」

「お願いしまキュ。それとオーニングテントの事なんでキュけど」


「ああ、そうそう。業者には連絡済みだよ。あれはうちの物だから、クマちゃんはお金を気にしなくていいんだよ」


「キュ⁉ でも、クマの所為で――」


「なに言ってるんだい。クマちゃんに貸すって決めたのは、あたしだよ。覚悟なんて、その時に決めてあるんだから、遠慮するのは無しだよ」


「あ、ありがとキュ……」


 泣くのを必死に堪えている。そんなクマちゃんの頭を撫でながら、女将さんが何かを閃く。


揚げたてのアジフライは大人気です。あ~、ザックザックの揚げ物が食べたい……。

隣の人の物が食べているものはより美味しそうに感じる不思議。ニコちゃんは気持ちが良く分かるので、半分こしてあげました。


次話は、押し花の栞を作ります。


お読み頂きありがとうございました。

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